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政府が南西シフトとして進める自衛隊配備や、有事の問題などを考える「沖縄と自衛隊」です。今回は、うるま市勝連の地対艦ミサイル配備を取り上げます。

宮古島、奄美大島、石垣島とミサイル部隊が置かれてきましたが、沖縄本島でも行われ、南西諸島の地対艦ミサイル体制が完成した形になります。中国を念頭に配備を進めてきた政府の意図を読み解きます。

今月、開設から1年を迎えた、陸上自衛隊・石垣駐屯地。発射台を空に向けたのは駐屯地に配備されている「12式地対艦誘導弾」。地上から発射し、周辺海域の艦船を撃破するための国産のミサイルです。

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

第303地対艦ミサイル中隊・汐崎仁昭中隊長「島しょ部に対する侵攻を可能な限り洋上で阻止することを目的とした装備品」「この厳しい安全(保障)環境を踏まえれば、南西の防衛力強化は喫緊の課題」「島しょ部を含む南西地域にたいする攻撃に対する抑止力・対処力を高めるという観点で、我が国に対する攻撃の可能性が低下したり」「沖縄県民や日本国民の安全、安心を守るものというところでそこにつながっていくものと認識しております」

南西シフトで政府が自衛隊の駐屯地を新設した、奄美大島、宮古島、石垣島と配備が進んできた地対艦ミサイル。今月中にもうるま市の勝連分屯地にも配備され、南西諸島の地対艦ミサイル部隊を束ねる連隊本部も置かれる計画です。南西諸島の島々に、ミサイル配備を進めてきた政府の意図を読み解きます。

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

14日未明、真っ暗な沖縄本島内を走り抜ける、迷彩色の車列。航空機で運ばれてきた地対艦ミサイルの発射器とみられる車両が、真夜中に那覇から勝連分屯地に移動したのです。

抗議参加者「戦争のための基地はいらない」「我々は決してあきらめないぞ」

それに先立って、10日。関連車両の陸揚げが中城湾港でも行われました。「2023年度中」の勝連へのミサイル配備と連隊本部設置を掲げてきた政府。年度末の今月に入って、駆け込み的に、配備に向けた動きを加速させました。

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

ミサイル配備から命を守るうるま市民の会・照屋寛之共同代表「行っている行政に対して『こういう必要性からミサイル配備をする』と説明する義務があると思う」「そして、地域住民が反対しているのであれば配備してはいけない」

ミサイル配備に反対してきた市民グループは、住民説明会開催を求めてきましたが、それさえ開かれないまま、ミサイルの配備は行われることになります。今回のうるま市への配備で、一つの形が出来上がる、南西諸島での対艦ミサイル配備網。識者はどのように見るのでしょうか。

自衛隊の取材も重ねてきた、ジャーナリストの布施祐仁さんは有事に部隊を離島に分散展開するアメリカ海兵隊の作戦構想遠征前方基地作戦・EABOの影響を指摘します。

布施祐仁さん「当初は、自衛隊として尖閣諸島を含めこの南西諸島を防衛する」「万が一、侵略を受けることがあれば、島に上陸される前に地対艦ミサイルをもってブロックする。そういう日本の国土防衛が趣旨だった」「それが台湾有事において、アメリカのEABOという作戦を日米が一体になって遂行する」「南西諸島を中国をブロックするためのいわばその手段として使って、台湾有事に勝利するための作戦を行うそういう構想に変わってきている」

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

今回配備される12式地対艦誘導弾は、射程を伸ばした能力向上型の開発が決まっています。射程を伸ばしたタイプは、政府がおととし閣議決定した安保三文書で保有を決めた敵基地攻撃能力にも活用される計画です。

南西諸島への射程延長型のミサイル配備の可能性について、陸上自衛隊はQABの取材に「具体的な配備先は決定していない」と回答しています。

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

布施祐仁さん「台湾有事の際に中国軍の作戦拠点となる、台湾に近い中国沿岸部の様々な基地とか、軍港とか様々な施設」「そうしたところを攻撃するには、距離から言っても南西諸島・または遠くても九州、ここに配備しなければ届かない」「おそらくこうしたところが配備の有力な配備先となるのでは」

南西諸島で行われてきた自衛隊とアメリカ軍の訓練でも、実践に移されてきたEABO。この作戦にのっとって日米のミサイル部隊が各離島に展開していく可能性もあります。

布施祐仁さん「台湾有事で米軍がEABOという、作戦構想を立てた一つの大きな理由に」「有事になれば基地が真っ先に狙われる、攻撃を受けると」「(離島に展開することで)中国の攻撃をかわしながら、自分たちも攻撃を行う、そういう考え方」「上陸される前にミサイルでブロックするという南西諸島を守るための構想だった地対艦ミサイル部隊の配備が、逆に攻めてきてもないのに台湾有事が起きたら、そこを拠点に中国に攻撃を行う」「南西諸島に逆に戦火を招く、呼び込むものに変わっている」

南西諸島の島々に置かれた地対艦ミサイル部隊が、県民を守る存在なのか逆に戦火を呼び込む存在なのか、私たちは見極めなければなりません。

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

ここからは塚崎記者です。今回のミサイル配備はうるま市勝連で行われています。冒頭のニュースでは同じ、うるま市・石川の自衛隊訓練場整備計画についてお伝えしましたが、改めて、どのような状況になっているのでしょうか。

塚崎記者「それらに加え、沖縄市に自衛隊の弾薬庫を設置する計画も政府は立てています。本島中部地区は、すでに嘉手納基地・普天間基地をはじめとした多くのアメリカ軍基地を抱えています。これらのアメリカ軍基地の負担軽減が見通せない中で、南西シフトに伴う自衛隊の強化が進むことは、実質的な基地負担が増すことにつながります。」

沖縄と自衛隊(21) うるま市勝連・ミサイル配備 南西諸島ミサイル配備が「完成」へ 政府の意図と住民への影響は

政府はこの3月に入って、勝連のミサイル配備に至る動きを加速させていますね。どういったところに狙いがあるのでしょうか。

塚崎記者「去年も石垣島で年度末の3月に、駐屯地新設のため、自衛隊車両や弾薬の搬入を行いました。勝連分屯地のミサイルも年度末に駆け込み的に配備を行う姿勢は住民の懸念に向き合うよりも、年度内に配備を完了させ、体裁を整えることを優先する意図さえ感じます。うるま市石川の訓練場設置では県民の反発が強まっていますが、今後も政府が進める自衛隊配備に関して、スケジュールありきで配備を強行する姿勢を取り続ければ、県民の反発を生むばかりだと思います。」

ここまで塚崎記者でした。