今週、特集でお送りしている「戦後78年」きょうは、お伝えするのは、県内の元学徒らでつくる「元全学徒の会」の一員として亡き友の声を語り継いでいる男性です。戦場での重い体験を背負いながら「生き残った者」としての使命を胸に平和を訴え続けています。
平和宣言・翁長安子さん(93)
沖縄戦の風化が懸念され、元学徒も余命いくばくか知る由もありませんがいかなる戦争であれ、阻止しなければなりません。先日、糸満市の平和祈念公園にある「全学徒隊の碑」の前で開かれた追悼式。そこに、特別な思いで参加している一人の男性がいました。
宮城政三郎さん、94歳。沖縄戦当時は、疎開していた台湾で学徒兵として動員され、多くの仲間の死に直面しました。
宮城政三郎さん(94)「戦争はこんなもんだよと伝えていく、恐ろしいものだよと伝えていく。我々の使命だよ、生き残ったものの」
宮城さん、写真を指差し「一中時代の」Q宮城さんの?「私がこれ。これ私」Q何年生のころですか?「2年か3年」
1941年、13歳だった宮城さんは与那国島から県立第一中学校に入学。当時被っていたのは、黒の学生帽ではなく戦闘帽でした。
宮城政三郎さん(94)「勉強というよりは戦うという。敵が来たら戦うということしか頭にないわけですよね」
戦前の県立一中では、学校生活のなかで軍事訓練などが行われていました。生徒たちの戦争への参加は、“訓練”という形で始まったのです。宮城さんが学生時代に使っていた数学のノート。余白には、次のような言葉が記されていました。
宮城政三郎さん(94)「空に散れとか、あの時は飛行機に乗って頑張ろうと、こんなものばっかりしかないさ、みんな」
宮城さんは1944年8月、4年生の時に両親のいた台湾に疎開。翌年3月には16歳で現地で学徒兵として動員され、戦場に身を投じました。山で木材を運ぶ作業中、アメリカ軍の波状攻撃を受けて、周りにいた同級生15人ほどが犠牲に。目の当たりにしたのは、息絶えた学友たちの姿。宮城さんは遺体を荷台に積み、火葬場まで運びました。
宮城政三郎さん(94)「普通だったら感情ありますよね、ないです。どうせ自分もそうなると思っているから。感傷ないですよ。悲しいとかなんとかないよ。それが戦争ですよ」
住民を巻き込み、激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦。14歳から19歳の少年少女が戦場に駆り出され、多くが命を失いました。県立第一中学校では、生徒が沖縄戦で軍に動員されるなどして教師を含めて307人が犠牲になりました。
宮城政三郎さん、写真みながら「みんな鉄血勤皇隊で戦死したからね」
戦後、「生き残ったものの責務」という信念で戦争の無意味さと平和の大切さを訴え続けてきた宮城さん。
宮城政三郎さん「我々が生きている間に戦死者数を公示させたい」
宮城さんら、生き残った元学徒たちは命の尊さを語り継ぐため2018年に「元全学徒の会」を結成しました。学友たちの最後をせめて数字で残したいと、県に働きかけて刻銘版を設置するなど、戦争の悲惨さを後世に伝える活動を続けています。
宮城さんと瀬名波さんの会話「あ、瀬名波先生、大丈夫ですか?(大丈夫ですよ。今朝も病院行ってきたんですけれど)」
当時を知る元学徒は90代半ばに達し、活動できる会員もごくわずかとなりました。体力の限界を感じながらも、声を上げ続けてきた元全学徒の会のメンバー。今年で最後になるかもしれないという思いを胸に、追悼式に臨みます。
宮城政三郎さん「少なくなればなるほど、強い。もっと長生きして戦争のことを伝えないといかんという、その気持ちがだんだん大きくなる」
沖縄戦から78年を迎えるなか、90代半ばにある元学徒ら7人が集まり、花を手向けて亡き学友を悼みました。戦争をしない、させない、そして命を大切にする教育の意味を訴えます。
当時、県立第一高等女学校に通う・翁長安子さん(93)「亡くなった人たちの無念な思いを、今生きている人たちに二度させたくない。それが今私の残り少ない命を持っている私の思いです」
「元学徒の会」共同代表・瀬名波榮喜さん(94)インタ「正しい歴史教育をぜひ、やってもらいたい。そして、二度と戦争というものが起きないように、そして、知恵を働かせることが大事だと思いますね」
宮城政三郎さん(94)「平和な世の中に生きたかったという学友の無念をね。引き継いで全体戦争しませんよと我々頑張りますよと、誓いますよ」
悲惨な戦争を身を持って体験した宮城さんが紡ぐ言葉。平和の尊さを問うものとして、次の世代へ向けられています。沖縄戦の実相と言葉にするが、宮城さんの経験から16歳の少年が死と隣り合わせになった戦場の実態が見えてくる。
また、教育の怖さ、大切を感じる。沖縄戦の体験者は高齢化し、あの時のことを知る人は減ってきているが平和への思いを次の世代へ託そうと、発信を続ける人がいる。平和な世界を実現していくために私たちに何が出来るのか1人1人が考える必要がある。