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わいせつ誘拐と不同意性交等の罪に問われる空軍兵 起訴内容を否認

2023年12月、少女をわいせつ目的で誘拐した上性的な暴行を加えたとして、わいせつ誘拐と不同意性交等の罪に問われたアメリカ空軍兵の男の初公判が開かれ、男は起訴内容を否認しました。

わいせつ誘拐と不同意性交等の罪に問われているのは、アメリカ空軍・兵長ブレノン・ワシントン被告(25)です。

起訴状などによりますとワシントン被告は、2023年12月24日の午後5時すぎ、沖縄本島の公園で16歳未満の少女をわいせつ目的で車に乗せて誘拐したうえ、性的な暴行を加えたとされています。

2024年7月12日の初公判でワシントン被告は、「わたしは無実です、誘拐もしていなければ暴行もしていません」と起訴内容を全面的に否認しました。弁護人も被告は年齢確認を行い18歳以上と認識したうえで、誘ったのはわいせつ目的ではなく同意を得たうえで性的行為をしたと、争う姿勢をみせました。

検察は、冒頭陳述でワシントン被告が公園で翻訳アプリを使って少女と話をした際、年齢を聞いたときに少女はジェスチャーと日本語・英語を交えて、自身の年齢を伝えていたと主張しました。

次回の裁判は、2024年8月23日に行われます。

また2023年4月、宜野湾市のコンビニに押し入り店員を脅して金を奪ったとして強盗などの罪に問われたアメリカ海兵隊員・上等兵のアンドリュー・トーレス被告の判決公判が開かれました。

那覇地方裁判所の佐藤哲郎裁判官は、「現金欲しさから犯行に及んだ経緯・動機は酌むべき事情はない」と指摘、「犯罪事実を認めて反省している」などとして被告に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。



解説 米軍関係者の凶悪犯罪


わいせつ誘拐と不同意性交等 空軍兵起訴内容否認

きょう行われたアメリカ軍人による2つの裁判は、どちらも凶悪犯罪に分類される非常に悪質なものです。このほかにも県内ではアメリカ軍関係者による犯罪が起こり続けていて、近年は増加傾向にあります。どうすれば犯罪を防げるのかを専門家の話を交えながら考えます。

繰り返されるアメリカ軍関係者による凶悪犯罪。ことしに入り海兵隊員によるコンビニ強盗が発生、そして捜査当局が公表していなかった性暴力事件が3件発覚し、県民から怒りの声があがっています。

県警の統計では、日本に復帰後、アメリカ軍関係者の検挙が6163件あり、殺人・強盗・不同意性交などの凶悪犯罪は584件にのぼります。そのうち、強盗事件は398件、不同意性交は134件と凶悪犯罪の大半を占めています。

過去10年ごとに見てみると事件の検挙件数自体は減少傾向にあるものの、2014年から去年までの10年間では402件もあります。去年の検挙件数は72件となり、4年前の2倍あまり増えるなど増加傾向にあります。さらにことし5月末までの凶悪犯罪の件数は5件にのぼり、この10年では最悪です。

野添准教授「(米兵は)アメリカという国家を代表した人々なわけですね、同じ組織の人々が繰り返し、繰り返し凶悪犯罪を犯すということはやはり(組織に)問題があると」「(米軍は)日米安保条約のもとで日本の安全保障を守るために沖縄県民が望まないにも関わらず、沖縄に集中しているわけですね、なので普通の人々と米軍を同じ風に見ることはできないと思いますね」

アメリカ軍基地を巡る日米関係などを研究する沖縄国際大学の野添文彬准教授はアメリカ軍関係者の犯罪を防ぐために、日本とアメリカが率先して兵士の教育の見直しや行動制限などの具体的な対策を取るべきだと主張します。

事件・事故発生時に地域に及ぼす影響を最小限にするための対策のひとつが、1995年の少女暴行事件をきっかけに1997年に日米合同委員会で決定された「通報体制」です。軍関係者による事件・事故が起きた際、「正確かつ直ちに」地域社会に知らせることが重要だとし、アメリカ側は外務省と沖縄防衛局にできる限り速やかに通報し、それを県や市町村に通知するルールになっています。

わいせつ誘拐と不同意性交等 空軍兵起訴内容否認

しかし、外務省は今回「プライバシー保護」などを理由に捜査当局から情報を受けていたにも関わらず、去年からことし6月までに起こった性犯罪5件を県に伝えていませんでした。さらに軍も沖縄防衛局に通報していなかったことが明らかになっています。

県・地元自治体・県民からは抗議の声があがり、5日に政府は「例外なく県に伝達する」と通報体制を改めました。玉城知事は「一歩前進」と評価はしましたが、野添准教授は「当たり前」の体制になっただけと話します。

野添准教授「97年にできた通報体制がここまで日本政府あるいは米軍側の恣意的な判断によって運用されているというのは驚いたというのが今回の事件で思った正直なところ」「今回実は日本政府側の姿勢によって通報されていなかったこと自体が問題なわけで通報体制を改めるといっても本来あるべき姿に戻ったというだけのように見える」

軍関係者の凶悪犯罪が起こるたびに浮上するこの問題。野添准教授は新たな被害を出さないためには、「通報体制」を考えるだけでは不十分だと指摘しました。

野添准教授「今回の事件の処理も連絡体制の強化ということでお茶を濁している気がしてしまう」「本質というのは沖縄に米軍基地が集中していることによって起きることになるわけですね、そもそも基地負担の軽減をするために基地や米軍を減らしていくのが本来の根本的な対策になるわけですね」

通報や公表がされなかったことで、新たな被害が発生したのではないのか?国民の命と暮らしを守るためにも今回の対応について検証が求められています。