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沖縄の未来を見ていく「IMAGINEおきなわ」。今回は1冊の本を紹介します。本の物見せ今月発行された「ザンジバル球児に学ぶ世界を変える方法」。青年海外協力隊としてザンジバルを訪れた沖縄の高校教師が書いた本です。

ザンジバルとはどこかと言いますと、アフリカ大陸の東、タンザニア連合共和国に属している島で沖縄より少し面積が大きく、人口もやや多い、沖縄に似た地域ではあるんですが、ただこの場所には以前、野球文化が全くありませんでした。

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

この本には「ベースボール」という単語すら知らなかったザンジバルの少年少女らに野球を教えたことで見えてきた、大切なことが詰まっています。

第3回タンザニア甲子園の映像

こちらの映像は、2015年に日本から約1万キロ離れたアフリカの国タンザニアで行われた野球大会の様子です。少しずつアフリカでも野球が普及し始めた中で行われたこの大会で攻守に渡り好プレーを見せたのがザンジバルの選手たちでした。

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

彼らに野球を教えたのは現在は普天間高校野球部で監督を務めている上原拓さん。青年海外協力隊として現地に赴き、2年足らずで大会にも出場。勝利をあげることもできました。しかし、その始まりは…

町中を歩きまわっても、これでもかというほど、野球に関するモノはどこにも見当たりません。「ザンジバルは野球皆無の島です」。野球をするには決して恵まれているとは言えない環境。ただ、だからこそ、沖縄では見えない景色がそこにはありました。

上原さんはザンジバル「初の球児」たちから学んだことを1冊の本に込めました。

上原拓さん「みんなおはよう。今日はカメラマンが撮影しているけど、カメラに向かってピースとかするんじゃないぞ。」

2014年から2年間、上原さんは青年海外協力隊としてザンジバルの国立大学で教師の仕事をする一方、現地の子どもたちに野球を教えていました。

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

上原拓さん「野球に関しては環境というのはほぼゼロだったので広場があって僕らが野球場に見立てたものをつくったという感じでそれ以外は全くなかったですね」

ザンジバルではサッカーなどは人気がある一方で、野球に関しては「ベースボール」という単語さえ伝わらない状況でした。全くの「ゼロ」から始まった野球の普及活動でしたが初めて野球に触れるザンジバルの子どもたちの姿はとても強く印象に残ったといいます。

一球一球に一喜一憂する彼らの笑顔を私は生涯忘れることはありません。

上原拓さん「ストライクだから打つ、ボールだから打たないとかそういう発想は全くなくて来たボールを思い切り打つ、それがバットに当たった時にとっても喜んで「当たった当たった」って飛んで行ったボールを捕ったら「捕れた」って喜んでいる姿を見て野球の始まり方、原点はそこだったんじゃないかと思いました」

そしてまた、バットやボールといった道具も十分ではありませんでしたがそれもマイナスなことばかりではないことに気づかされます。

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

上原拓さん「(当初)バットが2本しかなくて、その中でスレッシュという子が置いてあるボールを目を離さずに思い切り空振りしたんですけど、僕らにとっては1人何回かしか振れないうちの1回であって空振りは良い素振りだと、だから思い切り振れと話をした」

物事を前向きに捉える大切さ、そして日本の子どもたちが置かれている環境がいかに恵まれていることを改めて感じた上原さんは沖縄に戻ってからの指導にも変化があったと話します。

上原拓さん「自分が生徒に話をしたりする内容というのはチームが勝つためにこういう練習をしよう、こういう活動をしていこう、に加えて今ある状況というのは普通ではない、当たり前ではないんだよと伝えることが多くなっているなと感じます」

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

上原さんがザンジバルでの経験を沖縄で伝えていく一方でザンジバルでは上原さんが帰国した以降も野球の芽はしっかりと育ち続け、初めて野球をプレーした時から約8年の時を経て去年11月には沖縄での合同練習や交流試合が実現するまでになりました。

ザンジバルの球児が野球を楽しそうにプレーする姿は沖縄球児にも大きな刺激になりました。

普天間高校野球部2年 国仲陽志主将「自分たちよりも恵まれない環境で、それでも野球に熱心に取り組んでいる人たちがいるなかで、自分たちは整った環境でできているわけなので、野球は楽しいという姿勢を見せないと彼らにも失礼だと思うので自分たちが誰よりも野球を楽しんで、ザンジバルに伝わるくらい自分たちが上にいけたらいいかなと思います」

そしてまた、自分たちだけでも前へと進んでいるザンジバル球児たちの姿を見て上原さんは大切なことを学んだと話します。

上原拓さん「この野球チームはどこに向かって進んでいるんだろうと世界最高峰のレベルを見てメジャーリーガーに向かって夢を持って進むのであれば野球のレベル的に言えば最後尾をすごい遅いスピードで追いかけていっているんだろうなと、ただ彼らが野球がまだ普及していないアフリカ大陸の方を向いた時にはその普及の現場の最前線を全力疾走で走っているようにも見えて、その時に自分がどこを向くかどう見るかによって見えているものが全く変わってくるんだなと、彼らから一番学んだ」

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

「世界は見方によって変わる」本のタイトルにもつけるほど、ザンジバルの球児たちから得た大きな学びでした。

ザンジバルでの経験は上原さんの教師・監督としての礎にもなっています。

上原拓さん「練習・活動をしっかりしながらそれを軸にザンジバルの子たちが道具がないとか、何か困った時にうちの部員たちも一緒に支援をしてあげられる体制ができたとしたら、僕と関わる沖縄の野球部員たちの目も世界に向く、自分の人生について広い視野で考えるきっかけになるかもしれないこれをコツコツと地道に続けていけばいつか広い視野を持って世の中のために貢献できる人間が育ってくれるだろうとそれが僕が立てた志です」

#IMAGINEおきなわvol.39「ザンジバル球児に学ぶ 世界を変える方法」

上原さんはザンジバルで得た「志」を胸にザンジバルと沖縄とを野球でつなぎながら世界を見つめる球児たちを育てていきます。

上原さんは、一教師である自分がザンジバルでゼロから野球を誕生させた経験をこの本に記していまして読んだ人が、「自分にも何かができるんじゃないか」と思えるきっかけになればと話していました。

なお、上原さんは「本の売り上げが入った場合ザンジバルの野球支援に使いたい」と話していました。