識者は「住民被害の観点がない」と指摘しています。陸上自衛隊の幹部候補生学校の内部資料の中で沖縄戦について「日本軍が善戦・敢闘した」と評価していたことが分かりました。
記載があったのは、福岡県にある陸上自衛隊幹部候補生学校が2017年に行った沖縄戦の現地教育の実施計画です。
民間の研究者や元自衛官らでつくる研究者グループが、防衛省への開示請求で入手しました。教育計画では、沖縄戦で戦闘が行われた本島中南部の各地を巡ったうえで、旧日本軍側の各戦闘の成功の要因や教訓を学ぶ「戦史教育」の課題があります。そのなかに「沖縄作戦において日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得た要因」を挙げました。沖縄戦の研究を続けてきた沖縄国際大学の石原昌家名誉教授は2024年6月7日の会見で、自衛隊内部では、戦闘面に着目した沖縄戦の教育が、長い間、行われていたと指摘します。
沖国大の石原名誉教授は「自衛隊は私の知る限りでは1970年代から嘉数高台など、激戦地だったところ、全部研修という形で、住民被害の観点はなく、もっぱら戦闘に関するものを彼らは研修していく。(地元の)ガイドは住民被害の視点で説明しようとしてぶつかった」と述べました。
一方、木原防衛大臣は2024年6月7日の会見で幹部候補生学校の教育について問われ、このように述べました。
木原防衛大臣は「沖縄戦の一つの要素として戦術の対応を表現したものと承知している。こういったものをもって防衛省が沖縄戦を評価しているというものではない」と述べました。
また木原大臣は、幹部候補生学校の教育でひめゆりの塔や平和祈念資料館などを訪れていることを挙げて「沖縄戦における住民避難の実態についてもしっかりと認識させている」と強調しました。
旧日本軍と自衛隊の関係性については沖縄戦を指揮した第32軍の牛島満司令官の辞世の句を陸上自衛隊第15旅団がホームページに掲載するなど連続性について議論になっています。