首里城の復興を追いかける復興のキセキです。現在、宮大工による木工事が行われていますが、夏ごろからは漆塗りや屋根に赤瓦を乗せていく”瓦葺き”も予定していて、現場が大きく動く変化の年なんです。
今回は、その最盛期に向けて急ピッチで進む「瓦づくり」の現場を取材しました。
朱色に輝く城(グスク)に欠かせないのは屋根を彩る鮮やかな「赤」。女瓦(ミーガーラ)と呼ばれる「平瓦」の上に男瓦(ウーガーラ)と呼ばれる半円・筒状の「丸瓦」をのせ、漆喰で固めた屋根は、台風などの強風にも負けない美しさと実用性を兼ね備えたものです。「令和の正殿」にも24種。およそ6万枚もの赤瓦が葺かれる予定です。
今回、瓦づくりの舞台となるのは与那原町にある3つの工場。実はその昔、本島北部から物資を積んだ「やんばる船」が入港し 海上交通の要として栄えた与那原。当時、瓦を焼くのに必要だった木材が手に入りややすく県内有数の瓦生産地として栄え、今も多くの瓦工場が残ります。
今年2月からは瓦を焼き上げる作業がスタートしていて来月末にも順次完成した瓦から正殿へ搬入される予定です。そのうち、平瓦の製造などを行う「島袋瓦工場」!2万枚以上の瓦を納めます。
島袋瓦工場 島袋義一社長「首里城の瓦をバラバラに配合したら色味や規格、寸法が違ってくるから配合は一カ所でやろうと決めて」
島袋瓦工場では、今回の復元で使われるすべての瓦の原料となる「土づくり」も並行して担当しています。
島袋瓦工場 島袋義一社長「これが配合表なんですけどね」
原料となるのは6種類。鉄分を多く含み熱すると酸化し瓦を赤へと変える主原料・「クチャ」3種をはじめ、「赤土」 「炭酸バリウム」。そして令和の復元の目玉「シャモット」です。
島袋瓦工場 島袋義一社長「火災にあった瓦を粉砕してもっとつぶしてパウダー状にしたものを『シャモット』という。平成の復元の時の職人の思いを 少しでも令和の復元にも思いを込めて復元しようということで、原料に還元している」
「平成のDNAを受け継ぐ令和の瓦を作る」本来は混ぜることのないシャモットを加えても「品質の高い瓦」を作るため、研究に研究を重ね配合が決まりました。
何種類もの機械で潰されかき回され「粘りのある土」へと仕上がります。
島袋瓦工場 島袋義一社長 「そば・うどんと一緒ですよ。練ってねって、コシが出る」
正殿の瓦の製作に必要な原料はなんと(約)350t!
島袋瓦工場 島袋義一社長 「いやぁもう最高のものが出来上がったと思う。首里城は 県民 世界・全国のものだから シンボル的なものだからこの仕事に携わっているのは一番励みになるし、もちろん私も従業員も職人も瓦に関係している人みんな励みになると思う」
一方、「丸瓦」の制作にあたるのが 「八幡瓦工場」(1950年創業)です。
八幡瓦工場 八幡昇社長「最初一日に4~500枚できるだろうと予定していたが今半分もできていない」
屋根にのせた瓦同士の継ぎ目を覆う丸瓦!特に、ミリ単位での細かな調整が求められます。
八幡瓦工場 八幡昇社長「これは今角度が合わないから 隙間があいているでしょ。(Q.隙間が開いているとだめ?)だからちゃんと倒してまっすぐになるように」
ひび割れやひずみなく、形を調整できるのは成形から2~3日以内。八幡さんお手製・角度計を使って、1枚1枚職人の手で確認しています。ちなみに規格にあったものはピッタリはまります。
八幡瓦工場 八幡昇社長「普通はそこまでやらないけどね(Q.首里城はやっぱり特別ですか?)そうですね みなさんの万民の思いがかかっているから」
時間をかけ製作する「丸瓦」 実は、今回の復元で「ある部分」が変わるんです。
八幡瓦工場 八幡昇社長「平成の模様はこれ これは今度の令和の」
近年、城内からの出土品や古い写真などが新たに見つかり再検討された結果、軒先に取り付ける「軒丸瓦」の文様が変わることになりました。平成の復元時には、牡丹とみられるものを「側面から見た文様」とされていましたが今回、「正面から見た文様」へと変更されるということです。
現在、再建の現場では、瓦葺きの工程に向けて軒回りの工事が進んでいて3つの工場でつくられた瓦は夏ごろにも正殿を彩る予定です。
島袋瓦工場 島袋義一社長「みなさんが完成の暁に首里城を見て あぁ素晴らしいな 瓦も素晴らしいな 漆もなんでも素晴らしいなという そういう首里城を目指している。県民みんなの思いもあるし ぜひ大成功におさめたい」
八幡瓦工場 八幡昇社長「平成の瓦は国がぜんぶ主導してきたが今回の令和の瓦は県民が主体でやっている万人(うまんちゅ)の宝になると思う。日本一とは言わないが我々の製品がよりこれから100年、200年も誇示できるような製品にしたい」