今を生きる私たちが沖縄の未来を考える「IMAGINEおきなわ」です。寺崎キャスターです。きょうは路線バスの話題です。今月20日で日本の路線バスは120周年を迎えました。沖縄でも1917年に始まった路線バス事業、ことしで107年目になります。
しかし、その利用者は減少傾向にあり、昭和60年(1985)年からコロナ禍前までの35年間で利用者数は3分の1、新型コロナの影響でさらに減っています。
使いやすい路線バスにするための「基幹バス構想」はご存じでしょうか。「基幹バスシステム」は、幹線道路を通り、利用者の需要の高い区間を「基幹区間」と位置づけ、路線バス網の骨格として中心に据える交通システムです。
現在、那覇市から国道58号を経由し浦添市、宜野湾市、北中城村から沖縄市コザまでの区間で検討されています。宇地泊、伊佐、普天間、コザをターミナルとして支線バスを構築します。
基幹バスシステムが導入されると、最大17ある路線が「基幹区間」となることで行先表記の統一や等間隔での運行などより分かりやすさが増す期待が高まります。
車社会と言われる沖縄ですが、その中で、より分かりやすく利用しやすい公共交通機関にするための取り組みそして、公共交通を積極的に利用する企業の取り組みが進んでいます。
今月12日、県立博物館で行われたのは、公共交通推進協議会。本島内の主要バス会社4社や地方自治体、沖縄観光コンベンションビューローなど23人が集まり、「基幹バスシステム」についての議論が行われました。路線バスの利用者回復の一歩となることが期待されています。
琉球バス交通 那覇バス 小川吾吉代表「各委員の方に応援していただいているということを改めて実感した。我々バス会社ももっと頑張らないとという感じ」
しかし、4社が競合する中で、それぞれが運行するドル箱路線を簡単に統一することで収益が上がる事業者と減る事業者が出ることへの懸念など、課題が多くまだまだ議論の途上です。
バス会社からは、こうした本音も聞こえてきます。
東陽バス 新入勝行社長「人材不足、色々進めてくれるのはありがたいけど公共交通にたくさんお客さんを乗せる取り組みは助かるけど、外部から見るとなんでできないのというジレンマはあると思うけど、やはり安全を提供するバス会社としてはよく考えていかないといけない」
分かりやすさを高める取り組みを進める一方で、「時刻表通りに来ない」という路線バスへの不信感を払しょくするためには渋滞の解消が急務であるため、特に朝や夕方のラッシュ時にはマイカーでの通勤や送迎からバスなどの公共交通機関に転換してほしいと呼びかけています。
県企画部交通政策課 大城博人陸上交通班長「環境問題・SDGsも含めて今公共交通に転換する良い時期だと思っている。この協議会で出てきた議論を持ち帰って市町村と一緒にバス事業者も一緒に1人でも多くの県民にバスに乗っていただければと思っている」
年に2回開かれている推進協議会。次回来年春に開催される予定です。
バス会社ももっと便利な乗り物にしたいという思いがあるけど、なかなかすんなりは行かない事情もあるんですね。特に1番の課題となっているのが定時性の低さです。どうやったら時刻表通りに来るようになるのか。バス会社の努力はもちろんのこと、それと同時に、県民も車を使わない努力が必要なのかもしれません。
県は、路線バスの利用者を増やそうという「わった~バス党」という活動を行っていますが、顕著な功績を残した企業に贈られるサンクスアワードに選出された企業を取材しました。
こうした中、公共交通を使っての通勤を社員に推奨している企業が那覇市にあります。那覇バスターミナルの上にオフィスを置くインターネット広告などを扱うSEEC(シーク)です。所属する社員およそ143人のうち、なんとおよそ9割にあたる130人が公共交通機関もしくは徒歩で通勤しています。
社員「バスで来ています」社員「モノレールで来ています」社員「めっちゃ便利です。バスは」
なぜそれが実現できるのでしょうか。
SEEC沖縄営業所 小野里大作所長「採用する時に必ず公共交通機関を利用することが前提で採用していて、実際にこの辺りの土地では駐車場が確保できないのでお願いして採用させてもらっている」
社員にはオフィスの近くに住む「職住近接」を推奨していて、会社から3キロ以内に住む社員には住宅手当として上限月2万円を支給しています。また、実家暮らしなど遠くに住んでいる社員でも公共交通機関を使って通勤する人には、上限月4万円の交通手当があります。
観光に特化したポータルサイトを運営する会社としての思いがあるSEECでは、SDGsの13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」の観点、職員の健康管理の観点から、通勤ではできるだけマイカーを減らし、歩くよう推進しています。
SEEC沖縄営業所 小野里大作所長「沖縄の観光を売りにして仕事をしている人と付き合いがあるので、そういった人に話を聞くと「海が浜が汚くなっているので沖縄から発信できないか」というところで」
実家のあるうるま市から会社に路線バスで通っているという社員がいました。
「こんにちはー」システムエンジニアとしてサイトやアプリの開発に携わる入社2年目の伊覇海都さん。およそ25km離れた会社に午前9時に出勤するべく朝6時半過ぎ、具志川バスターミナルに到着しました。
伊覇海都さん「最初の頃はバスに乗り遅れそうとか、ちゃんと来るかなとか不安だったけどもう慣れた」
午前6時46分、琉球バス交通23番、朝夕のラッシュ時に運転されている急行バスに乗り込みます。早速かばんから取り出したのは、旅行業関連の参考書。来月末に資格試験が控えていて、毎朝バスの中で20~30分読んでいるということです。
伊覇海都さん「自分もITで働いているけど難しくて「これどういう意味だろう」というものがあるのであまり進まない。何回も見返したりしている」
うるま市から沖縄市に入り、コザに到着したところで、(7時11分)勉強が終わり、音楽タイム。続いて、YouTube鑑賞。海外サッカーの動画を見て楽しんでいました。コザミュージックタウンにほど近い、胡屋を過ぎると道路が渋滞しバスはゆっくり進みますが。
伊覇海都さん「自分で運転しているより全然いらいらはしない。バス乗っている時はちょっと遅れてもいいやと思うぐらい気長にゆっくり待てる。」
イオンモールライカムの最寄り、「比嘉西原(ひがいりばる)」では、新興住宅地の発達からか、多くの通勤通学客が乗り、バスは混雑してきます。(7時27分)バスの心地よい揺れにうとうとしてくると、伊覇さんは夢の中へ。
那覇に近づくにつれてお客さんが増える中、国道58号に入ると、バスレーンを通って宜野湾市、浦添市、那覇市へと進んでいきます。2時間弱のリラックス時間を過ごした伊覇さんとバスは午前8時36分、那覇バスターミナルに到着しました。
伊覇海都さん「ちょっとバスで寝られたので結構フレッシュな気持ち」
移動に疲労を伴わず、リラックスした気持ちで那覇バスターミナルの上にある本社に着き、伊覇さんのきょうのお仕事が始まりました。より利用しやすい路線バスに向けた取り組みと公共交通の積極的な利用で、県民の生活向上へ。好循環を作る動きが広がっています。
ご紹介したようにバスに乗ることのメリットもありますし、道路の渋滞も解消されるので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。