沖縄市コザを舞台に若年母子や貧困の問題を鋭く、リアルに描いた映画「遠いところ」。主演と監督の2人に映画に込めた思いを取材しました。そこには、今なお解決されない現実の問題と向き合う決意がありました。
アオイ役・花瀬琴音さん「ここ、ゲート通りで、海外の方多いんですけど、また向こうになると日本人たくさんいるんで、なんかその境って感じがすごい思い出しました」
工藤将亮監督「この町を巡り歩きながら、もうここがいいなと。すごく自分の映画がしたい場所、街だなと思って」
映画「遠いところ」は、沖縄市コザの町を舞台に、17歳の少女アオイが夫と、幼い息子の3人で暮らす中、自分ではどうすることも出来ない負の連鎖に巻き込まれながらも、必死に生きる日々を描いた物語です。
主人公・アオイ役には、今作が映画初主演となる東京都出身の花瀬琴音さんが抜擢されました。メガホンを取ったのは、京都府出身の工藤将亮監督です。
沖縄の貧困問題などを浮き彫りにした本と出会ったことで、今回の映画を制作しようと決意して、県内各地で取材を重ねた工藤監督は、物語の舞台となった沖縄市のとあるホテルに滞在した時に筆が走りはじめたと言います。
工藤将亮監督「沖縄の歴史を聞きながら巡る旅をしてました。映画の舞台はここしかないなっていう感じで、もう途中でもういつのまにかコザで、ここ本当にこの沖縄シティホテルの屋上でいつの間にか僕は脚本書いていた」
一方、アオイを演じる花瀬さんは役作りのために、撮影が始まる1カ月前から実際にコザに住み、花瀬琴音ではなく、物語の主人公「アオイ」として生活をしていたというのです。
アオイ役・花瀬琴音さん「(コザに人から)「内地の人でしょ」とか、「色白いから内地の人だね」とか言われてました。だけどそれが撮影期間に近づくにつれて、役作り期間が終わっていくにつれて、どんどん「いや、そこの中の町に住んでるんです」って言っても何も言われなくなった」
映画の印象的なラストシーンについて、2人は感じていたことがありました。
アオイ役・花瀬琴音さん「(ラストシーンは)工藤さんからも何も、特にこうしてほしいとか、ああしてほしいとかはなく、アオイが思ったままを表現してもらいたいし、どうしていくかはもう任せたと言われて。『この子いるじゃん』と思ったのは、そのまま表現させてもらっていた」
工藤将亮監督「確かにあのエンディングは僕も想定はしてなかった。もちろん希望を持ってもらうのが一番本当はいいんです、簡単に言えば。だけど実際問題、これはずっと続いている問題で、そういった現実が続いている中で、アオイがその社会から抜け出して、どこか『遠いところ』に行ってしまうものを提示するのは僕にはできなかった。(映画には)希望を持っていけるような社会であるべきという眼差しを持っています」