シリーズでお伝えしている沖縄と自衛隊です。北大東島のレーダー配備も含めて、県内での自衛隊の体制強化について、これまで継続して取材してきました。
その自衛隊は今月で1954年の創隊から70年を迎えました。民間への貢献と、軍事の二つを担ってきた自衛隊の本質について考えます。
防衛省担当者「戦後最大の試練の時を迎えていると防衛省の認識としては持っている」
16日、北大東島で防衛省が開いた自衛隊レーダーの配備計画の説明会。その必要性を強調する担当者は、太平洋側での中国軍の動きなどを念頭に「安全保障環境の厳しさ」を強調し続けました。
村民「先手先手で、早く用心したほうがいい」
村民「有事の際に攻撃の対象にならないのか。どうなのか」
沖縄本島から東に360キロ離れた、北大東島での自衛隊配備。政府が進めてきた「南西シフト」は、新たな段階に入りつつあります。
木原防衛大臣「自衛隊が幅広い活動を平素から行っていくようになった結果として、国民の皆様にとって、自衛隊が身近に感じられるようになった側面もあるのではないか」
創設から今月で70年を迎えた自衛隊。その本質と県民との関係を考えます。
番匠氏「中国に対するスクランブルが多いのだろうと思う。那覇基地からも毎日のように、任務に携わる皆さんのご苦労を思うと、本当にまさにこの地域が、日本の安全保障、世界の安全保障の最前線だということを痛感いたします」
今月8日、那覇市内のホテル。経済団体で講演したのは、元陸将の番匠幸一郎氏。経済関係者に交じって、沖縄に駐留する自衛隊の幹部も出席。南西諸島の自衛隊強化の必要性のほか、自衛官時代の経験を語りました。
小泉総理(当時)「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域なんです」
2003年、政府はイラク戦争後の復興支援などを掲げ、自衛隊をイラクへ派遣。アメリカが主導で始めた戦争を支持するかどうか、各国の立場も分かれる中で、日本国内の世論も割れました。
その中で、イラク南部・サマワの地を踏んだ陸自のイラク派遣部隊。番匠氏は、その指揮官を務めています。
番匠氏「イラクの復興の主役はイラク人自身ですから、われわれは日本から来た友人として、彼らの背中を押して応援するんだというスタンスで行こうと。決して上から目線になったり、支援を押し付けたりということのないようにしようというつもりでやってきた」
自衛隊が発足して、7月で70年。それまで活動を国内に限ってきた自衛隊は、1990年代から国際貢献として、海外派遣を続けています。
沖縄では、1972年の本土復帰に伴って、駐留を始めた自衛隊。離島からの急患輸送や不発弾処理などを続けた一方、対中国を念頭にした部隊配備やアメリカ軍との共同訓練も強化し続けてきました。
憲法などを研究する名古屋学院大学の飯島滋明教授。各地の基地周辺で、自衛隊員にも聞き取りをしてきたといいます。
飯島教授「自衛隊員の人に聞くと、私たちは軍隊ではないという。アメリカと違って。かつての軍隊のように何でもできるという組織ではないと。アメリカ軍なんかと違って、人を殺すことも簡単にできないと」
最近では、旧日本軍との連なりを意識させる事実が明らかになってきています。陸自第15旅団ホームページでの沖縄戦を指揮した旧日本軍の牛島満司令官の「辞世の句」を掲載したり、幹部候補生学校の教育の中で、沖縄戦を「善戦」と表現したりと、沖縄戦での日本軍を評価するともとれる事実が確認されています。
飯島教授「旧日本軍はこれだけ立派な戦い方をしたというので、だから我々も後輩としてそういう戦い方をすべきだという意識が実は自衛隊の例えば、各施設でそういったものが垣間見える。住民を巻き込んで国体を守る戦い方は、決して許されない戦い方。そこの批判を抜きに、(沖縄戦を)戦い方の一つとして捉えるのであれば、それは非常に問題」
民生協力と、軍事を担う2つの顔を使い分けてきた自衛隊。イラク派遣部隊の指揮官を務めた番匠氏も、こう語っていました。
番匠氏「いつも隊員たちに言っていたのは、我々はロバなんだろうか、ライオンなんだろうかと。イラクでの仕事はロバの仕事です。汗をかいて、一生懸命働く。ただ自衛隊はライオンなんですね。牙を持って戦うのが仕事ですから。イラクでのコンセプトは、本来闘うライオンが戦う姿勢でなくて、ニコニコしながらロバの仕事をする。ただ、いったん状況が変わったら、すぐにライオンに転換できる気構えと能力を持たなければならない」
一方の飯島教授。自衛隊員への聞き取りで、このような声も聞かれたといいます。
飯島教授「自衛隊員と話していて思うのだが、日本を守るためであれば命を懸けて戦うって人はいるんですよね。もともとそうじゃなくても。入ってそんな意識を持ったと思う。自衛隊というのは日本で守るというよりも海外で戦える。そういった組織に変わりつつある。その場合に海外で戦うのはまっぴらごめんだと、いろいろな自衛隊、北海道からそれこそ九州までいろいろな部隊に聞いたが異口同音にいう」
飯島教授「南西諸島の自衛隊配備も日本を守るためと言われているが、実際はそうではなくて米国の軍事戦略の一端を担うような形で、米国の要望に乗っかって自衛隊配備されてきたという側面は、冷静に見る必要がある。本当にそれでいいのかどうか」
自衛隊は何を守るために存在しているのか。個別具体の配備計画について考える前に、根本的な議論が求められています。
北大東島での自衛隊配備で動きがありましたが、「安全保障環境が厳しい」と繰り返す政府の意図が何なのか、検証が必要です。
個別の島の状況について重点的に取材してきましたが、自衛隊とは何のために存在しているのか、私たち県民との関係性はどうあるべきか、原点に立ち戻って、考えなければならないと思います。