※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

沖縄戦の激戦地・糸満市に先週、県内外から学生たちが集まり遺骨の発掘作業を行いました。戦争体験者や遺族が少なくなりどのように記憶を継承していくか?次世代の担い手たちが、島に眠る戦没者と向き合います。

前日の雨の影響の中で、歩きにくく蒸し暑い現場。参加者が必死に見つけようとしているのは身元が分からない「戦没者の遺骨」です。

「骨ではないかな。骨やったら片方は平らになっているから」

それは、79年前、この島でおきた激しい地上戦が関係していました。糸満市の真栄平公民館この日、大きな荷物を持った若者たちが次々やってきました。会話は弾み、意気投合する彼らが集まった目的。それは。

男子学生「高齢化したご遺族に代わる担い手として、戦没者を日のもとにお迎えするため遺骨収集活動に取り組みます」

79年前の太平洋戦争末期、日米による激しい戦いとなった沖縄戦。軍人や一般住民を含め20万人の命が失われ、犠牲者の遺骨は今も、この島の土地に眠っています。

学生が取り組む遺骨収集

県外学生 片山いつきさん「気持ちに寄り添うというところでも、どういった現状でやっている活動なのかというはしっかり分かったうえで遺骨取集に取り組んでほしいなと思っているので」

学生たちをまとめるのは県外の大学に通う大学4年生の片山いつきさん。片山さんは全国各地で社会問題と向きあう国際ボランティア学生協会「IVUSA」に所属し、団体の取り組みの一つである遺骨収集活動に2年前から参加しています。

県外学生 片山いつきさん「物理的な風化以上に記憶の風化といのが、やはり問題になってきているのかなと思っていて。ただ遺骨を処理するのではなく、お互いに意見交換しあったりですとか考えたことを他人に共有するということでその記憶の風化というところにも取り組みができたらなという風に思っています」

今回、参加したのは県内外の学生およそ50人。はじめに彼らが学んだことは人の体の構造についてです。

学生「手は主に何骨と何骨と何骨があるでしょう」

学生「えっと、手根骨と中指骨、指骨?」

お互いに問題を出し合いながら知見を高めていきます。

県外学生 片山いつきさん「用意スタート」

学生が取り組む遺骨収集

この団体では、遺骨取集作業に参加するための課題として「骨格概要テスト」での合格を求めています。現場では見分けがつきにくい人骨と獣骨の見極め方遺骨収集の本質などについて解答用紙と向き合います。

県内学生の感想(Q.何点でしたか?)「29分の26でしたね。自分であんまり勉強しきれてなかったところだったなと思うので、詰めておけばよかったと思います」

県外学生の感想「(漢字も)ちゃんとしたいなというのはあります。ご遺骨だしっていう」

テストで満点を取った学生は、今度は後輩に伝える担い手になりたいと話してくれました。

県内学生 高橋輝さん「今年が(学生生活)最後の年になると思うので、後輩たちに自分が5年間培ってきたノウハウであったりとか、考え方の視点であったりとか、継承してあげられたらなと思っています」

戦争を知らない世代がどのように「届かぬ声」に耳を傾け伝えることができるのか。平和継承について考える話し合いは夜遅くまで続きました。

この日からいよいよ遺骨収集活動が始まります。雨で足場の悪い草道をつき進んでいくと岩に囲まれた空間にたどり着きました。

県外学生「黙祷~今日も一日よろしくお願いします」「お願いします」

地上戦があったこの場所は今でも、戦没者の遺骨や遺品が発見されることがあります。

県外学生 片山いつきさん「1年に何センチか腐葉土が堆積するので、1メートルは絶対に掘らないと戦時中の地層にたどり着かないと言われています」

学生が取り組む遺骨収集

当時の土を見つけるには、周辺に落ちている岩を運び、土を深くまで掘り起こします。それが終わると本格的な作業が開始されますが見極め方にはコツがあるそうです。

県外学生「音が違うんですよね。石と骨だと」

県内学生 高橋輝さん「(骨の)表面とか断面見て繊維状だったらご遺骨だよねとかっていうのを判断していますね」

作業が始まり4時間が経過したころ現場では動きが・・・

県内学生「歯 出てきました」

高橋さん「人間ってすごく湾曲しているのと、臼歯というすりつぶす歯がずっと続いているんですね。だから草食動物の歯じゃないかな・・・みたいな」

獣骨と思われる骨が多く見つかるなか、遺骨を遺族のもとに返したいという学生たちの思い。諦めずに探し続けますがこの日、確実に断定できる遺骨は見つかりませんでした。

県外学生 片山いつきさん「遺骨収集というのは、その場所にご遺骨がないというのを証明するのも大事なやるべきことの一つで、無駄なことではない」

県内学生 高橋輝さん「これからの僕たち若い世代ってこれからの日本、平和を担っていく責任があるのかなと思っているので、歴史を振り返ってご遺骨をお迎えして、その事実とかを未来に継承していくというのが一つ僕にとって意義なのかなと思います」

沖縄戦から来年で80年戦争体験者が少なり、戦没者への記憶が風化していくなかいまだ、土の中であげている「声」を聞くために学生たちは今後も遺骨収集活動を繋いでいきます。

発見される遺骨は土と同化し、粉砕してしまったものもありますが学生たちは、1柱でも見つけて遺族に帰したいと1週間沖縄に滞在し遺骨と向き合っていたそうです。獣骨を含め、今回の活動で見つかった遺骨は戦没者遺骨収集情報センターに引き渡し今後、専門家による鑑定が行われるというこです。