首里城復興の今と人々の思いを隔週で伝える『週刊・首里城』です。
着々と進む「令和の復元」ですが首里城の再建現場以外でも作業が行われています。正殿の屋根から地上を見守る巨大な「龍」の焼物をつくる彫刻家の思いに迫りました。
南城市にある作業場で黙々と手を動かす人たちの姿がありました。つくっているのは、正殿の屋根を飾る「龍頭棟飾」です。龍頭棟飾とは龍をかたどった飾瓦のことで、正殿の正面、ここ!唐玻豊屋根の中央と建物の左右に据えられます。
龍の頭、龍頭といっても、建物の背後の棟にも龍の背中は続いていて大きく猛々しいその姿は、まさに「正殿の守り神」その製作者のひとりが彫刻家の早川信志(はやかわ・しんじ)さんです。
彫刻家・早川信志さん「パーツごとに区切って作っているので1点だけ見ても分からないかもしれない。実際に焼き上げて組み合わせるとようやく分かると思う」
『パーツごとに区切って作っている』ってどういうこと?
実は、屋根の端の龍だと長さ約3.4m、重さ1t超えと、かなり大型な焼き物であることから龍・1体当たり「約200個」のパーツに分けて製作。窯で焼きあげた「陶片」をパズルのように組み立てると完成する仕組みになっているんです。
彫刻家・早川信志さん「まだ少し柔らかいので傾けることはできないがこういう風につながる」「こんな形になります」
現在は、石膏で作られた原型に陶土を打ち付けて型を起こす作業と、乾燥が進んだものを型から外して形を整える「仕上げ」を並行して進めています。巨大な焼き物・棟飾をつくるには陶芸・建築の技術、そして早川さんがこれまで培ってきた「彫刻」のスキルが求められると知り、志願して現場入りしました。
彫刻家・早川信志さん「自分の出身校が沖縄県立芸術大学で、首里城のふもとにある大学なので普段から見ていた正殿が首里城が焼けているのが本当に心苦しかった」
あの日も、非常勤講師を務める芸大で火災を目撃、何もできずただ時間だけが過ぎていきました。そんな早川さんを突き動かす思いがあります。
彫刻家・早川信志さん「沖縄への恩返し」「ちゃんとした龍をのせたいという思いがある(龍頭棟飾は)首里城の顔になる部分でもある県民に喜ばれるような棟飾りにしたい」
自分を育ててくれた沖縄のために、早川さんがつくる「棟飾」は今月末にも「窯入れ」が始まる予定です。
令和の復元の「龍頭棟飾」は前回の復元に携わった技術者に、県立芸大の卒業生、壺屋焼の職人が加わりチームで製作中で2025年の設置を目指します。
3体の龍(1対の龍、唐破風の龍)は各200パーツほどだが、予備も含めて1000パーツほど製作予定。令和の復元では県産(恩納村)の粘土が使われている。