続いては特集です。先日、八重瀬町志多伯で6年ぶりに開かれた豊年祭。十五夜の満月の下、集落の守り神「獅子加那志(シーシガナシ)」を祝い、地域の人たちは心を一つにしました。
獅子加那志に感謝をささげる八重瀬町志多伯の豊年祭。この祭りの主役は、集落の守り神である獅子加那志です。年忌の節目にあたる年の旧暦8月十五夜に姿を現し、地域の繁栄を願って舞い踊ります。
舞台で披露されるのは、舞踊や芝居、組踊などおよそ30演目。夜半まで続く区民総出の盛大な祭りです。
訪れた人(女性)「小さい子たちから大人まで、地域の人たちがみんな出る、それがとってもすごいなと思って。驚いています」
訪れた人(志多伯出身・女性)「もう、三線聞いたら、気持ちがね、ちむ、ふとぅふとぅする」
豊年祭は、神獅子である“獅子加那志”の舞がお披露目される唯一の機会。その大役に、今回初めて挑戦した若者がいました。
9月上旬。神獅子が安置されている野呂殿内では、本番に向けて、稽古が行われていました。豊年祭で神獅子の舞手を担うのは6人。その一人が神谷武之心さんです。獅子舞を始めて2年。今年初めて神獅子に入ります。
指導するのは、武之心さんの祖父である政光さん。19歳のとき、豊年祭で初めて神獅子に入ったそうです。
志多伯獅子舞棒術保存会・神谷政光さん(74)「歯を食いしばって、一生懸命最後までやるという気持ちが大事だよ、魂がこもっているから、やるという気持ちがあるから、途中でやめる人はいないよ」Qやり通す?「やり通すのが獅子の踊り手」
神獅子の重さは、およそ11キロ。二人一組で呼吸をそろえて、躍動感あふれる獅子の動きを表現します。豊年祭では、およそ10分間、獅子頭を振り続けなければなりません。
指導する政光さん「しん!もっと立つ時、もっと後ろよらんと。まだこんなしてるよ前に。かずし、信頼してもたれるように」
神谷武之心さん「こんだけおじーが怒鳴りながらやるっていうのも、それだけ守ってきたものがあるし、それだけみんな思いがあるし、シーサーのための豊年祭だから、やるにはそれなりに仕上げないと」
旧暦8月十五日、豊年祭の当日を迎えました。前回の7年忌から掲げている豊年祭のテーマは「継承」です。
伊波妃菜さん「私も継承して次に引き継いでいけるように、そういう思いも持ちながら舞台出たいなと思います」
新垣壱征さん「12年後見て、大人と同じ目線で見て、あとから振り返ることができるように、今のこの状況を覚えておきたいなと思ってます」
区長らが獅子屋で地域の繁栄と五穀豊穣を祈願。蔵に奉られている獅子加那志も姿を現しました。神獅子が拝所で舞を奉納します。旗頭を先頭に神獅子が集落を練り歩いて邪気を払い、たくさんの幸をもたらします。
日も暮れ始めると、舞台が始まりました。メインとなるのは、もちろん獅子加那志。前、中、後と3回に渡って舞いますが、始めの獅子舞を先輩とともに担うのが武之心さんです。獅子役としての初めての舞台です。威勢よく獅子をまわし、見事演じ切りました。
神谷政光さん「よかったね。上手。僕としてはうれしい」
このあとも、さまざまな演目が続くなか、若手2人が初主演となる芝居「桃売りアン小」が幕を開けます。
芝居「桃売りアン小」首里の役人によって、恋仲が引き裂かれる山桃売りの娘チラー小と恋人アヒ小が困難を乗り越えて結ばれる恋愛歌劇。悲しみに耐えていたアヒ小を武之心さんは、実直に演じます。
「首里ぬ牢屋うてぃ・・・うゆ姿たしかやゆみ」
「天ぬお助けか・・・あぬ世までぃん」
台風の影響を受けて一日限りとなったの今年の豊年祭。無事に大役を務めあげました。
神谷武之心さん「この練習した時間っていうのがすごい貴重だった」「ここまで全力でやらせていただけたこと、ほんとに獅子加那志のおかげ」「次の12年後は、絶対に次の後継者を主役に立たせて自分も、全力でかっこいい姿を見せ続けられるように頑張りたいです」
集落への誇りと地域の宝として守り伝えてきた志多伯の豊年祭。祭りが紡いできた地域の絆は、次の世代へとつながっていきます。
台風14号接近する悪天候のなか行われた豊年祭。訪れた人たちは、雨風をしのぎながら先人から引き継がれてきた伝統に触れました。次の豊年祭は12年後の2036年。若い担い手たちの活躍が楽しみです。
八重瀬町志多伯6年ぶりの豊年祭へ連日稽古に励む 2024年9月12日志多伯の獅子加那志 中継!300年の伝統の舞 2016年10月19日