今を生きる私たちが50年、100年先の沖縄について考える「イマジンおきなわ」です。那覇市の中心地で文化の発信場所として愛された大型書店が、先月惜しまれつつ最後の日を迎えました。県内で閉店が相次ぐ本屋の現状とその未来を考えます。
「リブロリウボウブックセンター、21年間お客さまのおかげでここまで営業することができました」「本当に長い間ありがとうございました。」
来店者(北谷町から来た男性)「ずっと通っていた店舗だったので、びっくりしました」
来店者(西表島から来た女性)「(本島に)来るたびに来ていたし、本屋さんが無くなるというのがそういう風潮なのかなと思うと寂しいですね」
また1つ、まちから本屋の明かりが消えました。インターネットが普及し、どこにいても本を手にできる時代に本屋が果たす意義とその未来を考えます。
5月5日(こどもの日)絵本読み聞かせ・さどやんさん「じゃあ、女の子!はいたーい!」
参加者「はいたーい」
さどやんさん「そして、甘いものを食べて歯を磨かない人『歯、いたーい』」(一同笑い)
ことしのゴールデンウィーク、那覇市の本屋には本を囲んで楽しそうに笑い合う子どもたちとその家族の姿がありました。しかし…
絵本読み聞かせ・さどやんさん「皆さん知っていましたか。5月31日でこのお店閉店しちゃうんですね」
先月いっぱいでの閉店が決まっていたのです。那覇市のパレットくもじにある「リブロ リウボウブックセンター店」開業当時からデパートに入っていた「文教図書」から営業を引き継いでオープンした2003年、ある「使命」を担うことになります。それは…
女の子「どんな本が来るのかなーって」車で来たお母さん「すごい楽しみにしています。そういうのがないですからね」
本屋がない離島に出張し、本を届けるプロジェクト。本島との機会格差を少しでも埋めるためコロナ前までの15年間に渡って島の人たちに「本との出会い」を提供してきました。長年愛されてきたリブロ。先月行われた最後の営業日には、多くの人でにぎわいました。
小学生の頃から通う女子高校生「店員さんとかも優しくて、品ぞろえもよかった。一番近くの本屋だった」「こころに穴が開いた感じで寂しいなと思います」
文教図書時代から通う夫婦(那覇市・87歳男性)「専門書も確実に取り寄せてくださったんですよ。非常にお世話になりました」
来店客(那覇市・85歳女性)「ほとんどここしかなくて沖縄に、私たちの小さい時。だからそういう面では寂しいですよ」
閉店時間をまわっても、会計を待つ列が途切れることはありませんでした。
リブロリウボウブックセンター店 大森店長「きょうもたくさんのお客様に来ていただいて、この店が愛されてるんだなというのがすごく感じられて、いい一日だったかなと思います」「沖縄ですとやっぱり店舗数もだいぶ減っちゃってるので、どこの店がというよりは沖縄全体で力を合わせて発展していってもらいたいなと思ってます」
店長「ありがとうございました」
このように今、まちの本屋が次々と姿を消しています。日本出版インフラセンターによりますと、全国にある本屋の数は、2005年度には1万8000店以上あったものの、ことしは1万800店ほどと、半分近く減少しています。また沖縄は、本屋が1店舗もない自治体が占める割合が、56.1%と全国で最も高く、本を直に触れる機会を減らす結果となっています。
Q.リブロ閉店を聞いた気持ちは?ジュンク堂・森本浩平さん「まず最初に感じたのは『ショック』というところですね。」
リブロの閉店をこう振り返るのは、同じ那覇市に店を構えるジュンク堂那覇店の店長・森本さん。離島への「出張本屋」などリブロが果たしていた役割を一部、ジュンク堂が引き継ぐことになりました。
森本さん「本来は本をすべて提供して経営が成り立てばいいんですけど、やはり新たな客層を取り込むというところ」
「大型書店」をコンセプトに、幅広い品揃えが魅力のジュンク堂も去年、経営を維持するためこれまでは本を販売していた地下1階に「中古のホビー商品」を扱う店を入れました。
ジュンク堂那覇店・森本さん「本屋さんに来るお客さんを取り合いするとか、全く無意味な話」「何か力を合わせてやれば、本当に現実的に変わるんじゃないか」
厳しい状況が続くなか、このままでは終われないと県内の本屋が「競合他社」という垣根を超え力を合わせることに決めたのが2015年の「沖縄書店大賞」です。店員が今読んでほしい一冊を選ぶという話題性からその規模を拡大し、業界全体の盛り上げを図っています。
