特集です。対中国を念頭に南西諸島で政府が進める自衛隊配備の強化、いわゆる「南西シフト」。当初は日本最西端の与那国島など、先島地域を「防衛上の空白」として部隊を置いてきましたが、沖縄本島でも施設建設計画が浮上してきています。
QABではシリーズ「沖縄と自衛隊」などで南西シフトの問題点を取材し続けてきました。そして、今回、報道特別番組を制作し、島々で起きていること、そしてそこに住む人々の姿を通して、今を見つめます。
糸数健一氏「国家の命運をかけ、岸田総理初め、国会議員の先生方はもちろん全国民がいつでも、日本国の平和を脅かす国家に対しては一戦を交える覚悟が今、問われているのではないでしょうか」
今月3日の憲法記念日。憲法改正を目指すグループが開いた集会で、こう強調したのは、糸数健一与那国町長。
台湾と隣り合う、「国防最前線」の島のリーダーとして登壇。憲法への自衛隊明記や、緊急事態条項の創設を訴えました。
与那国島では、2016年に自衛隊駐屯地が開設。政府が進める自衛隊増強、南西シフトはここから始まり、県内では宮古島、石垣島と駐屯地の設置が続きました。いま、那覇駐屯地の部隊増強に伴う形で、沖縄本島でもその流れは浮上しています。
糸数健一氏「尖閣諸島や、台湾有事のことを考えた場合、様々なことが浮き彫りになる。それはすべて突き詰めると、現憲法に突き当たってしまうのではないでしょうか。台湾は一番大切な隣国です。日本は旧宗主国として、台湾に対する責任を放棄してはなりません」
防衛省も可能性を指摘しているのは、中国が台湾に進攻した場合の有事。自衛隊とアメリカ軍は、離島での作戦を念頭に、各地で訓練を繰り返しています。
浜田防衛大臣(当時)「南西地域における防衛体制強化は、我が国を守り抜くという決意の表れであり、隊員諸君はその精鋭」
去年3月に開設された石垣駐屯地。数か月後には訓練でアメリカ軍が入り、星条旗がはためきました。さらに今年3月には石垣港にアメリカ海軍のイージス艦が寄港。自衛隊の配備が進んできた先島でも、連動する形で、アメリカ軍の存在感が増してきています。
中山・石垣市長「安全保障に対する懸念が高まっていることに対する万一の事態の備えも、本市も国民保護を一義的にになう立場として、市民の生命、身体、財産を守るための万全の準備を行う責務がある」
さらに石垣港は4月1日、政府が特定利用空港・港湾に指定。自衛隊などが有事のみならず、平時も円滑に利用できるようになりました。
与那国島では自衛隊の使用も念頭にあるとみられる空港の拡張や、港の新設計画も浮上。糸数町長は、民間利用を求め、整備を進めるよう訴えています。
田里さん「与那国町が要塞化になって、自衛隊頼みの、自衛隊に物言えないよと、そういう島になっていくんだよと。地域の政策が、地域住民じゃなくて、防衛省・自衛隊の思惑で動かされることになる」
一方、与那国町議会で糸数町長の姿勢を追及し続けているのは、田里千代基議員。町長のみならず、南西シフトを進める政府にも厳しい目を、向け続けています。
田里さん「ハア。ずっと戦いばっかりさな。息切れする。でもやるしかないからな」
田里さんが軸にするのは、自衛隊配備計画が浮上する前、与那国の人々が記した「自立へのビジョン」。
台湾から110キロの距離にある与那国の条件を生かし、与那国と台湾の間で交通を開くことを目指しました。辺境の島から交流の島へと、脱却を掲げた計画が、足踏みを続ける中、与那国では自衛隊の強化が続いています。
田里さん「自衛隊問題で地域が分断されて、行政も分断されて、自立ビジョンが潰されたのは悲しいこと。でもやりますよ。これは難しい、身の丈を超える話じゃない」
国防の大義の下、加速度的に進む軍備の強化と、自立や自治を目指す島の人々の想い。それらを通し、島を守ることの意味を、考えます。
町長の発言に刺激が強いものもありましたが、うるま市での配備が白紙になったとはいえ、住民が置き去りになっているという現実は、しっかりと私たちが受け止めなければなりません。
報道特別番組「誰のために島を守る~自衛隊配備その先に~」