琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。本日もよろしくお願いします。さて今回のテーマは「チョウの発生ピークは秋へ」です。
湊和雄さん「チョウをはじめ、亜熱帯の昆虫の多くは、年3回の発生のピークがあります。春、初夏(梅雨明け直後)、そして秋。かつては、梅雨明け直後が最も多く見られる季節だったのですが、ここ数年次第に時期が遅れ、最近は10月から11月がピークになっています。夏は暑すぎる、温暖化の影響でしょうか?」
ではVTRをご覧いただきましょう。
湊和雄さん「日中はまだまだ暑いですが、やんばるの森でも秋の気配を感じるようになってきました。クロセセリがやって来て蜜を吸っているのはサキシマフヨウです。サキシマフヨウは秋から初冬にく花。白からピンクの大ぶりの花はとても目立ちます。」
湊和雄さん「今の季節、やんばるの林道沿いでは、こんな光景が見られます。多くのチョウが群れて花の蜜を吸っています。ここではアゲハチョウの仲間が多いですね。周辺で鳴いているのは、12月まで活動するオオシマゼミです。」
大合唱ですね。
湊和雄さん「アゲハチョウの仲間で最も多く見られるのはシロオビアゲハ。1頭のメスを2頭のオスが熱心に追いかけていますね。」
メスを追ってるんですね!
湊和雄さん「動きが速すぎてよく分からないので、8倍スロー映像で観てみましょう。」
こんな風に羽ばたいているのですね!
湊和雄さん「先頭がメス、後ろ2頭がオスですが、翅(はね)の模様が違いますね。通常は、メスもオスと同じ模様なのですが、一部のメスだけが有毒のチョウに擬態しているのです。そのタイプのメスです。」
生物界はすごいです!
湊和雄さん「こちらはオスが1頭だけなので、より分かり易いですね。このオスは盛んにメスの近くを飛び回って求愛しているのです。」
オスは翅がボロボロですが・・・がんばっているのですね!
湊和雄さん「そうですねここの草むらでは、ツマムラサキマダラという種類が群れていました。ざっと数えても、画面内に10頭以上が活動しています。」
たくさんいますね。
湊和雄さん「今の季節も最も数の多いチョウです。ここではツマムラサキマダラのオスだけが3頭集まっていました。たび立つと、翅の表面は鮮やかな紫色をしているのが判りますね。」
あざやかです。
湊和雄さん「翅を開くと、オスの翅の表面は前翅(まえばね)の先端部だけが紫色なのが判ります。これがツマムラサキマダラという和名の由来です。しかし、この紫色は色素による色ではなく、光の干渉(複雑な反射)によるもので構造色と呼ばれ、角度や光線の状態によって紫色が鮮やかなったり消えたり(黒くなったり)します。」
シャボン玉やタマムシも構造色と聞きました、複雑な反射によってこのように見えるのですね。
湊和雄さん「こちらは、ツマムラサキマダラのメス。翅を閉じていると、後翅(うしろばね)に白いストライプが目立ちます。しかし、翅を開いても、紫色の部分は少なく、オスのように目立ちません。」
ほんとですね!
湊和雄さん「注意深く観察すると、ツマムラサキマダラによく似た別の種類のチョウが混ざっています。左上はツマムラサキマダラのオスですが、右下はマルバネルリマダラという種類です。よく似ていますが、一回り大きく、微妙に翅の模様も異なりますね。翅を開くと2種類の差はより明らかです。」
わかります!!
湊和雄さん「マルバネルリマダラは、ときどき海外から飛んで来る「迷蝶(めいちょう)」という存在でしたが、最近急増して八重山地方では定着したとも言われています。この数年、沖縄本島でも頻繁に目撃されますから、そろそろ定着なのかもしれません。」
スローで見るとよくわかりますね!
湊和雄さん「そうですね。このマルバネルリマダラの翅の表側も構造色と呼ばれるものです。この状態では、翅を開いても、ほとんど白と黒の模様にしか見えませんよね。」
はい、白と黒の模様に見えます。
湊和雄さん「しかし、見る角度が変わると、地色は青、そこに入る模様は水色に見える瞬間があります。」
これが光の干渉、複雑に反射しあった色彩なのですね生物界は奥深いです。
今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。