ジュンク堂那覇店・森本さん「僕らが、しっかりとブレずに沖縄県の読書、出版業界の火を消すことのないよう、どんどん発信して提供していくというのが必要なんじゃないかと思います」
ここからは取材をした金城記者とお伝えします。各書店が奮闘を続ける一方で、書店は急速に減っていますよね。
金城記者「そうなんです。閉店は、VTRにあった店舗に限った話ではありません。」
モニター解説書籍のほかDVDなどのレンタルも行う「TSUTAYA」では、ことしに入ってすでに泡瀬店や糸満店など3店舗が閉店しさらにきょう、石垣店の閉店も発表されました。ピーク時には18店舗あった店舗数も、きょう時点で、那覇市内の3店舗を含む5店舗となっています。
これを見ると、「沖縄からツタヤがなくなる」のではないかと感じてしまいますが、今後はどうなるのでしょうか。
金城記者「はい、そこで今回閉店が相次ぐ背景や、ツタヤの今後の展開について担当者に話を聞きました。」
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「33年前からたくさんオープンしていただいたTSUTAYAでしたので、閉店の際には惜しむ声をたくさんいただいております」
那覇市松山に1号店をオープンさせおよそ30年間、県内事業を展開してきたツタヤ。沖縄にある店舗は全て県内企業とのフランチャイズで経営しているため各店舗の閉店理由については明言できないとしながらも、動画配信サービスなどの台頭で客足が減ったことが要因の一つと話しました。
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「(レンタルの利用時目的に)お客さまが来店いただいて、新しい本と出会うことで、売り上げというものが立っていたんですが、この来店頻度、客数というところが減ったっていうところは、とても大きな影響だったと思う。」
近年の動向から県内では「沖縄からの撤退」を噂する声もあがるなか気になる今後の展開は?
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「町に書店と本があり続けるっていうことが、心豊かな世界の実現に繋がると思っていますんで」「これからもそこは続けていきたいと思っております。」
「本屋」として、今後も沖縄で継続する意思を示しました。そのうえで… Q.もしかしたら数年後TSUTAYAが運営するジムに通ってる人がいるかもしれない。そういうイメージでしょうか?
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「はい、人の交流が生まれるような場所っていうのを目指したいと思います。」
これまで来店機会を担っていた「レンタル事業」に代わる『新たなコンテンツづくり』に力を入れたいとしています。
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「色んな地域でTコンディショニングというようなフィットネスジムを備えた書店やピラティスだったりそういったものを併設したツタヤが全国で続々とオープンしている」
読書とフィットネスが同時に楽しめる「TSUTAYAコンディショニング」やラウンジの居心地とオフィスの機能性をかけ合わせた「シェアラウンジ」など『新しい時代の体験型書店』を目指すということです。
カルチュア・エクスペリエンス 徳永晃治さん「新しくツタヤに行きたくなるような取り組みをしていきますのでご期待いただきたいなと思います。」「ぜひ沖縄の皆さんと一緒に新しいツタヤを作っていきたいと思います。」
近い未来、映像にあったような、マシンに乗りながら本を読んだりする時代が来るかもと思うとワクワクしてきますね!
金城記者「閉店だけを見ると寂しい話題ではありますが、今後「本を売る」だけではない 新たな書店の形が生まれる時なのかもしれません。」
リブロの大森店長は最後、私たちに「リブロは閉店となるが今後も沖縄の書店とそこで働く方々を支えてあげてほしい」と話していました。「まちの書店」が果たしている役割を無くなって初めて気づくでは遅いですから書店が営業している今、実際に店舗に足を運ぶなど具体的な行動に移すことが重要です。