楽園の海、案内は水中カメラマン長田勇さんです きょうは心配されている本島のサンゴの白化現象についてです。
長田勇さん「海水温の上昇で、浅瀬のサンゴがかなり白化し始めています。」
先日のニュースで第一報はお伝えしましたが、生態系まで変わるおそれと聞いて驚いています。さっそく長田さんの映像をご覧いただきましょう。場所はどちらでしょうか?
長田勇さん「この映像は、8月6日、本部町にある崎本部ビーチで撮影しました。陸からはおよそ50m、水深2m〜3mのサンゴ礁です。テーブルサンゴや枝サンゴ、全体的にかなり白化していました。共生している褐虫藻が逃げ出したため、色が抜けて白くなってます。」
ここで白化現象のとは何か?改めてお伝えします。サンゴは、光合成する「褐虫藻」と呼ばれる植物プランクトンと共生していて、栄養などを貰っています。白化は、この茶褐色の「褐虫藻」が、海水温の高い状態が続くことなどで失われ、サンゴの骨格が透けて白く見える現象のことです。
長田勇さん「その通りですねこの日の水温は29.4度。8月に入ってからは、30度前後の水温が続いてます。」
サンゴにとっては生死の瀬戸際ですね。
長田勇さん「そうですね。実は大半のサンゴの色は元々は白。褐虫藻の色がサンゴの色を決めています。
本来はこのような色なんですか。
長田勇さん「茶色い部分が褐虫藻が残っている部分。枝の先端から抜け出ていくようです。この健康なサンゴ礁は、以前恩納村で撮影したものです。色を見て下さい。茶色が多くブルーや緑などもありますが、どの色も濃いですよね。サンゴは、褐虫藻が光合成によって作り出した酸素やタンパク質などの有機物を、栄養として受け取っています。」
「崎本部ビーチや恩納村のインリーフは、早い時期から水温が高くなっていたため他の地域より白化の進行が早かったようです。褐虫藻は30度以上の水温が苦手なため、水温の低い深場へ逃げていくと考えられています。」
共生することによって生きているわけですね。
長田勇さん「はい、この真ん中に写っているテーブルサンゴ。元々は濃い茶色だったと思われますが、色素が半分ほど抜けてピンク色になっていました。アップで見てみると、枝の奥の方は茶色ですが、全体的に薄ピンク色、そして先端や外側は既に白くなってます。抜け出した褐虫藻が戻ってきてくれないと枝の全てが白くなり、やがては死んでしまいます。」
クマノミですね、もしかして住処まで!?
長田勇さん「元の色は茶色です。イソギンチャクも褐虫藻と共生しているため色が抜けて白くなります。ただ、イソギンチャクは自力で餌を捕食したりして生きていけるため、白化する事はあっても死なずには済みます。
そうなんですね。
長田勇さん「これはサンゴのポリプを餌にしているテングカワハギ。水深の浅い所に生息する魚ですし、浅瀬のサンゴがなくなると餌がなくなり死んでしまいます。
生態系が変わるというのは、このことを指しているんですね。
長田勇さん「今年産まれたばかりのデバスズメダイ。いきたサンゴを住処としているので失うと外敵に食べられてしまいます。」
深刻ですね。
長田勇さん「テーブルサンゴの上に蛍光ブルーの枝サンゴがのっています。パステルカラーに見えるのは、サンゴが元々持っている蛍光タンパク質や色素タンパク質の色。褐虫藻の色である茶色が抜けると、このような色になる場合もあります。」
「アップで見てみると、先端は蛍光の紫色ですが、枝の太い部分は、褐虫藻の茶色が残っているのが分かりました。こちらの薄い青色の枝サンゴも、色は抜けているものの、まだまだ大丈夫そうです。頑張って欲しいですね。」
元の色に戻ってくれることを祈りたいですね。
長田勇さん「今日の映像は、水深5mより浅い海域のサンゴです。浅瀬に限って言えば、かなり深刻な状況ではありますが、深場のサンゴはまだまだ元気でした。」
それを聞いて少しホッとしました。
長田勇さん「台風9号が今週初めに沖縄地方を通過していきました。海水がかき回されて少しでも水温が下がってくれていたら、なんとか持ち堪えられるかもしれません。」
ここのサンゴたちはどれくらいがんばれるのでしょうか?
長田勇さん「白くなり始めてから死んでしまうまで、2週間から3週間と言われています。撮影をした日から、そろそろタイムリミットの3週間になるので、今週末に状況を見に行ってきます。」
サンゴ礁は地球上で生物多様性の最も豊かな場所の一つ。海の生物種のおよそ30%が住んでいると言われています。人間に多くの恵みをもたらしているサンゴの白化、心配ですね。
長田勇さん「次回の楽園の海でその後の様子をお伝えしたいと思います」
よろしくお願いします。ありがとうございました。楽園の海でした。