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シリーズでお伝えしている「沖縄と自衛隊」です。今回は、今月7日まで行われていた自衛隊とアメリカ軍の共同訓練、レゾリュート・ドラゴンについてお伝えします。

中国への対抗を念頭に行われている訓練ですが、民間の空港や港などインフラの使用も目立ちました。とくに、与那国島では過去最大のアメリカ兵が展開しています。軍事面、政治面両面からねらいを読み解きます。

今月7日まで九州・沖縄各地で行われた日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」。

大分県の日出生台演習場では、離島での作戦を想定し、実弾射撃も伴う訓練を自衛隊とアメリカ軍が行いました。

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

陸上自衛隊第8師団・青木師団長「常に敵を意識するとともに、最後まで生き残り、戦って勝つという飽くなき執念を保持して訓練に参加し、訓練の目的を高いレベルで達成することを祈念」

訓練の開始式で指揮官は、このように強調。演習場では、中国への対抗を念頭に、実戦的な訓練が続けられました。

玉城知事「日米の共同演習であっても、その規模が拡大していくことの不安にどのように説明責任を果たすのか、政府においてなされるべきであると考えている」「県としても求めてまいりたい」

一方、与那国島や石垣島では訓練に伴って、近年設置された自衛隊の駐屯地を足がかりに、アメリカ軍が展開。石垣駐屯地では、実際の発射は伴わないものの、地対艦ミサイル部隊の訓練も確認されています。

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

与那国島では過去最大となる110人が入りました。自衛隊とアメリカ軍が一体となり、先島地域での活動を強める意図を、読み解きます。

与那国駐屯地でアメリカ軍の訓練が始まったのは、2022年の「キーン・ソード」と呼ばれる演習。自衛隊の戦闘車両が公道を走り、注目を集めましたが、アメリカ軍の活動は駐屯地の中で、連絡調整の訓練を行ったのみでした。

対する今回の共同訓練。与那国駐屯地にはアメリカ海兵隊のレーダー部隊が展開。アメリカ軍の展開や撤収に伴う民間の空港・港の使用も目立ちました。今月4日、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の共同会見も開かれます。

海兵隊側から参加したのは、沖縄に駐留する軍のトップでもある第3海兵遠征軍のターナー司令官。訓練は表向き「特定の事態を想定していない」と行われましたが、会見で強調したのは、中国の脅威でした。

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

第3海兵遠征軍・ターナー司令官「中国の策動はこの地域の平和と繁栄を数十年に渡って、保障してきたルールに基づく秩序に挑戦するものだ」

日本最西端の与那国島。有事がまことしやかに語られる台湾海峡に最も近い自衛隊の拠点で、日米の指揮官は抑止力の強化を強調して見せました。

駐屯地設置前の、2011年。防衛省などが与那国島で開いた住民説明会。アメリカ軍の展開について、質問が上がっていました。

与那国町民「米軍は入れないとおっしゃいました。日米安保で知られているのに、自衛隊があるところに米軍は必ずやってくる」

外間町長「自衛隊と米軍は切り離して物を考えないといけない」「あくまで自衛隊が入ってくるから米軍が入ってくるという、思い込みが間違っている」

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

当時の町長が「思い込み」と言い切った与那国島へのアメリカ軍の展開は現実となり、訓練が繰り返えされるごとに規模が増しています。

司令官が駐屯地で会見した4日。住民グループも会見を開き、日中間の問題を平和的に解決することなどを求める声明を発表しています。

猪股哲さん「考えてほしいのは、人が住んでいる島でそういうことをやるということ」

与那国でレストランを営む、猪股哲さん。自衛隊配備に伴う島の変化を見つめてきました。

猪股哲さん「軍事的なエスカレーション。2016年に沿岸監視部隊というのだけで入ったのが、今度は空自の移動警戒隊だったり、情報戦部隊だったり、今度は地対空ミサイル部隊、これが終わったら地対艦ミサイル部隊という話が出てくるかもしれないですけど」

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

与那国島の西側では、大型の港の整備計画が浮上しています。自衛隊の利用を念頭に政府が整備する特定利用区港湾の候補にも挙がっているとみられ、アメリカ軍も使用する「軍港になるのでは」と懸念も募ります。

猪股哲さん「軍民共用みたいな形で、地位協定上なのかな。米軍の使用も可能になってくる。生活の中に自衛隊や軍が入ってくる怖さがある。着々と準備しているのがどうなんだろう。実際起こる起こらないじゃなくて、段階を踏んでいっていること、自体が戦争への階段を一歩ずつ上がっているような状況が作り出されていることがそれ自体が問題」

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

ここからは塚崎記者とお伝えします。VTRにもあった与那国島ですが、過去最大となるアメリカ兵が展開していますね。あらためて、ねらいはどのようなものがあるのでしょうか。

塚崎記者「はい。軍事面と政治面、それぞれからお話ししたいとおもいます。まず軍事の面ですが、今回の訓練でアメリカ海兵隊は、有事に離島に分散するEABOと呼ばれる作戦の実践を掲げていました。」

「今回の共同訓練で、与那国空港では自衛隊機が最大17回の飛来を計画し、アメリカ兵や物資を運びました。」「自衛隊などは民間の空港で航空機を使うことを「島外避難に応用できる」などと強調していますが、EABOで掲げているアメリカ軍が離島に展開することを主な目的に据えているとみられます。」

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

一方で政治的な面ではどういった意味があったのでしょうか。

塚崎記者「今回与那国島で、自衛隊とアメリカ軍の幹部が共同で会見して、中国の脅威や抑止力の強化を強調したのは、やはり中国への対抗を意識してのこととみられています。国境の島の与那国は直近でも、エマニュエル駐日アメリカ大使が訪問したり、糸数町長が改憲派の全国集会で憲法9条の改正などを訴えたりしていました。」

沖縄と自衛隊(25) 日米共同訓練・背景には何が/部隊実動のステージも「南西シフト」/危機あおるのは報道か?

与那国島が台湾有事などの危機を強調するときの政治的な意味でアイコン的に使われていると言えますが、住民グループの会見では別の指摘もありました。

猪股哲さん「(与那国島の)隣の台湾ということを意識することも日常的にない」「そこで何かが行われているかもしれないと具体的に恐怖することはない」「報道されたことが入ってくることで知る。それで恐れるというループができている」

塚崎記者「与那国の外からの報道が危機をあおり、町民に逆輸入されているという指摘ですが、確かに私も与那国の取材は10回以上行きましたが、自衛隊関連で動きがある場面に、限られてきたと思います。」

「いうまでもないことですが、与那国は自衛隊員以外の住民も暮らしていて、そこに人々の日々の営みがあるわけです。「台湾有事に揺れる島」との先入観にとらわれず、住民の立場から与那国の実態がどうなのかと、取材し、伝える姿勢が必要だと改めて感じました。」

きょう8月15日は終戦の日です。メディアはかつて虚偽や美化の報道をとおして、国民を戦争に動員する役割を担った歴史があります。今県内で起きている南西シフトを、誰の視点でどのように報道していくか、この節目に、改めて議論する必要があります。