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首里城の再建を追いかける復興のキセキです。今回は「イヌマキ」という木にスポットをあてます。沖縄では、チャーギやチャンギと呼んだりします。漢字にしてみると、「真」実の「木」で「偽りのない木」とも言われています。神木として旧暦の1日、15日にヒヌカンに葉のついた枝を供えるという風習は、こうしたところにゆかりがあるとされています。

古くから建築材として重宝されたイヌマキは、首里城にとって欠かせない木材の一つなのに再建に使えるほど大きく育ったものが「県内にはない」という課題があるんです。いつか県産のイヌマキを首里城に使おうと未来を見据えた活動が着々と進んでいます。

首里城公園友の会・高良倉吉会長「将来を見つめながら、自分たちが今立っている時代に何をすべきなのかという自覚が多分必要だと思うんですけどね」「常日頃から沖縄で、将来の沖縄のために沖縄が今何をするべきなのかといったことをあらゆる分野で考えるその一つがイヌマキの問題だと思いますね」

令和の正殿総棟梁宮大工山本信幸さん「非常に木目がきれいですよね(山本棟梁木をなでる)」

首里城2026 復興のキセキ 県産イヌマキを首里城に

一本の木が大きな音を立て機械で削られています。イヌマキです。今月21日に木の香り立ち込める木材倉庫内で加工が始まりました。

令和の正殿総棟梁宮大工山本信幸さん「首里城の顔ですからねより象徴的な場所だと思いますから。使うのであれば向拝(ごはい)でしょうね。」

令和の復元では、ウナーから首里城を見上げたときに、正面に並んで見える4本の向拝柱(こうはいばしら)に用いられます。いずれも樹齢100年を超えるのもが使われ、最も古い木だと、樹齢・164年にもなるといいます。

イヌマキは沖縄に自生していて、病気や害虫に強いことから、高温多湿な気候で虫がわきやすい環境の沖縄で建築材として古くから重宝されました。それだけではありません。枝部分はヒヌカンの供えものして使われるなど、県民の日常生活でも見ることができます。令和の復元では正殿に使えるほどの大木が県内になかったため、長崎県から調達しました。

首里城2026 復興のキセキ 県産イヌマキを首里城に

令和の正殿総棟梁宮大工山本信幸さん「希少な木材ですから、そんなにたくさんないんですよね。」「山に入っていろいろ探してとか、それを調達して、ここに入るまでに乾燥・養生したり、そういう手当を当てながら、いろんな人が苦労してここに入ってきた材料ですから大事に使いたい。」

実は、1992年のいわゆる「平成の首里城」にも県産イヌマキが使われることはありませんでした。琉球王国時代、将来的な建物の修理や建て替えなどを見据えて「林業」は、国家の一大プロジェクトとして取り組まれていました。

しかし、琉球処分後、体制は崩れ、木を切っても植えない、手入れをしない、そして残された木も沖縄戦で焼き尽くされてしまったといいます。そうした歴史的な背景もあったというのです。

平成・令和と2度の再建に携わってきた高良倉吉(たから・くらよし)さんは当時感じた、歯がゆさを今も覚えています。

首里城公園友の会・高良倉吉会長「(1992年の)平成の復元をした時に一番驚いたというかがっかりしたというか、衝撃を受けたのが沖縄県で育てたイヌマキ方言でチャーギといいますが使えるものが一本もなかったとあの時のくやしさですよね」「将来、修理が必要になってくるから修理の時には沖縄で育ったイヌマキを使いたい。僕らの世代ではなくてその次の次の世代の時だと思うが、そのために今ぼくたちがイヌマキを植えようと」

いつか訪れる「首里城の修復」に備えようと、平成の首里城(正殿)完成後の1993年、やんばるの森でイヌマキを育てる活動が始まりました。

首里城2026 復興のキセキ 県産イヌマキを首里城に

参加者「これってどれくらいの木なんですかね」高良先生「30年」参加者「30年でこんな毛しか伸びない?」高良先生「そんなもんです、成長が誠に遅い木なんです」

以後、30年にわたり、夏と冬の年2回、木を植え、草を刈り、肥料をまき、「未来の首里城」のため、多くのボランティアが作業に汗を流します。

女の子2人「はいっあっミミズ」浦添市・親子で参加(お父さん3回目の参加)「首里城の火災の件もあったからこうやって少しでも力になれたらと思って参加した」南風原町・初参加女性「木を植える次に備えるというのは素晴らしいことだと思って」

これまでに植えたイヌマキの本数は1万本以上、そのうちの1200本ほどが根を張り、成長しています。ことし1月に植えたイヌマキは、枯れてしまったものもあれば、25cm以上伸びた苗木もあります。

一般的な民家用だと50年ほど経てば使えるといいますが、首里城のような大きな建物に使用するためには少なくとも100年、200年の年月がかかる見込みです。現在、最も大きなイヌマキは高さ7~8mほど、直径15~20cmとまだまだ細く、建築材として使えるようになるまでに長い時間が必要です。

首里城2026 復興のキセキ 県産イヌマキを首里城に

首里城公園友の会・高良倉吉会長「癖のないすくっと柱になるような木に育ってほしい梁に育ってほしい」「僕たち、やがてこの世から去っていく世代が懸命に先人たちの気持ちを受け継いで自分たちがまず一生懸命やろう汗をかこうそしてそれを見て次の世代がそういう気持ちをバトンタッチしてもらえたら」

100年、200年先の沖縄でも、首里城が島のシンボルとして存在し続けるためにやんばるで育まれるイヌマキは未来へと向かって伸び続けます。

お伝えしていますように「令和の復元」、着々と進んでいます。今回の復元のテーマは「見せる復興」ですよね!そのため、復元の現場にはこのように来場者が見学するできるエリアが設けられていて、職人の技を間近で見て、首里城の再建を身近に感じられるようになっているんです。

さらに加工の様子だけでなく、先週土曜日には、実際に正殿が組み立てられていく過程を見学できるデッキもオープンしました。ますます再建の現場から目を離せませんが、そんな正殿再建の様子をすぐ目の前で見られる特別なイベントが来月9日~10日の2日間行われます。

普段は現場関係者しか立ち入ることのできない復元途中の工事エリアが公開されるのはなかなかない機会です。ぜひ訪れてみてください。

首里城2026 復興のキセキ 県産イヌマキを首里城に