琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。よろしくお願いします。
湊和雄さん「よろしくお願いします」
前回は夏休みの自由研究のヒントということで身近なチョウやセミ、クモを紹介しました今回のテーマはこちら「トンボの飛行テクニック」
湊和雄さん「チョウは器用に飛ぶことが出来ますがセミはかなり不器用です。クモは翅さえありませんね。昆虫の中でもその飛行能力に長けているのがトンボの仲間なのです小さな水の流れや池のある公園なら、観察できるかもしれませんよ」
さっそくVTR見ていきましょう!
湊和雄さん「これは、やんばるの渓流を代表するリュウキュウハグロトンボの雄ですちょっとした葉先にとまって縄張りを守ります。ときどき急発進して、また同じ所に戻ってきますそして、その直後に翅を開閉します。」
羽ばたきは早くて見えないですね。
湊和雄さん「通常の映像では速すぎてよく分かりませんね、では、8倍スロー映像で見てみましょう」「急に飛び立つのは、ほとんどが捕食行動です。このように棘だらけの6本の脚をバスケット状に曲げて、小さな昆虫を捕らえます」
まるで拝み取りってポーズですね
湊和雄さん「そして、元のポイントに戻ると、数回翅を開閉するのがルーティンです」
ほほ~う
湊和雄さん「リュウキュウハグロトンボは観察していると、頻繁に捕食行動を繰り返します。これは小さい餌ばかりなのが原因でしょう、かなり小さいので狩りに成功したか否かよく分かりません。これはちょっとだけ大きめなので、成功したのが分かりました」「翅の開閉もさらにゆっくり16倍スロー映像で」
ほほ~う
湊和雄さん「こちらはリュウキュウルリモントンボの雄頭部と胸部をドアップで見ると、名前のとおり瑠璃色の斑紋が特徴です」
濃い鮮やかな青色です!
湊和雄さん「このリュウキュウルリモントンボ、同じ葉先に長時間いました何度も飛び立つのですが、ほとんど同じところに戻ってきます。この様子を詳しく観察してみると」
後ろ向きに飛んでますね
湊和雄さん「飛び立つのは後ろ向きでも全く問題ないんですね。葉を離れると脚を畳んで空気抵抗を軽減しているのが解ります。着地の直前に脚を開き、減速します。空中に静止(ホバリング)することも可能です。これだけ自由自在に細かく飛行を制御できるのは4枚の翅を別々に動かせるからなのです」
ドローンみたいですね。
湊和雄さん「これまでの2種類のトンボは小型のグループだから器用に飛べるわけではありません。大型のトンボと言えばヤンマですね、中でもオニヤンマの仲間、カラスヤンマ。これは雄ですが渓流の水面近いところを何度も往復飛行します。これをパトロール飛行と呼びます。ちょうどターンするポイントでの撮影(スロー)ですがここでも4枚の翅を器用に使い分け(異なる動き)スムースに方向変換しています」
大型トンボも飛行テクニックがすごいんだ!
湊和雄さん「今度は産卵行動を観察してみましょう。オキナワオオシオカラトンボは、池や水溜りでも産卵する種類ですこのように雌が空中を飛びながら尾端で水面を叩きながら産卵するタイプです。空中静止だけではなく、微妙に上下、前進・後退をしながら何回も連続して産卵します。チョウも翅を羽ばたかせながら産卵していることがありますが脚先は必ず葉や茎に接していますからこれほどアクロバティックではありません」
湊和雄さん「これはアクロバット飛行の究極産卵しようとしたハラボソトンボに2匹の雄が襲いかかりましたそして空中回転
あっー! 落ちる!
湊和雄さん「しかしどのトンボも落下することなく、通常飛行に戻りました」
すばらしい平衡感覚感想!
湊和雄さん「トンボの世界もなかなか興味深いですよね。前回、セミの方言名の話をしました、トンボの方言名は、全般に「あーけーじゅー」これは、日本の古い呼称「秋津洲(あきつしま)」が語源と言われています。平安時代のことです。また、イトトンボ類は「せんする」と呼ぶこともあります度々、飛び立って落ち着きがないことからのようです」
方言名を教えてもらうのも面白いですね!今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。