琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。本日もよろしくお願いします。
湊和雄さん「よろしくお願いします。さて今回のテーマなんですが「暖冬の影響は?」ということで、はい、地球温暖化、暖冬などと言われて久しいですが、今年の冬は夏日連発で暑い日も多かったですよね」
冬の季節とは思えないくらい暑い日が続いてましたね
湊和雄さん「ということで、今回はこのような気候の時に、動植物たちにどのような影響を与えているでしょうか?さっそくVTR見ていきましょう」
湊和雄さん「こちら、今週初めに撮影したやんばるの山並みなんですがやんばるの森で最も広大な地域です。麓の辺りでは、既に新緑が始まっているのが判りますね。」
確かに、きれいに色づいていますね。
湊和雄さん「新緑は標高の低い部分から始まって、次第に高いところまで拡がるんですよ。まだ低く窪んだ部分だけに明るい色、新緑が観られます。」
ところどころに明るい部分ありますね!
湊和雄さん「そうなんです、この明るい部分のほとんどはイタジイの新芽や花で、やんばるの森を代表する最も多い樹種ですこちらが近くで見たイタジイの花です、クリーム色で房状の形状をしています」
まるで箒みたいな形状ですね。
湊和雄さん「そっくりですよね、こちらさらに近づいてみるとこのように細長いブラシの塊のような花になっています。本土のスダジイと同じ種類という意見や別亜種という意見があり、専門家の間でも意見が分かれているんです。前者の場合では沖縄から本州に、そして後者の場合は琉球列島に分布します。さてさて、こちらの森の状況は、平年に比べて少し早い印象ですね」
そうですね、新緑もさらに新芽も出ていて平年より早い印象を感じます。
湊和雄さん「さて他にも、今の季節、やはり森の高い部分で明るい色を見せる樹木にクロバイがあります。これもブラシ状の花の集合です。白い花なのに「クロ」と付くのは不思議ですが、樹皮が黒っぽいのでその名がつきました。昨年もそうでしたが、こちらも平年よりやや早い印象です。」
花は白くて可愛らしいのに、名前とのギャップが面白いですね。
湊和雄さん「さて続いては、アオバナハイノキ。黄色や白の花が多い中、こちらの花は青色が遠くからでも目立ちます。ほぼ平年どおりの開花でしょう。」
新緑の中にきれいな青色でひときわ目立ちますね!
湊和雄さん「さて、ここまで早春の植物を紹介しましたが、植物全体ではやや早いものや平年通りの種類が多く、極端に平年より異なる印象は受けません。では、昆虫はどうでしょう?」
湊和雄さん「これは枯葉に擬態するコノハチョウ。ほとんど翅に破れもなく完全な状態ですね。」
近くでみると蝶とわかりますが、葉っぱに紛れるとこれは、見つけられないですね。
湊和雄さん「枝先にとまって翅を開いたり閉じたりする行動も春?秋と同じです。コノハチョウは成虫でも越冬することが知られていますがしかし、その姿を目撃するのはひと冬で数える程度なんです。」
湊和雄さん「さらに、このように枝先にとまって縄張りを守る行動も暑い季節と同じです。この日は25℃を上回る夏日、3時間弱で10匹以上に遭遇しましたがこんなことは40数年間で初めての出来事です。そして別の日にも、やはり10匹以上を目撃しました。」
こんな、奇跡的な出来事が!!すごいですね!
湊和雄さん「とは言え、そのほとんどは翅の敗れた状態でした。冬に羽化したのではなく、成虫のまま冬を越しているんでしょう。」
湊和雄さん「しかし、枝先にじっととまって日光浴しているだけではありません。近くを他の種類のチョウや別の雄のコノハチョウが通ると、突然飛び立ちます。」
これは、なぜなんでしょう?
湊和雄さん「これは縄張りを守る占有行動と呼ばれるものなんです。そして春から秋には、雌が近づくと求愛行動もします。ということで、冬でも繁殖行動に及ぶことがあるのかなと思い観察していましたがこの日は残念ながら見られませんでした。」
残念。。
湊和雄さん「しかし、こんなシーンも見られました。枝先から飛び立とうとして葉に脚が引っ掛かり巧く飛び立てませんでした。やはり冬だからでしょうか?」
湊和雄さん「私のブログは24年前から続けていますが、15年ほど前から「今年は平年と比べておかしい」という記述が徐々に目につくようになってきました。特に10年ほど前からそれが増え、ここ数年は顕著なんです。」
湊和雄さん「気象用語で使われる「平年値」とは、西暦◯◯◯1年から30年後の◯◯◯0年まで30年間の平均値を使います。つまり現在使われている平年値は1991年から2020年までの平均値。つまり平年値は10年毎に変わり、30年ですべて置き換わるということなんです。なので、長期間に及ぶ変化は徐々に均されていくという性質があるんですね」
今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。