続いては、「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。よろしくお願いします。
湊和雄さん「よろしくお願いします。」
今回のテーマは「コノハチョウの裏と表」です。
湊和雄さん「梅雨明けから1ヵ月ほど経ち、連日の猛暑続き。その影響でしょうか、チョウたちの姿は少なめ。しかし、コノハチョウは最盛期を迎えています。」
さっそくVTRをご覧ください!
湊和雄さん「枯れ葉へ擬態していることで有名なコノハチョウ。翅脈(しみゃく)と呼ばれるハネの筋がまるで枯れ葉の葉脈のように見えますね。」
見えている部分がハネの裏側ですか?
湊和雄さん「はい、そうです。コノハチョウのハネの模様はバラエティに富んでいます。これは、翅脈(しみゃく)は目立たず、まるで黒いカビが生えたような模様です。」「太い幹に止まっていて、あまり枯葉の姿を活かした場所でありません。しかし、こちらは枯れ枝ですから、枯れ葉のカムフラージュ効果が高い環境ですね。」
違和感ないですね!
湊和雄さん「これもまた違うパターンの枯れ葉模様です。実はコノハチョウの枯れ葉の姿、なかなか芸が細かいのです。これは普通に光線の当たった状態です。そして、こちらは同じコノハチョウが逆光を受けた状態。すると、何と虫食い穴があるのが分かります。これ本当の穴ではなく。光を通すような構造なのです。」
穴はあいていないのですね!
湊和雄さん「さて、コノハチョウはどのようなものを餌にしているでしょうか?」
やっぱり花の蜜ですか?
湊和雄さん「実は、花の蜜を吸うことはほとんどありません。これは熟したイヌビワの実。実は3匹のコノハチョウが集まっています。好きなのはクワガタムシのように樹液や熟した木の実です。イヌビワの実は熟すと黒っぽくなります。コノハチョウもこの状態がお気に入りのようです。」
美味しいのでしょうか?
湊「コノハチョウのストローのような口はあまり長くありません。それを一生懸命動かしながら、汁を吸っています。」
夢中ですね!
湊和雄さん「コノハチョウが汁を吸うイヌビワの実は、木に付いた状態だけとは限りません。地上に落ちた実にもやって来ます。周りには落ち葉もたくさんありますから、樹上より却って目立たないかもしれません。地上の実はより熟していて美味しいのかもしれません。盛んに汁を吸っていますね。」
ゴクゴクと聞こえてきそうです!
湊和雄さん「実の汁を吸っているときに、コノハチョウは時々ハネを開いていますね。裏と表では、かなり色彩が異なると思いませんでしたか?もう一度よく見てみましょう。こちらは裏側。」
本当に枯葉そっくりですね。
湊和雄さん「こちらは、頻繁にハネを開閉して表側もよく見えます。裏とは逆でとても鮮やかで目立つ色彩をしていますね。」
何故、裏と表でこんなに色彩が異なるのでしょうか?
湊和雄さん「裏の枯れ葉模様は、天敵に見つからないように役立っているのは想像に難くありません。では目立つ表側の意味は?」
何ですか?
湊和雄さん「これは幹にとまっているコノハチョウ。」
あれ?急に消えましたよ。
湊和雄さん「実は消えたのではなく、急に飛び立ったのですね。スローで見てみましょう。主にオスは見晴らしのよい枝先にとまります。そして急発進します。これは、やや上向きに飛び立ちました。」
そして、こちらは下向きに。何か狙っているのでしょうか?
湊和雄さん「はい。枝先に縄張りを持っていて、そこに近づくものに スクランブル発進するのです。ですので、いろんな方向に飛び立つんですね」
なるほど。
湊和雄さん「スクランブル発進の相手は、実は同じコノハチョウです。他のチョウにはほとんど反応しません。この同じ種類のコノハチョウであることを識別する目標が、ハネの表の目立つ色彩という説があります。そして近づいてきたオスを追い掛け、追い払おうとします。自分の縄張りを守るために、ときにはこのように、エスカレートして5匹で追いかけっこすることもあります。」
湊さん、今回も貴重な映像ありがとうございました。以上、リュウキュウの自然でした。