あさってから始まるバスケW杯を盛り上げようと高校生や大学生らが一大プロジェクトに取り組みました。手作りで復元した100年前のバスケットリングやボール、展示したのは、何と首里城です。そこには歴史的な理由がありました。
高校生や大学生、大人たちが集まり力を合わせて運んでいるのは、手作りのバスケットゴール。 向かう先は…首里城でした。
金谷康平さん「本日が5月17日ということでFIBAバスケットボールW杯のちょうど100日前」
バスケW杯の開幕まで100日となった今年5月首里当蔵町(とうのくら)で行われたイベント。 沖縄のバスケットボール情報誌「OUTNUMBER」を手がける金谷康平さんらがW杯へ向けて機運を高めようと企画してきたもので一般の人たちや首里高生らを対象に沖縄におけるバスケットボールの歴史が紹介されました。
金谷康平さん「100年ほど前にバスケットボールが沖縄に伝わってきて最初に行われていたのが首里城首里周辺ということが最近わかってきたんですね」
こちらは昭和初期に撮られた写真。当時、首里城南殿を校舎としていた首里市立女子工芸学校の写真ですが後ろにははっきりとバスケットゴールがあるのがわかります。別の写真でも、生徒なのか子どもたちと思われる人たちの前にはバスケットゴールが。首里城のうなーで、バスケットボールが行われていたのです。
首里城にリングが映っている写真の存在を知った金谷さんが県立芸術大学の張本文昭教授に相談して調べたところさらに色々なことがわかってきました。張本教授の調べによると、競技としてのバスケは1920年代に入り、東京高等師範学校体操科(現在の筑波大学体育専門学群)に通っていた玉城亀壽(きじゅう)によって沖縄に伝えられた可能性が高く23年に、玉城が沖縄で体育の講習会を開催したと記す文献もありこの時にバスケが伝えられたのではないかと推測しています。
張本文昭教授「1923年に導入していたとすればここははっきりはわからない でもそう思いたい ちょうど100年前だから」
沖縄でW杯が開催されるちょうど100年前にバスケットボールが沖縄に伝えられ、さらに、あの首里城で行われていたという歴史が見えてきました。
首里高校3年 當間結唯さん「この首里という所に憧れて入学した首里高 その近くの首里城で100年前にバスケが行われたのは本当に素晴らしいことだなと思って」
首里高校3年 田中煌洋さん「新たな首里の文化をみんなに広めていきたいと思いました」
この場所から、W杯に向けて様々な取り組みが動き出します。
バスケW杯を首里の町から盛り上げるために首里高生が中心となって始めたのは約100年前のバスケットゴールの復元です。
首里高校3年 知花史騎(ひとき)さん「毎日のように首里高校に通っている身からすると魅力的だしここに関わらないというのは絶対後悔するなと受験生ですけど参加しました」
張本教授のもと、過去の資料などから当時のゴールについて調べた高校生たちは現在とは異なる木製の支柱を木材を削る作業や組み立てから挑戦しこの日は塗装に取り掛かっていました。
首里高校3年 知花史騎(ひとき)さん「昔のボードの作り方、リングの作り方の文献の中に色はこういう色ですと指定されているのがあったのでそれに近い色になっているのかなという感じです」
一方、夜の時間帯に作業をしていたのは県立芸術大学工芸専攻の生徒たち。作っているのは、こちらは100年前のバスケットボールです。
辺土名奏位さん(大学2年)「当時のボールは形で大きく違うところが空気入れるところがラグビーボールの特徴的な縫い目横に何本かあって縦に1本 あぁいうのがバスケットボールにもついていて、今は多分人工革を使っているものが多いですけど当時は牛革で作っていて 今回も素材からこだわって牛革で厚さも3ミリで縫う糸も麻で作られている糸を使用して」
又吉美紀さん(大学2年)「興味が自分も制作をしていて出てきたのでこれから勉強していきますバスケは笑」
張本文昭教授「みんな工芸の専攻で手は普段から細かく動かしているので良いボールができるはずです(だそうです、みなさん)まかちょーけー!」
ただし、過去の文献を探りながらの制作は一筋縄ではいきません。
辺土名奏位さん(大学2年)「昔のボールの大きさ、円周が90‐96㎝だったというわけさ昔のボールはめちゃくちゃでかかったんじゃないかな」
調べを進めるうちに、当時のボールは、現在一般的に使われている7号球よりもさらに周囲が20㎝ほど長く、大きいことがわかりました。当時のサイズに近い練習用の大きなボールを使いながら再度革を切るところから仕切り直しです。
〜約20日後〜
辺土名奏位さん(大学2年)「完成です」
一時は大きさから作り直したボールでしたがしっかり形となって、現代に復元されました。そして、バスケットゴールの復元もきのう、大詰めを迎えていました。出来上がったボードに、今よりも大きいリングを設置。最後にボードと支柱を取り付け、完成です。
首里高校3年 知花史騎(ひとき)さん「意外とこんなにきれいにできて今まで作業してきてうれしい限りです」
ただ、ここからもうひと踏ん張り。自分たちの手で首里城公園の展示場所まで運びます。首里杜館前に立ち上がったバスケットゴール。そしてボール。100年の時を経て、首里城に再現されました。
首里高校3年 知花史騎(ひとき)さん「立った時の達成感というか感動は一生忘れないのかなと思います」
辺土名奏位さん「競技をするだけではなくてあらゆる面でスポーツって色々な人を繋げてくれるものだなと感じました」
バスケットゴールとボールは27日までこの場所に設置され、その後県立芸大でも展示されます。
首里高校3年 田中煌洋さん「首里の熱でW杯 盛り上げましょう!」