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23日の慰霊の日を前に、今週は沖縄戦に関連する特集をお送りしています。沖縄戦を版画と朗読で伝えようという取組みを取材しました。地面に横たわる母親の、お乳を飲む幼子。作品「死んだ母の乳をのむ」

スパイ扱いされ、日本兵に銃剣を向けられた住民 作品「沖縄人はみなスパイだ」身体に湧いたウジ虫の大群 作品「ウジ虫」これは沖縄を代表する版画家で、2017年に亡くなった儀間比呂志さんがはじめて沖縄戦を描いたという版画集、「戦がやってきた」に掲載されている作品です。

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

各作品には1978年に県平和祈念資料館の展示を住民視点に刷新するなど、戦争体験の継承に尽力し、2016年に亡くなった、中山良彦さんの解説文が添えられています

沖縄可否の会 玉城さん朗読 作品「慟哭」より「弾の激しい危険な場所に、老夫婦がぼんやり座っている。老夫婦は息子が防衛隊にとられ、嫁と三人で逃げ回っていた。その嫁は今朝、お産したが、間もなく破片に当たって即死した。男の赤ん坊だけが後に残った。ミルクもない。連れて歩いても、生きない。だから、生き埋めしてきた。老人は無表情にそう語り、あとは口ごもってしまったそうである。」

この解説文を朗読するのは、県内で舞台朗読を行っている「沖縄可否の会」職業も年齢も様々な彼女たちは、2年前からこの作品の朗読に取り組んでいてことしも、慰霊の日を前に行われる浦添市美術館での朗読会に向け、日々稽古に励んでいます。

「戦争の中での話なのに全然優しく読んでて、その時の緊迫感とかが全然伝わってこないから」

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

宮城さつきさん「(この作品の)朗読をするかどうかについても会の中でも色んな考えもあって、例えば割と絵も恐怖を与えるような絵だったりすると、子どもたちにとってその実相をそのまんま、強烈なまま伝えていいのかとうい考えも一方であったりして、でも会の中で色々話し合っていま、戦争前夜と言われている中で、より(沖縄戦の)実相を曲げずにね伝える事の方が大切なんじゃないかと。」

この日、可否の会が訪れたのは糸満市の戦跡。戦後80年を前に、戦争体験者が減っていくなか沖縄戦をどう語り継いでいくのか、模索するためです。

上原美智子さん「赤ちゃんが泣くでしょう、赤ちゃん泣いたら日本の軍人さんがね、赤ちゃん泣かすな泣かすなという、そういう場面もあったそうですよ」

上原美智子さんは(摩文仁)国民学校の3年生だった戦時中(1945年3月23日)米軍機の空襲に遭い、生後8ヶ月の弟を背負いながら幼い妹(5)と弟(3)を連れて、アマンソウガマに避難します。しかし、そこでの体験は想像を絶するものでした。

糸満市「市民が語る戦中戦後史」より抜粋

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

「この8ヶ月の赤ちゃんは、おっぱいも飲んでないし、大声で泣いたんですよ。それで奥の方から、どこの子か泣かすな、という罵声を浴びせられた」住民から追い出されるようにしてガマを出た上原さん。その後、母と姉と合流し北部へ避難しますが、その道中、8ヶ月の弟は、いつの間にか息を引き取っていたといいます。

上原美智子さんアマンソウガマ「ここ通りたくないもない、ということが3月23日のその思い出が浮かぶから泣いて話せないんですよね、だから通りたくもない」

上原美智子さん平和資料館「もう戦争の悲惨さというのは今まで何回も聞いて分かってるはずだから、それに戦争をきっかけにして子供たちが今後ね、あなた方が戦争をなきにするためには、自分たちは何をすればいいかとかね。」

託された想い

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

玉城乃野さん「ミルクもない連れて歩いても行けない。だから生き埋めしてきたっていうこの(朗読の)言葉があって、どういう思いで子供を産めたんだろうって、それぐらい悲惨な状況だったからこそ、そうせざるを得なかったっていう、もう本当に悲しい現実というのを美智子さんの今日のリアルな話を聞いて本当に思いがちょっと湧き起こるというか」

内海夢子さん「出来る限り今、直接に思いをバトンタッチしてくださったただことを胸に皆様の前で朗読をさせていただきたいと思います」

この日、那覇市のジュンク堂に彼女たちの姿がありました。浦添市美術館での朗読会を前に、プレ公演を行うためです。

石井さん「緊張しますね、緊張します」

田名さん「一言一言大事に、体験者の思いを伝えて行けたらなと思ってます」

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

戦がやってきた「アキサマヨー、軍艦を歩いて他島に渡れるさあというほど夥しい、真黒い敵の艦隊が、囲んで浮かんでいる。」

戦場の乙女たち「恐怖に襲われ、硝煙弾雨下を、泣き叫び、逃げ回った。」

死んだ母の乳をのむ「おっかあ、おっかあ、と泣きながらいつも近くまで来るんですけど、そのたびに避難民たちは追い返すんですよ敵に感づかれて弾が来るといって。」

一家全滅の屋敷のあと「口元から先に腐るんですね、人間の顔は。死んだ人たちは口周りが大きく開いて、こちらを向いて笑っているみたいでした。」

参加者インタビュー「世の中に流されていたら、いつの間にか戦争になるんだろうなって、すごく思って、だから過去の歴史も学ばないといけないし今できる事は何かということを自分も考えたいし、こどもも一緒に考える機会を作らないといけないなと思って今日来たんですけど、来てよかったなと思います」

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦

参加者インタビュー「これから先も平和な世の中が続いていくように私たちの世代も、もっと下の世代も平和についていっぱい考えていかないといけないと改めて感じさせられました」

作品に込められた作者の想い、そして、沖縄可否の会が伝える言葉は、現代に生きる私たちに問いかけます。

墓標の島 宮城さつきさん「戦争をおこすのはたしかに人間です。しかしそれ以上に戦争を許さない努力のできるのも私たち人間ではないでしょうか」

浦添市美術館での朗読会はあす、午前・午後と2回に分けて行われます慰霊の日を前に、ぜひ沖縄可否の会の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

慰霊の日特集5 版画と朗読で語り継ぐ沖縄戦