続いては、今を生きる私たちが、沖縄の未来を見ていくシリーズ「IMAGINEおきなわ」です。
中村アナウンサー「さて、旧盆も間近に迫ってきたということで県内各地では、旧盆に向けて太鼓や三線の音が聞こえてきているんじゃないでしょうか。沖縄のこの時期といえば、やっぱりエイサーですよね。沖縄市出身の玉城さん、エイサーを見ると胸が踊りますよね。」
中村アナウンサー「きょうの「IMAGINEおきなわ」はそのエイサーがテーマです。長く続いてきた伝統をつないでいくために大きな決断をした青年会がありました。」
沖縄の夏の風物詩、エイサー。全島エイサーまつりなどの大きなイベントも開催され県内のみならず、県外そして海外からも人気の伝統芸能です。
旧盆の時期には、各地域で受け継がれてきたエイサーを青年会などが踊りながら地域を練り歩きます。今年、伝統を継承するために大きな決断をした青年会がありました。
平敷屋青年会・前代賢太会長「葛藤はあります。やはり東西で歴史が長いので自分たちの代で合併するというのは心苦しいですけど」
「伝統継承のための決断」
静寂の中に響く、太鼓の音、勇壮な掛け声。うるま市の平敷屋青年会です。200年以上の歴史があるとされ、エイサーの原型ともいわれている「平敷屋エイサー」を継承している平敷屋青年会。
太鼓はパーランクーのみで構成され、東(あがり)と西(いり)の二組にわかれているのが特徴です。東のエイサーは力強いのが特徴で、男性的な踊りと言われています。)これに対して西のエイサーはしなやかで女性的な踊りと言われています。
一目見ただけでは、違いに気づきにくいかもしれません。ただ、踊っているメンバーにとって東西の踊りは「天と地ほどの差がある」といいます。実は腰の落とし方や太鼓の返し方など細かい部分まで意識されているんです。
青年会はエイサーだけでなく、豊年祭や区内の清掃活動など地域の活動にも積極的に取り組んでいます。そんな平敷屋青年会が、いま大きな課題に直面していました。
平敷屋青年会・前代賢太会長「人口自体も減ってきてはいるんですけど、県外に出て就職したりだとか、16歳から25歳の人生の大事な時期なので、仕事や勉強、学校とかを優先する子が増えて(青年会の)人数が少なくなった」
25歳までの地元の若者のみで構成されていますが、年々人数が減少しています。前代会長が平敷屋青年会に入ったおよそ10年前は東西それぞれ60人の120人ほどいました。現在は東西あわせても50人にも満たないほどの人数になってしまっているんです。
この状況を受け、青年会は大きな決断をしました。
平敷屋青年会・前代賢太会長「今までは東(あがり)と西(いり)で分かれていたが、今年は人数が少なくなったという理由があって東西合併して1つの団体で踊るということになった」
これまでは練習も別で行い、踊りの特徴も異なる東と西を今年は合併して踊ることにしたのです。
平敷屋青年会・前代賢太会長「葛藤はあります。やはり東西で歴史が長いので自分たちの代で合併するというのは心苦しいですけど」
合併に複雑な思いを抱えているのは前代会長だけではありません。
平敷屋青年会・新城勝太副会長「率直に言ったら嫌ですね。嫌。」「(東西の)踊りが混ざる。自分たちが習ってきたものと全然違うというのがあって、嫌でした。」
平敷屋青年会・東門一樹副会長「自分も嫌、本当は。」「合併しないと残していけないぐらいの人数しかいないので、やるしかなくなったんだよな」
葛藤を抱えながらも合併を受け入れた背景には地域の伝統をつなげたいという思いがありました。
新城副会長「今のタイミングでやらないと後輩が引き継げない、どっちかがつぶれるか下手したら両方なくなる」東門副会長「それは避けたかった。」新城副会長「どんな形でも残そうという話で合併というところになった」
東西4曲ずつをそれぞれの型で踊ることになった今年。もともと西で踊っていた前代会長も青年会最後の年に、東の踊りも覚えることとなりました。
平敷屋青年会・前代賢太会長「難しいですね。4月から練習してきてはいるんですけど、まだ全然できていないところも多くて」「自分は(最年長の)25歳なので本当は下に教えないといけないが、東の後輩から習ったりしています」
長く受け継がれてきた伝統をどんな形でもつなぎたい。人が増えるか見通せないという困難に直面しながら今年は合併の決断をした平敷屋青年会。地元が誇る伝統の灯を絶やさず、次の世代にバトンを託すべく地域の伝統に向き合い続けています。
平敷屋青年会・前代賢太会長「どれだけ質が高くても人数が10人とか8人になってしまったら、かっこいい演舞はできないと思うので、一番は人数も増やして繋いでいく、次の世代に繋いでいくのが大事だと思う」「青年会ってこういう活動をしていて、こういう理由でエイサーやっているんだよと伝えていって、次世代を担うメンバーが今のうちからエイサーに興味を持ってくれたら人数も増えていくと思うので頑張っていきたい」