新たな局面を迎えた辺野古の新基地建設で国の強行姿勢が如実にあらわれています。大浦湾側で始まった軟弱地盤を固めるための工事はきょうも海に石材を投入する作業が続けられました。キャンプ・シュワブのゲート前で続く抗議活動では計画の中止を訴える怒りの声があがっています。
船越遼太郎記者「クレーンを使って石材が次々と作業船に積み込まれていきます。積み込む際には白い砂煙も立っています」
軟弱地盤を固める工事は辺野古の新基地建設に反対する県に代わって国が設計変更を承認した代執行によって可能になったものです。きょうも大浦湾の北側では2台の重機を使って作業船に積まれた石材が次々と海に投下されていました。
埋め立てに反対する市民たちの抗議活動が続けられているキャンプ・シュワブのゲート前では国が強行的に始めた工事に怒りの声があがっています。
抗議する市民「憲法に基づく地方自治、民主主義も否定して(工事を)やっているという意味では絶対に許されない。怒り心頭ですね」
抗議する市民「沖縄県民の民意を無視して強行することは絶対に許されません」
沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤ―」の具志堅隆松さんは遺骨が混じった土砂が埋め立てに使うことを批判していて計画の撤回を訴えるためきのうからハンガーストライキを行っています。
ガマフヤ―・具志堅隆松さん「御霊石を今度は海に捨てようというのです。それは先に日本政府が遺族に対して行った慰霊行為これを自ら否定するよなものです」
ハンガーストライキ2日目のきょうは具志堅さんの訴えに賛同する人たちによる集会が開かれました。軍事用の基地を造るために沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を使うことは遺族に対する『裏切り行為』だと国を糾弾しました。
ガマフヤー 具志堅隆松さん「戦没者のためにも遺族のためにもこのような防衛省による裏切り行為冒とく行為は許してはいけません」「このよな不条理に対しては私たちが諦めなければいけない理由ってのは何一つないです、私たちが言っていることは間違いではないんです正義なんです」
県の動き 沖防に対して協議に応じる旨を通知
辺野古の新基地建設では、2013年に当時の仲井眞知事が埋め立てを承認した時の留意事項として「県と事前に協議すること」を定めていました。県はこれまで「設計変更」を承認していないことから国との協議には「応じられない」と回答していましたが、国交大臣が代執行で設計変更を無理やり承認したことからきのう、「協議を開始する」という通知を沖縄防衛局に伝えました。
県は今後、質問書を送る予定で協議が整うまで工事をしないよう求めています。事前協議については双方の意見にずれが生じています。国は「協議を行っている」という認識で県は「協議は整っていない」としています。
両者の認識は並行線をたどったまま、工事が強行されている形です。
普天間基地を抱える宜野湾市の松川市長は、「返還の目途がたった」と話しています。
松川正則宜野湾市長『国交大臣の代執行で承認がされたということで、これでの裁判の経緯もしっかり踏まえて今日に至ったと、改めて宜野湾市長としては普天間飛行場の返還の目処がたったということで考えております』
移設先になっている名護市の渡具知市長は「特にコメントはない」と述べました。
渡具知武豊名護市長『工事が進んでいくという状況のなかで久辺3区とする近隣住民の不安払しょく、そして、また、生活環境を守ることが私の責務』『(工事の着手については)一連の手続きのなかで進められてきたものであると思っていまして、特にこれ以上のコメントはございません』
工事を強行する政府側は、これまでと同様に「丁寧な説明をする」としています。
岸田総理「政府として、これまでも地元のみなさまに対しての説明、様々な機会を通じて行ってきました。そして、これからも丁寧な説明を続けていきたいと考えています」
工事の期間が延びれば、それだけ、普天間基地の危険性除去が放置されることにつながるため「本当に期限内に工事が終えられるのか」と問われた岸田総理は「全力で取り組む」とだけ話し、明確に答えることを避けました。
記者「本日を起点に政府が示した9年3カ月の工事がスタートしたことになります。この期間内に工事を終えると沖縄県民に約束いただけますでしょうか」
岸田総理「本日の工事に着手したことについては、先ほど申し上げたように、防衛省において準備が整ったと判断して工事に着手したと承知をしています。そして、ご質問の工事の工程についてですが、工程については防衛省において必要な検討を行ったうえで、その工程を作成したものであります。この工程に従って工事を進めるべく、全力で取り組んでいきたいと考えています」
ここからは町記者です。
Qきのうから、大浦湾側での工事が着手されています。今、どんなことが行われているんでしょうか?
A現在、埋め立て区域の外にあたる大浦湾の北側で、資機材などを置く場所になる「海上ヤード」を設置するため、基礎捨て石と呼ばれる石材を海に投下している状況です。「海上ヤード」には、護岸を造る時に使用する「ケーソン」と呼ばれる主にコンクリート製の大型の箱を仮置きすることになっています。
Q今後どうなる?A海上ヤードを設置する作業と並行して、陸地に近い場所から護岸を造って伸ばす工事と7万1000本にも及ぶ砂の杭を入れて軟弱地盤を固くする工事が並行して行われる見通しです。工事が終わるまでに9年3カ月かかるうえ、アメリカ側に引き渡す提供手続きが完了するまでにはさらに3年を要するため普天間基地の返還は2030年代後半にずれ込むことになりその間、危険性の除去はなされない状態が続きます。
そういった工事に9300億円という莫大な税金が投じられようとしているんです。果たして、今、国が示している工期と工費で収まるのかすでに懸念の声も出ていて「辺野古が唯一の解決策」だとする国には誰もが納得できる丁寧な説明をすべきだと思います。