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今を生きる私たちが沖縄の未来を見ていくシリーズ「IMAGINEおきなわ」です。今年2月にこの本のことを1度ご紹介したんですが(#IMAGINEおきなわ vol.55 明るい未来つくる「夢の本」沖縄ドリームプロジェクト)はい、今回はこの本が繋いだある縁について取材しました。

この本に登場する人々は皆自分の「夢」について語っているのですが、その夢を未来に託すための取り組みが始まったのです。めでたい席などの冒頭に踊られる「かぎやで風」を披露しているのは琉球舞踊家の嘉数道彦(かかず・みちひこ)さん。5月。嘉数さんは、うりずんの風が心地よい多良間島にやって来ました。

嘉数さん「皆さんこんにちは」

多良間村立中学校を訪れた嘉数さん。全校生徒の前で『「好き」から始まる自分の夢の見つけ方』というテーマで話し始めました。

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

嘉数さん「私の「好き」なものは組踊という沖縄の芸能です。そのスタート地点はおばあちゃんと一緒に見た沖縄芝居。40年、琉球舞踊をやっています。」

WS「踵をしっかりつけて、つま先を、えい。おろさないよおろさないよ!ハイ、ハイ!」

体を使ってのワークショップで、生徒たちと盛り上がります。

WS「息吸って、吐きながら、俯く時に顔の前に手を持ってきてストップ。それでうなだれます。これが悲しいです、という型。」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

嘉数さんがこの島にやって来たのには訳がありました。

宮古島と石垣島のちょうど中間にある多良間島は、独自の文化が根強い沖縄のなかでもひときわ、古くからの伝統文化が暮らしのなかに息づいています。

旧暦8月に島をあげて行われる「八月踊り(はちがつおどり)」は島の人が総出で参加し、「多良間の豊年祭」として、国の重要無形文化財にも指定されています。

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

その一方で島の人口は減り続けています。島の中学校には35人しか生徒がいません。

波平 雄翔(なみひら・かずと)さん「島の子どもたちのために何か連携してできることはないかということで企画を考えたところ、本を読んで八月踊りというものが多良間島にはある、組踊を大切にしている人が本の中にいらっしゃって」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

嘉数さんを島に招いたのは、多良間出身で1度は島を出ましたが4年前に戻ってきた波平さん。今は、島の観光業などに携わっています。二人を結び付けたのは、この本です。「好きを力に、未来を生きる」と題されたこの本の中に二人とも登場するのです。

嘉数さん「多良間で演じられている組踊は長年奉納芸能として民俗芸能のひとつとして沖縄を代表する芸能ですので、いま私が私なりにやっている活動を含めて組踊に対しての思いをお話して欲しいということで」

八月踊りを実際には見たことがないからと1度は固辞した嘉数さんを強く招聘した波平さん

波平さん「自然も素晴らしいんですけど、やっぱり多良間の文化が他のどこにもないものが根付いているなというのを日々感じていて、それを次の世代にどう伝えていけばいいのかというところからすると、すごく難しい面もあるなと感じながら活動していて」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

熱い情熱をもって組踊に取り組んでいる嘉数さんと、島の人とくに子ども達を会わせたいと、口説き落としたのでした。

嘉数さん「みなさんのすぐそばにある大切な文化、芸能というのを是非大切に思ってほしいですし、誇りに思ってほしいし、情熱をもって愛し続けてほしいなと思っています。」

中2女子「興味はあったけど見るだけでどういう歴史があったのかを知らなかったので今日知ることができて良かった」

中2男子「動き方とかも違う感じがしたので」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

中3女子「男性の立ち方や女性の立ち方は多良間の八月踊りと違うことがわかってびっくりしたし」「今年が最後の八月踊りで、小さいときから組踊みてきたけど、今は悲しいと思ってるんだなとかそういうのを感じ取りながら見たいなと思った」

中学卒業と同時に島を出る「十五の春」が運命づけられている子どもたち。3年生にとっては「最後の八月踊り」になります。

嘉数さん「一緒に動いてみると少しずつ笑顔も見られたり共感しているのが伝わるところもありますし、自身の誇りとかを持っているんだなという視線も感じられたり」

中学校を後にして二人が向かったのは、小学生の空手教室。初めての県大会に出場するという子ども達を応援するためにやって来ました。

嘉数さん「みなさん自分ではわからないと思うけど、とっても輝いていました。たくさんいろんな人と会って、いろんな人のを見て、もっともっと輝いて下さい。応援してます。」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

嘉数さん「私自身がとても大きな刺激を受けたなと改めて感じています。これだけの人材がいるんだなということと、逞しく、頼もしく思いました。」

波平さん「多良間島が、15歳の春を迎えて島を巣立った後に夢を叶えるひとつの場所として選ぶ、選択ができるような島にしていきたいなと思っています。」

嘉数さん「次の世代が少しでもいい形でこれ(伝統文化)をつないでいけるような状況になるような種まきを私たちは今しなきゃいけない世代なのかなと」

IMAGINEおきなわ#66 琉球舞踊家、多良間島の子ども達と出会う

小さな島で、男たちの大きな友情がうまれました。

嘉数さんの取り組む「組踊」と多良間島の「組踊」には所作をはじめいろいろ違うところがある(どちらが正しいという事ではなく流派のようなもの)多良間島は本当に「文化の宝箱」というくらい、昔ながらの伝統文化、風習が息づいている。ウチナーグチもそうだけど言葉や文化の担い手、文化財の保全などは離島では本当に深刻な問題。

でも希望をもって未来に繋げようとしている男たちの姿は眩しいですね!そんな伝統文化の代表、八月踊りは今年は9月に開催。QABではその八月踊りも取材予定です!

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