今を生きる私たちが沖縄の未来を考えるシリーズ「IMAGINEおきなわ」です。今回は、誰もが知るお話を沖縄版にアレンジした観客参加型の舞台を取り上げます。その名も「ウチナー音でちむどんどん♪」。
今回の演目は「日本の民話」を基にした芝居に挑戦しました。「新しい取り組みとして言葉や文化を継承できれば」と、この舞台を主催する琉球舞踊家の思いに迫ります。
休日のひとときに、人々が鑑賞するのはウチナー芝居。みんなの心をひとつにするのは、太鼓の音!
ウチナー口で表現されるストーリー、内容はそう、誰もが知るこのお話は「かちかち山」なのです。登場人物たちはうちなーぐちを駆使してストーリーが展開します。
先月、那覇のパレット市民劇場で開催されたのは今年で4回目となる「太鼓で遊ぼう!ウチナー音でちむどんどん♪ウチナー版かちかち山」。多くの人々が訪れました。
嘉数道彦さん「太鼓であそぼう、うちなー音でちむどんどん案内役を務めさせていただきます嘉数道彦と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
この舞台の脚本・演出を務める琉球舞踊家の嘉数道彦さん。那覇市出身の嘉数さんは4歳のときから琉球舞踊を習い、沖縄県立芸術大学を卒業、国立劇場おきなわの芸術監督など、琉球芸能の第一線で活躍しています。
嘉数道彦さん「(この公演は琉球芸能の公演ですが)鑑賞だけに止まらず、お客さまも一緒に舞台に参加してみようというような体験型のプログラムで番組が構成されています」
この公演最大の魅力は、観客が「観る」だけでなく太鼓や楽器など、好きなもので参加して楽しめること!
まずは太鼓の先生に合わせてみんなで練習します。公演が始まった4年前は新型コロナの影響で、観客が声を出すことができませんでした。そこで嘉数さんは声を出さずに音を出す「太鼓」での参加を思いついたのです。
嘉数道彦さん「何と言っても沖縄のリズムをとるというところでは、太鼓や打楽器の音は非常に親近感のあるものですので」
手に持ったパーランクーや何かの容器、何も持っていない人は手拍子で、一緒にリズムを刻みました。楽しそうですね!また、今回は舞台脇に翻訳台を設置したり、客席を役者が通るなど演出としても新しい試みを行いました。
観客「たのしかった!」
観客「母:太鼓を持ってきて。ばっちり用意してきました。(D:叩いてどうでしたか?)息子:楽しかったです。母:楽しんでいたと思います」
観客「とっても良かったです。(D:手拍子とか)あ、やりました。とっても楽しかったです」
観客「パーランクーと鈴(やりました)。(D:これやったのどんな気持ちになりましたか?)楽しい。言葉はわからなかった」
嘉数道彦さん「今の特に子どもたちや若い方々は、字幕があるからといってもうちなーぐちばかりでは厳しいという点もあるかと思いますので、聞きなれた言葉とうちなーぐちの心地よさというのを一緒に味わってもらおうという面で」
登場人物のうち、ハーメー(おばあさん)とウサギは北海道出身、ウスメー(おじいさん)とタヌキは沖縄の人、という設定で、聞きなれた言葉とうちなーぐちをブレンドして舞台は進みます。
観客「文化に触れるのっていいなって思いました。とても面白くてまた見たいです。本で見るより舞台で見た方が面白いこととかあった」
観客「おじいさんはやらなくていいって言うけど、ウサギがおじいさんを脅してまでやったところがあんまり良くないなと思った」
嘉数道彦さん「かちかち山自体が非常に酷いお話だなと感じてましたので、それを沖縄だとどうなるんだろうと、うちなーんちゅの沖縄の芸能の核である、うちなーんちゅの心というものをどのようにこの作品の中で表現ができるのかなっていう意味では自分でも挑戦でした」
これまで「スイミー」や「ブレーメンの音楽隊」などを題材に「うちなー版」のお芝居をつくってきた嘉数さん。今回かなり残酷な内容の「かちかち山」を、沖縄の人の特性である「優しさ」や「慈悲深さ」を主軸にしたらと考えて構成し、その結果、たぬきは救われたのでした。
他にも、空手の要素が盛り込まれた力強い演舞「武の舞(ぶのまい)」や、5つの琉球楽器の音色を楽しめる「彩遊び(いるあしび)」など、盛りだくさんの内容で観客を楽しませました。
嘉数道彦さん「伝統的な作品を先生方、先輩方から学べるという状況もありつつ、次の世代へつないでゆくためのひとつのチャレンジとして、こういった新しい取り組みは継承してゆくのと併せて、並行してチャレンジしていければなと思っています」
嘉数道彦さん(D:子ども達もパーランクーなど楽しそうでした)そういう機会を少しでも多く、小さい頃から楽しめるという環境を作っていくのも私たち世代の大きな責任かな役割かな、と思っています」
その思い、みんなにも伝わっていますね!