続きまして、特集です。先週17日、アメリカのエマニュエル駐日大使が与那国島と石垣島を相次いで訪問しました。与那国島の駐日大使としての訪問は初めて。沖縄に駐留するアメリカ軍のトップも同行する視察の意味を分析する中で見えてきたのは、これまでも要人の訪問で行われてきた国境の島の政治的な利用です。
エマニュエル駐日米大使「抑止力をしっかりと示すために、日米がパートナーシップを結ばなければならない」
与那国島、日本最西端の碑の前でこう強調する、エマニュエル駐日アメリカ大使。アメリカの大使として初めて与那国島を訪れました。報道陣の取材には、日米同盟の意義を強調。アメリカとして与那国島への関与を続ける方針を示しました。
エマニュエル駐日米大使「日本は最近、沖縄の一部のこの地域にリソース、能力を集中させている」「それは安全保障、抑止力の上で、与那国、石垣島が重要だということだ」
視察に使ったのはアメリカ海兵隊の航空機。空港を管理する県が軍用機の使用自粛を求める中で、強行した形になります。
抗議した人「人々が安心して暮らせる島にしてほしい。ここに米軍はいらない」
田里千代基議員「台湾海峡有事があったら拠点になりうると確信したと(米政府に)報告するのではないか」
軍用機を使った訪問や、軍高官の同行に反発もある中、この人は。
通訳「町長が何かお話ししたいことがあれば」糸数町長「特にないですね」エマニュエル大使「町長でコメントがないとおっしゃったのは初めて」
糸数町長は視察に同行したものの、その後の報道陣の取材の求めにも応じず、与那国町の立場としての訪問への受け止めは、語られませんでした。
台湾・游立法院長「ヨナグニ、コンニチハ」
与那国島の政治的な利用の傾向は、以前から見られていました。去年7月、台湾の国会議長にあたる当時の游立法院長の与那国島訪問。台湾から高速船で与那国島に入り、目的は「上陸観光・文化交流」とされました。ただ、日本側も含めて同席者からは、台湾有事を念頭にした発言が、目立ちました。
游立法院長(当時)「この地を踏んで、安倍元総理が言った『台湾有事は日本有事』。肌で実感した。台湾と日本は地理的に近いだけでなく、切っても切れない関係がある」
古屋日華議員懇談会会長「中国はいまちょっと常軌を逸した動きをしている」「私たちは、共通の価値観を持つ国々が連携して、けん制することが極めて重要」
「ネイビー ゴーホーム」
さかのぼること17年前の2007年、与那国島にはアメリカ海軍の掃海艦が入港してます。在沖米総領事館・メア領事(当時)「しばらく入っていない港に入るときに、間接的に情報が入る」
友好親善や乗組員の休養が目的とした軍艦の寄港時、当時のメアアメリカ総領事も与那国に入っています。メア氏は外交公電で与那国について「台湾有事の際、機雷除去の拠点になりうる」と記していました。
それから9年後の2016年、与那国には駐屯地ができ、共同訓練でアメリカ軍も島に入るようになりました。今回は、沖縄に駐留するアメリカ軍のトップ、ターナー4軍調整官も同行しました。
エマニュエル大使ら関係者を迎えた与那国駐屯地。17日、台湾から最も近い自衛隊の拠点には、日の丸とともに、星条旗が掲げられました。
エマニュエル大使「与那国に来た初めての駐日米大使だが、私が最後になることはない」「米国民、米軍人・軍属がもっと来ることが、経済安全保障、国の安全保障になる」
有事が語られる台湾に日本で最も近い与那国島が、軍備強化のための政治的パフォーマンスに、使われ続けるのか、注意を払う必要があります。
金城アナウンサー「ここからは与那国島で取材した、塚崎記者です。アメリカのエマニュエル大使、与那国島、石垣島訪問となったわけですが、何をして、どのような話をしたのでしょうか。」
塚崎記者「エマニュエル大使の与那国島滞在は、3時間ほどで、次の訪問先の石垣島へ向かいました。与那国では最西端の碑を視察したほか、陸上自衛隊の駐屯地での会食、漁港も視察しました。漁業関係者からは、2022年に中国が日本の経済水域内に演習でミサイルを撃ち、少なくとも1週間、漁に出られなくなったことなどが報告されていました。」
金城アナウンサー「エマニュエル大使からは、どのような発言があったのでしょうか。」
塚崎記者「大使からは、今回の訪問が、アメリカが八重山地域への、関与を深めることを示唆する発言が相次ぎました。アメリカの駐日大使としては、初めての訪問となったわけですが、「日本全土へのコミットを示すために前任者は来るべきだった」と強調していました。また、日本を「世界一の同盟国」などと、関係の緊密性をアピールするようなコメントも、目立ちました。」
金城アナウンサー「アピールが目立ったということですが、与那国島ではこれまでどういった動きがあったのでしょうか。」
塚崎記者「アメリカの駐日大使の視察は今回が初ですが、アメリカのインド太平洋軍の司令官は少なくとも2度、すでに与那国を訪れています。この時は、自衛隊の制服組トップの統合幕僚長も同行していて、2021年の視察では「平時や有事の活動をシームレスに行う」ということで合意しています。こうした認識は、翌年の2022年に閣議決定された安保3文書などに盛り込まれ、訓練で具体化されていくこととなります。」
「また、最近では今月3日の憲法記念日に憲法改正を求める集会に糸数町長が登壇し、自衛隊の明記などを訴えてます。登壇するときに、国境の島のトップと紹介されるなど、与那国島が、台湾有事などの危機を強調する政治的な文脈でアイコン的に使われるという、傾向も目立っています。」
金城アナウンサー「与那国島の位置づけがある意味で利用されている、ということですが、私たちは与那国島を今後、どのように捉えていくべきなのでしょうか。」
塚崎記者「日本最西端の島であるという、与那国島の位置を防衛の拠点という面以外に着目し、それを発信、強化すべきだと思います。」
「台湾から111キロの距離にあって、気象条件が整えば、肉眼でも台湾を望むことができる与那国は戦後間もないころまでは台湾との交易が盛んで、島は潤っていました。国境の島は、日本から見れば最果ての地ということですが、隣国から見れば、一番近い日本の土地であることを示しています。」
「与那国では、自衛隊の配備計画が浮上する前、台湾との経済交流を活性化する方針をとっていましたが、今それは足踏みを続けています。」
「エマニュエル大使も与那国で「経済安全保障と抑止力はセット」と何度も強調していました。そうであるのであれば、与那国や先島地域での、防衛力強化・日米の連携だけでなくて、経済的繁栄についても具体策を示してほしかったと思います。」
金城アナウンサー「私も与那国島に何度か取材でうかがっているのですが、ほかの島にはない、ほかにどこにもない文化や言葉が残る島で、文化的にすごく豊かな島なんです。台湾との交流が深いという関係性もありますし、島の人々は島に愛着を持って生活をしているわけですから、子どもたち、その先の世代の人たちも安心して住める島であってほしいと思います。ここまで塚崎記者でした。」