QABでは、ことし4月那覇市内のアパートで放置された状態で部屋に閉じ込められた複数の猫についてお伝えしました。飼い主の所在も分からないまま、劣悪な環境で過ごしていた猫たちの「その後」を取材しました。
4月、玄関ポストを開けると猫が鈴なり。那覇市内のアパートの一室。ここでは半年以上にわたってたくさんの猫たちが飼育放棄されていました。
動物保護団体「アニマルフォレスト」の施設です。怯えたようすの猫たち。でも猫同士は仲が良く、清潔で安全な環境に暮らしているのがわかります。
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「猫たちはすごいガリガリで家のようすは見えなくても玄関がゴミであふれていて、臭いも一生忘れないほど臭くて、その中は絶対生き地獄だったと思います。」
去年10月頃、多数の猫と糞尿臭に気づき様子を見ていた近隣住民がことし3月、窓に大量のコバエが発生しているのを確認しました。市役所や警察に通報しましたが対応してもらえず、4月になってアニマルフォレストに保護を要請したのです。
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「助けを求めている猫の顔を見ると頭からずっと離れなくてその夜は一睡も眠れなかった。」
状況を確認したうえで再び警察や行政などに連絡。ようやく動きだします。部屋の住人の所在もわかり、事態は解決すると思われましたが、そうはならなかったのです。その後も飼い主は姿を見せず、猫たちは放置されたまま。
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「環境が非常に劣悪で数分居ただけで吐きそうになって自分の肺も猫のおしっこのアンモニア臭で燃えるようになりました。目も涙が溢れるほど沁みて」
団体は「置手紙」という方法で飼い主にコンタクトを取り6月、猫たちのレスキューを実施。そして、産まれたての子猫を含めた全部で12匹を救出できたのです。
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「ゴミの中で猫たちを探すと子猫の鳴き声が聞こえて解体されたキャットタワー、ゴミと一緒に山になっていてゴミの中に生き残りの赤ちゃん1匹無事に見つけて救出することができました。」
その子と一緒に一生懸命、その子を守るように頑張っていた母猫も無事救出することができました。他にも、妊娠している猫がいて保護から約1ヵ月後に子猫を産みました。つまり猫たちには避妊去勢手術が行われていなかったのです。
更に、驚くべきことに飼い主は部屋に猫が何匹いるかも把握していませんでした。猫たちに名前はなく、自分は別の場所に住んでいたといいます。
久高ゆいさん「あれをネグレクトと言わなかったら何になるんだというふうには思いますね。あの中で頑張って生きていた猫たち本当に救えて良かったですね。」
救えた命もありましたが、救えなかった命もありました。
久高ゆいさん「4月に初めてポスト口から見たときは手を伸ばして必死に助けを求めていた猫だったんですけどもレスキューに入ってみると隠されたような感じで死体を発見して、もう少し早く助けることが出来ていたら今でも生きていたのではと思いますね。」
動物愛護法では、飼っている動物に虐待行為をすると1年以下の懲役、または100万円以下の罰金を課すと規定しています。また那覇市では「動物の命が尊ぶべきもの」という理念のもと、指針を作成してていて「飼い主の心構え」や「守らなければならない飼い主のルール」などが詳しく書かれています。
しかし実際は、違反した飼い主に市ができることは「指導」のみなのです。そして、動物の虐待を犯罪行為として立件するのは警察になりますが、長年、動物の保護に携わっている団体の代表は対応の鈍さを指摘します。
全世界の犬猫の殺処分を廃止にする会/荒木 淳さん「(そもそもこれは沖縄県に限ったことではないけど)警察でどうしても動物のことが後回しになる傾向は確かにあると思います。ただし他の都道府県と比べた場合に沖縄県は顕著に動物に関する事はなかなか物事が進んでいかない、捜査してくれない、対応してくれないというのは実際に相談受けているなかで感じています。」(本来であれば最初に対応した時点で2ヵ月も滞留することなく捜査を前に進められたはずだと思います)
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「動物愛護団体は民間の団体で、できることは限られています。強制的に人の家に入ることはできないし、勝手に人の動物を保護することもできないんです。だからこういう猫たち、こういう多頭飼育崩壊の猫たちを助けられるのは本当は警察と行政しかないんです。」
助け出された猫たちですが、2年あまりも放置された影響か、人にはまったく慣れていません。
久高ゆいさん「少しずつ心は開いてきてるんじゃないかなと思います。」
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「この子たちは今まですごく苦しんできたので、辛かったぶんまで幸せにしたいと思います。猫たちがみんな心開いてこの猫のように人を好きになったら素敵な一生の家族をさがして里親につなげたいと思っています。」
この島の「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」とは一体何なのか改めて考える必要がありそうです。
全世界の犬猫の殺処分を廃止にする会/荒木 淳さん「世の中で一番大事なのは私は「命」だと思います。命を蔑ろにする社会で暮らすことはある意味不幸かもしれない。」
アニマルフォレスト/久高ダンテさん「沖縄には「命どぅ宝」というとっても素晴らしい表現がありますね。でも大事なのは人間の命だけじゃなくて動物の命も宝物だと思います。」
2024年4月24日 放送 放置された多頭飼育 その状況とは