沖縄の食文化の一つともいえる「ステーキ」その”スパイス”として県民に親しまれてきたあのソースがしばらくの間沖縄から姿を消します。苦渋の決断に至った経緯や県民の反応を取材しました。
アメリカ統治下の沖縄で発展し、今やうちなーんちゅのソウルフードとなった「ステーキ」そのステーキを引き立てる「相棒」として長年 県内で親しまれてきたのが…そう、”A1ソース”です。
イギリス生まれ。とろっとお肉に絡みつく 酸味のある濃厚なソース。唯一無二のその味わいは、これまで県民をとりこにしてきました。しかし今月初め、衝撃的なニュースが飛び込んできます。「A1ソース 販売休止へ」
女性(那覇市)「困ります!困ります!ステーキにはA1ソースでしょ!」
女性(読谷村出身)「もうショック。衝撃でした。食べ慣れている味なので…休売ということなら終わりじゃないと期待している」
男性(金武町)「やっぱり…一家に1本あるんじゃないですか!どこのステーキハウス行ったってこれあるし。やっぱり寂しい思い」
湧川商会 仲松義光 統括次長 「本当に心苦しいが いつまで(休止)とかはない」
現在 県内で唯一 A1ソースを輸入し、およそ30年にわたって販売してきた湧川商会。年間14万本売れる看板商品の輸入を”休止する”という決断に至ったのには理由がありました。
湧川商会 仲松義光 統括次長「A1ソース自体の中身には増粘剤が入っていて、ちょっと固まっている状態。それが輸送中なのか原因はわからないが増粘剤が溶けてしまって」
ソースが、シャバシャバ状態とはどういうこと…?そもそも、イギリスのブランズ社というメーカーにより生産されるA1ソース。
これまでは、瓶詰された状態でイギリスを出発後 一度台湾に接岸、その後沖縄に入港するという4か月前後の航路を経て私たちの手元に届けられていました。しかし、ここ数年、食品に粘り気をつけるために加える「増粘剤」と呼ばれる添加物が何らかの原因で溶けた サラっとした状態のソースが出現。味や品質そのものに問題はありませんが、消費者からは戸惑いの声が寄せられていました。
玉城アナ「通常の粘り気のあるソースと、直近の粘り気の少ないソースを比べてみます!」
ここで、通常の商品と粘り気の少ないものとを比較してみます。ソースの色など見た目は全く同じように見えますが 商品を振ってみると…
玉城アナ「粘度が低い方からは、ぽちゃぽちゃ音がします」
次に、瓶から注いでソースの出方を比べてみます。
玉城アナ 「通常のソースはどろっと粘り気があります。粘度の低いソースは少し傾けただけでドバっとソースが出てきました!」
湧川商会によりますと、こうした現象は5年ほど前から見られるようになり、その割合は年々増加。1年ほど前に、イギリスの製造メーカーに調査を依頼しましたが 原因は分からず。メーカー側からは「シンガポールを始めアジア圏に輸出しているが 沖縄以外の地域ではこうした事例は報告されていない」との回答があったと言います。
湧川商会 仲松義光 統括次長 「やはり A1ソースという商品自体が 復帰後まもなくから愛されてきた商品ということで、いつも買ってらっしゃるお客様はやっぱり不信感を抱くじゃないですか。だから原因を突き止めないと販売再開はできない状況で当面は沖縄向けの出荷は一応止めるということで 双方話は終わっている」
ステーキハウス88グループ 仲里太陽 総務部長 「港湾のストライキなどが起こるとどうしても出荷がされなくなって 県内も品薄が続くことがあったので…」
A1ソースの「不安定さ」にいち早く気付き、対応していたのが県内に25店舗を展開する ステーキハウス88グループです。アメリカ軍が営業を認定した「Aサイン」時代から全てのテーブルにA1ソースを完備していました。
しかし、ここ数年の「A1」の粘度や供給の問題から A1に近い味わいのソースを独自開発。現在はお客さんから、要望があった場合のみA1を提供しています。
ステーキハウス88グループ 仲里太陽 総務部長 「弊社でも自社でソースを3種類作成していて、それ以外の大手も自社ソースを準備しているところも多くあるのでステーキ文化が廃れることにはならないと思う」
「この機会に各店オリジナルのソースを味わってほしい」ステーキ店の思いとは裏腹に 頭を抱えているのは小売店です。
フレッシュプラザユニオン赤嶺店 大浜永慎 店長「お土産品としての需要も高かったので 無くなるとかなりの痛手になってしまう」
空港にほど近いこの店では 観光客からの需要もあったと言いますが、今後はその売り上げが見込めなくなってしまいました。現在 県内のユニオン各店では、粘度の低いA1ソースを通常価格の3割引きで販売していますが それも在庫が無くなり次第終了です。
フレッシュプラザユニオン赤嶺店 大浜永慎 店長「やはり沖縄の慣れ親しんだ唯一無二のソース。早急に輸入再開をお願いしたい」
取材中も、売り場には ソースをまとめ買いする人の姿も。
買いに来ていた客 愛知県在住 那覇市出身「ユニオンは売っていると聞いたので買いに来た。(Q. A1ソース目的で来店した?)そうです。ステーキはやっぱりA1ソースだなと3本くらい買ったんですけど早く再発売してほしい」
湧川商会が抱えていた在庫は全て出し切っているため、早ければ今月中にも県内から「A1ソース」の姿を消すと見込まれています。
湧川商会 仲里義光 統括次長「これだけ愛された商品なので何とか原因を早急に突き止めて一日も早く販売再開に向けて今後取り組んでいく所存」
沖縄で広く親しまれ 愛されてきた「A1ソース」県民の期待を背負って、今後調査が本格的に始まる予定です。