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続いては、特集です。アメリカ統治下の沖縄で、実際にあった事件を基に構成された物語の舞台が、来月、沖縄で初めて公演されます。物語では、本土復帰とアメリカ軍の存在との狭間にいる沖縄の人の様々な気持ちを表現されています。今回、脚本を手がけた劇作家や出演者への取材を通して沖縄で舞台を披露する思いを聞きました。

劇作家・兼島拓也さん「沖縄の過去の歴史を伝えると同時に過去から現在までに流れている時間が変わらないことと、変わってしまってることを全部含んだ形でこの作品は描かれるべきなんじゃないかって思ったので」

県内在住の若手劇作家・兼島拓也さん。沖縄本土復帰50年の年に神奈川で上演された話題作「ライカムで待っとく」の脚本を手掛けました。「ライカムで待っとく」は、アメリカ統治下の沖縄で起こったアメリカ兵に対する殺傷事件を追う雑誌記者が過去と現在が渾然となった不可解な状況下にいざなわれていくさまをミステリータッチで描き、日本と沖縄の関係を問います。

特集 沖縄と日本の在り方を問う 舞台「ライカムで待っとく」

2022年にKAAT(カート)神奈川芸術劇場で初演され、第30回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞するなど高い評価を受けました。今回、再演が決まり、沖縄を含む4都市で上演されます。

劇場からオファーを受けた兼島さん。この事件追うノンフィクション「逆転」に着想を得て取材を重ね、脚本執筆には1年半をかけました。作品の根底にあるのは、基地と生活が隣接している中で活動を続ける兼島さんの「沖縄は日本のバックヤードなのか」という思い。

物語が展開するライカムは、かつて琉球アメリカ軍司令部とその関連施設だった場所。いまはその名を残したまま大型ショッピングモールが立っていますが、快適な店舗とそれを支えるバックヤードの対比は、基地問題の比喩でもあります。

劇作家・兼島拓也さん「この島全体がね、バックヤードなんですよ。日本の」「誰だって住む地元、地域っていうのは、みんな違って、たまたまここに基地がある。たまたまここに住んでいる。ということで、それを政治的選択として押し付けられて、だからあなたたちの問題なんだよ、という風に矮小化されてしまう」「沖縄の外から考えなくていいことにされてしまうことが、すごくなんというんですかね、悔しい」

特集 沖縄と日本の在り方を問う 舞台「ライカムで待っとく」

一方で、沖縄の基地負担に反対、容認、中立とそれぞれの立場の人物を登場させることで、ひとくくりにできない、沖縄の人たちの複雑な感情もにじませています。

今月19日。本番を間近に控え、稽古も熱を帯びていました。演出は沖縄にルーツを持つ田中麻衣子(たなか・まいこ)さんが手がけ、出演者には、沖縄出身のあめくみちこさん、神田青(かみだ・せい)さんらが名を連ねます。

2022年の初演に続き出演する、あめくみちこさん。

俳優・あめくみちこさん「厳しい現状というか、今も変わらず。今どんどん2年前の初演のときよりも今ちょっと世の中がどんどんきな臭い方にいっている気がし」「お客様がどういう風にこのお芝居、ほんとに沖縄在住のお客様がご覧になって、どういう風に受け取られるんだろうっていうのは、すごく思います」

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また今回新キャストとして、県出身の俳優、佐久本宝(さくもと・たから)さんを起用。雑誌記者を乗せる「運転手」と「佐久本」の2役を演じます。

俳優・佐久本宝さん「まずは、台本を手にしたときは、率直にどうしよう、できるのかなこれを。っていうのはすごく考えましたし迷いましたね」

出演のオファーをこのように振り返る佐久本さん。伝える側に回る責任と大きさを自覚する一方で、感情としては中立でいたいと考えています。

俳優・佐久本宝さん「いろんなうちなーんちゅがいるなかで、それを代表の声だよというのはあまりおもしろくもないだろうし、だからこそ、気持ちは入るんですけれど、思いとかもあるんですけれど、すごくフラットにやらなきゃいけない、どっちつかずってことなんですけれど、だからこその葛藤が見えたりというのが、沖縄の人間の、なんでしょうね、人間味なるんじゃないかなとと思って」

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そして、初演に引き続き演出を手がけた田中さんは、再演への意気込みをこう語りました。

演出・田中麻衣子さん「何を知る、知ろうとしてもらうためのきっかけだったりになる可能性がもしかしたらちょっとでもあるかもしれないなと、希望みたいなものは感じましたね。その希望を信じてみようと思いましたね」

劇作家・兼島拓也さん「演劇としての楽しさ、おもしろさっていうのが、すごく詰まった作品になっているので」

まずは、おもしろさを入口にこの作品を楽しんでほしいと話す兼島さん。一人でも多くの人に考えるきっかけになればと期待を寄せています。

劇作家・兼島拓也さん「いろんな立ち場の人が同じ場所にいて、同じものを見ている。それぞれいろんなぐちゃぐちゃしたものを持ち帰って、そこで何かしらの対話が生まれたり(54)見方の変化が生まれたりしたらいい」

特集 沖縄と日本の在り方を問う 舞台「ライカムで待っとく」

今なお続く沖縄の不条理は、沖縄だけの問題なのかを問う舞台「ライカムで待っとく」いよいよ、来月沖縄で上演です。

ライカムで待っとくは、今月24日から神奈川で公演が始まっていて京都、福岡での公演を経て、来月22、23日に那覇文化芸術劇場なはーとでも上演されます。注目度が高く、残り僅かということです。

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沖縄公演のお問い合わせは098-861-7810 なはーとまで。