※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

台湾有事に伴う先島地域からの避難や北朝鮮の弾道ミサイルに関連して、県民の関心を集めている国民保護。普天間基地がある宜野湾市の計画には、基地から飛行する航空機墜落時の対応も盛り込まれていました。

本来、日本への武力攻撃やテロ攻撃などへの対応を定める国民保護に、アメリカ軍基地での事故を位置づけることは何を意味するのか。市や識者に見解を聞きました。

『大謝名小学校区内に航空機が墜落。対応に時間がなく、被害拡大の可能性もあることから、現場周辺に近づかないことを周知し、関係機関と協力して安全を確認』

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

これは、宜野湾市の資料にある文言です。有事に自治体が住民避難を行う「国民保護法」に基づき、市が定めた避難計画のひな型の中に、普天間基地を飛び立った航空機が、市内に墜落するシナリオが盛り込まれています。

弾道ミサイルの飛来を想定した避難訓練や台湾有事を念頭にした先島地域からの住民避難。国民保護法は本来、こうした有事の避難に適用されるものです。宜野湾市はQAB取材に、避難パターン策定の中で沖国大のヘリ墜落事故を踏まえたことを説明しました。市は「事故発生時の流れの骨子となる案を先に作るという形で策定した」としています。

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

識者は宜野湾市の避難想定をどのように見るのでしょうか。危機管理が専門で国士舘大学の中林啓修准教授は、国が認定を行う国民保護に位置づけることに「違和感がある」といいます。

国士舘大学・中林啓修准教授「国民保護法かどうかということ以前に『消防的』というべきかもしれませんけれども、最初の段階では(他国の攻撃など)仮にこれが国民保護に何か要件に該当するものであったとしても、大規模事故として対応するのが基本」

宜野湾市の想定では、航空機事故の住民避難について「弾道ミサイル同様の対処」と位置付けられています。政治学を研究してきた沖縄国際大学の佐藤学教授は普天間基地が宜野湾市にあり続ける不条理を指摘します。

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

沖縄国際大学・佐藤学教授「本当に台湾有事で、戦争状態になったときには実際になることは望まないが、中国のミサイルは(普天間基地に)飛んでくる。平時も航空機墜落という危険があってミサイル攻撃同様の対処をしないといけない。実際にミサイルも飛んでくるかもしれない。普天間の航空機墜落を想定し、国民保護計画の中にあることを額面通りに受け止めれば、普天間基地の存在自体が危機事態、戦争と同じような状態だという認識を持つべき」

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

国民保護法に基づく住民避難の訓練などでは、県民の反発もたびたび起きています。中林准教授はアメリカ軍の事故への対応について、基地問題としての側面と事故対応としての危機管理の側面の両方を考えることの重要性を語ります。

中林准教授「航空機事故に備えることと、米軍機の飛行を無条件に容認することは全く意味が違う。航空機(事故)の避難訓練があったとして、参加したから普天間(基地)の航空機・利用に関する反対運動をしてはいけない・できないと考える必要は全くない。国民保護の訓練も航空機事故の対応もしっかり考えてほしい。けれど、それが他を制約することは絶対ないということも一緒に考えてほしい」

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

佐藤教授は市の計画をもとに、宜野湾市民が置かれている状況を考えることが必要だといいます。

佐藤教授「市として、行政として(国民保護を)やらなきゃいけないことというのはよくわかる。それを私たち住民・市民がどのように受け取るかは別の話。何を考え、どう判断するかが問われる。備えでそうした事態が起きた時に備えになるのかということこれ(避難計画)があるから安心とはとてもならない。仲井真元知事が要求した5年以内の運用停止。そこに立ち戻ってとにかくまず(普天間基地を)閉じろという話だと思う」

本来、他国からの攻撃に備える国民保護で、同盟国として駐留するアメリカ軍の事故に備えることは、普天間基地の危険性にさらされる宜野湾市の現状を示しています。県民が日々暮らす中で、差し迫った危険とは何を指すのか。沖縄国際大学のヘリ墜落事故の節目に、改めて考える必要があります。

沖縄国際大ヘリ事故から19年 「国民保護」に米軍機墜落のシナリオ

アメリカ軍ヘリの墜落事故が起きた沖縄国際大学では事故から19年が経つ13日日曜日、集会が開かれる予定です。大学に通っている学生の中にも、事故後に生まれた人もおり、かなりの期間が経過したことになります。

普天間基地を撤去するという方向性は、宜野湾も県も国も立場は同じですが、その手法となる辺野古新基地建設を巡って、進める国と反対する県で立場は分かれています。辺野古新基地は軟弱地盤の存在などで、完成の見通しが立たないということがたびたび指摘されていますが、その間も普天間基地の危険性に宜野湾市民はさらされ続けるということを共通認識としなければいけません。