つづいては、特集です。県内ではこの時期、多くの地域で行われる無病息災や五穀豊穣を願う豊年祭。このうち、八重瀬町志多伯では、300年の歴史あると伝えられてる地域の守り神「獅子加那志(シーシガナシ)」を祝う豊年祭がことし、6年ぶりに行われます。本番を来週に控え、地域の人たちは連日、稽古に汗を流しています。
八重瀬町にある志多伯区公民館。軽快なリズムにのせて、子どもたちが舞います。
伊波希彩さん「緊張します」
伊波里梨さん「自分の踊りを踊るのとか、ほかの劇とか踊りを見るのが楽しみ」
少し緊張いた面持ちで歌の稽古に励む人も。若手を中心に地域の人たちが歌、セリフ、演技を猛特訓。豊年祭の時期が近づくと、毎日のようにさまざまな演目の稽古が行われ、活気づきます。
豊年祭実行委員会事務局神谷武史さん「まずは獅子加那志のお祝いであるということが、大きな目的ですので、その獅子加那志の存在価値をみんなで再確認するものである、地域の結束力とかコミュニティの輪がしっかりと築けていることをみんなが体感する、意義のある祭りだと思いますね」
本島南部にある八重瀬町志多伯地区。人口900人あまり。伝統文化が色濃く残る地域です。およそ300年の歴史があると伝えられている獅子加那志を祝う八重瀬町志多伯の豊年祭。
神獅子である獅子加那志は、人の法要にあたる年忌の年の旧暦8月15日と16日に開かれる豊年祭にだけ姿を現し、地域の繁栄を願い舞い踊ります。
「13年忌に向けて化粧ぐゎーし、ちゅらさん・・・」
野呂殿内にまつられている地域の守り神、獅子加那志。今年は戦後3巡目の13年忌で、6年ぶりの豊年祭です。この日は、化粧直しが行われました。
「だいじょうやんやー?裏見ないとわからんけど、大丈夫。だいじょうぶやさやー」
質問する武之心さん「こんな色あったんですか?色あせているの?もともとこういう(どんな色でもいいよ、まじゅなー)」
今年初めて、神獅子、獅子加那志の舞い手となる神谷武之心さん。先輩たちの教えに耳を傾けます。
神谷武之心さん「普段とはね、豊年祭近くなったらおじーも、厳しくなるし、目に気合が入っているような感じがして。自分も頑張らないとなという気持ちになります」
小学5年の時、組踊「花売の縁」で初舞台を踏んだ武之心さん。先輩たちが使命感や責任感を持って取り組む姿を見て、地域の伝統を繋いでいきたいという思いを強くしました。
神谷武之心さん「先輩からアドバイスいただけること自体、普通じゃないと思うし、それなりの理由があって自分に教えてくれるし」「もう今必死に先輩が教科書みたいな感じなんですけれど、しっかり勉強していきたいなと、先輩、教科書みたいなものです」
本番を2週間後に控えたこの日。獅子舞の本格的な稽古が始まりました。普段はレプリカの獅子を使って稽古に励んでいますが、ことしは年忌の年であることから、神獅子を使います。指導するのは、獅子舞経験者である地域の先輩たちです。
スピード感溢れる激しい動きが特徴の志多伯の獅子舞。武之心さんにとっては、初めてとなる神獅子での舞いです。
神谷武之心さん「普段保存会でやるのと全然手数が違うんです。倍ぐらいある」「先輩すごいやっさと思いながら、ずっと振ってました」
指導する神谷政光さん「しん!もっと立つ時、もっと後ろよらんと。まだこんなしてるよ前に。信頼してもたれるように」
使い慣れていない神獅子での演舞。なかなか思うように舞うことができません。
そんな武之心さん。今年、もう一つ挑戦する演目があります。志多伯で受け継がれた芝居「桃売りアン小」です。相思相愛の首里の地頭によって恋仲が引き裂かれる桃売りチラー小と恋人アヒ小が困難を乗り越え結ばれる歌劇で、今回若手2人が主演に抜てきされました。役の心理を掘り下げようと、念入りに台本を読み込んだりと新たな挑戦に思いもひとしおです。
神谷武之心さん「やることがいっぱいありすぎて頭がパンクしそうになる」
伊波妃菜さん「すごい先輩方がやってきた役なので、プレッシャーもすごい感じるんですけれど」「まわりからうまい、下手、どう評価されるかにこだわらないで、もっと一度切りだから自分のすべてを出し切ろうと気持ちで頑張りたいなと思います」
芸能を通して、技だけでなく精神的にも磨かれていく若手たち。伝統を受け継ごうと奮闘する姿に、地域の人も目を細めます。
神谷政光さん「ほんとにやる気まんまんやってますので、うれしいですよ。先輩としても集落としても、こういった若いのが後継者が出てくれば、ほんとに頼もしいです。」
真摯に伝統と向き合い、技と感性を磨き上げていく日々。武之心さんにとっての獅子加那志とは?
神谷武之心さん「みんなと繋がれる、輪の中心みたいな存在だと思います」「自分なりのやり方を見つけて、しっかり。見せるところは見せる。獅子加那志のかっこいいところを見せられるような演舞したいです」
地域の“芸能の誇り”を受け継ごうと励む若者たち。先人たちがつくり、育んできた文化を十五夜の満月のもとで演舞します。
「獅子加那志(シーシガナシ)」戦後まもない1946年に製作され、志多伯を見守続けてきた。地域の人たちの魂がこもっている獅子です。6年ぶりとなる豊年祭は、今月17日と18日に行われる予定。