10月30日の辺野古をめぐる国と県の代執行訴訟を前に全国の憲法学者有志が代執行訴訟を取り下げ、対話による解決を求める緊急声明を発表しました。緊急声明を発表したのは全国の憲法学者66人です。
声明では、県民の民意に反して工事を強行する政権の対応は「民主主義」からも正当化できないことや承認しないとした玉城知事の対応は県民の民意を反映した「住民自治」を実践しており、政権が重く受け止めるべきと指摘しています。
沖縄大学・高良沙哉教授は「沖縄の人間は日本全体としては少数にすぎませんが、少数者の声に耳を傾け憲法に基づく妥当な選択をする責務が国にはあると考えますので、ぜひ沖縄に向き合い対話によって辺野古・普天間問題を早急に解決してほしい」と話しています。
緊急声明は県にも手渡し池田副知事は「訴訟に対応することとなるが引き続き政府に対話を求めたい」と述べました。
キャスター解説 30日に口頭弁論 辺野古代執行訴訟 国と県の争点は?
代執行訴訟は来週30日に始まります。国と県の主張や主な論点を確認していきたいと思います。
裁判の主な論点は2つです。玉城知事が設計変更を承認しないことが「公益」を害するのか、ということと、「代執行以外に解決する方法がないのか」という点です。
1つ目の「公益」について、国は「普天間基地の危険性除去」をあげていて、知事が設計変更を承認しないことは「公益を害することは明らか」と主張しています。また、日米間の信頼関係・同盟関係への悪影響にも言及して、外交上・防衛上の不利益があると強調しました。
県の反論はというと国の主張する「公益」について「抽象的」だと指摘しています。
設計変更を知事が承認しても、完成は2030年代後半以降にずれ込むため普天間基地の固定化がそこまで続くことになる主張しました。
さらに、国が言う「外交・防衛上の問題」が具体的に何なのか訴状で示されていないことを批判していて、「安全保障とさえいえば司法審査はすべて不要と言わんばかりの姿勢」と強く反発しています。これまでの県民投票や県知事選挙で示された「反対」の民意を「公益」として考慮されるべきと訴えています。
二つ目の「代執行以外の解決法はないのか」という点を見ていきます。国は承認を求めた是正指示の適法性が確定した後も知事が設計変更を承認しない姿勢を「違法かつ異常な事務遂行」と訴えていて、代執行以外の方法では「是正を図ることは困難」だという立場です。
県は代執行以外の解決法として「対話による解決」をあげています。県は2019年以降、政府に辺野古新基地建設問題の対話による解決や話し合いの場の設定などを何度も求めたことを強調していました。
こちらに一覧を出しました。4年半の間に18回も国は県の要請を無視していたんです。こうした背景を理由に国が対話の求めに一切応じないことは、「代執行の要件を欠く」と訴えています。
県は代執行を認めて大浦湾側の工事を強行することを「新基地建設以外の普天間基地の危険性除去の方策を柔軟・合理的に検討する機会を失わせる」とも指摘しています。
辺野古新基地建設の計画が示されてから普天間基地の返還は30年以上先送りされ続けています。軟弱地盤や活断層の問題などを抱え、完成が疑問視される辺野古を「唯一の解決策」として、県の権限を奪ってまで建設を進めることが本当に正当なことなのか。裁判で問われるべきは、その点ではないでしょうか。司法の判断が注目されます。