国は地域における子育て支援の充実を図るため、拠点づくりを推進しています。ことし3月、浦添市は市内にあった子育て支援センター4か所のうち、3か所への民間委託を打ち切り、廃止としました。
センターの廃止をめぐり、利用者や事業者の声を伝えてきましたが、その後、3つの支援センターはどうなったのか、そして残る一つの支援センターを取材しました。
ほるとの家 平安常治理事長「今までと同じように利用できないかっていう声がものすごい多くあって、それで急遽3月31日に4月以降も平日のとりあえず午前中のみセンターとして開放するので利用してくださいと」
こう話すのは、3月末で廃止となった子育て支援センターのひとつ、「ほるとの家」を運営する平安常治理事長です。浦添市はことし3月、「子育て支援センター」として民間委託していた「リーブル・ドンフォン・カフェ」、「ほるとの家」、「柿の実ひろば」の3か所を廃止し、市が運営する支援センター「てぃんさぐ」1か所のみに集約しました。
廃止から2カ月が経つ中、「ほるとの家」には親子の姿がありました。平安理事長が支援を続ける理由、それは「親子の居場所を奪ってはいけない」という思いからでした。
ほるとの家 平安常治理事長「やはりこの居場所をこの方たちから奪うっていうのは心が痛むというか、本当にその一心だけで、この自主事業として今やっている状況ですね」
一方で、支援を続けるにあたり、補助で賄っていた人件費など負担が大きくのしかかっています。ほるとの家の利用者からは、今も支援の継続を望む切実な声があがっています。
利用者「本当に助かってます。3月で終わりとなって、4月からどうしようとずっと悩んでた。どうしようと思って、最後のときに4月も午前中だけは開けてくれるって言われて、居場所があるから本当に良かった」
利用者「支援センターに来て、他のお母さんと話したり、先生と話したり子供を遊ばせることで、どうにか生活することができてるので、出来てきたので、ぜひ支援センターを存続、再開してほしい」
3月末で廃止となった各支援センターでは、5月現在も、支援を続けていますが、3施設ともに、午前中のみの運営となっていてこれらは全て補助なしの自主事業としています。
一方、市が運営する支援センターは、水曜日を除く、月曜日から日曜日の午前10時から午後5時までそれぞれ利用時間を2時間制としています。サンエー浦添西海岸パルコシティー内にある支援センター「てぃんさぐ」です。
てぃんさぐ 吉浜真子センター長「利用者さんからも支援センターって建物の中だと入りづらいところもあるけれども、商業施設の中だと遊びがてら入りやすいところですね、一息ができるところになっているのでいいですね、という声があります」
利用者の声は?
利用者「いくつか調べたんですけど、午前中しか空いてない支援センターも多くて、午前中は朝寝するんです。タイミングがつかめなくて、ここは午後も空いてるので、午後によくきてます」
その一方で、柿の実ひろばを利用していた親子「何かこういう商業施設だと、どうしてもいきづらい、何かちょっと足を運びづらいみたいな人もいるので、どうしてもてぃさぐだけになってしまうと人数が本当に多いときはすごく多くなってしまうので、少ない人数でコミュニケーションを取れる、密に取れるっていうのは、柿の実だった」
てぃんさぐでは、利用者に対して市内の認定こども園でそれぞれが行っている子育て支援に関する情報の周知を行い、支援体制の強化を図るとしています。
記者解説 浦添市・子育て支援拠点センター廃止のその後
ここからは取材を行っている町記者とお伝えします。改めて、センター存続の声があがる中、なぜ浦添市は委託の打ち切りを決めたのでしょうか?
町記者「浦添市は『市内24カ所の認定こども園が整備され、子育て支援を提供する施設は増加したことから、総合的に(委託の終了を)判断した』と廃止に至った理由を説明しています。」
認定こども園が支援センターを利用していた方々の受け皿となるのでしょうか?
町記者「そもそも支援センターの事業と認定こども園が行う子育て支援は、それぞれ所管も、実施主体も違う事業となっているため、こども園がそのまま支援センターの受け皿になるとは言い難いです。また、支援センターが廃止する前の浦添市議会ではこんなやりとりもありました。」
ことし3月の定例議会において、田畑翔吾議員が民間委託の支援センター3カ所と、てぃんさぐの事業運営費について聞いたところ、事業費について
3か所の運営費は、【令和3年度で2079万6161円(うち市負担623万)】
てぃんさぐの運営費【令和2年度で4302万5424円(うち市負担約3500万)】であると市側は答弁しています。
また、てぃんさぐのみとなった今年度については【令和5年度5023万2000円】であると説明しました。」
民間委託の事業費と比べるとてぃんさぐの運営費における市の負担額が非常に大きなものであることが分かりますね。
町記者「この『てぃんさぐ』が浦添市の内間から商業施設内へ移転した経緯について市の内部資料をもとに次のように読み上げていました。」
田畑議員の一般質問より、てぃんさぐ移転の経緯についての資料読み上げ「企画課で調整する際、「年に3000万円も赤字が出ると分かっていて、市税を投資する必要性が感じられない」との意見に対して当時の担当課は「商業施設が開業するにあたり、市民サービスを行う施設を設置するということが前提」「保育課からの要望はなかったが、ある程度の支出は覚悟の上で、補助金の活用が見込める子育て支援センターが指名された」
このように記載されていたと、移転の経緯を指摘しました。施設の設置ありきでそこに子育て支援を行う意思があるのか、疑問に感じてしまう内容でした。
町記者「これに対して松本市長は、「てぃんさぐを存続させるために、3つの支援センターを廃止するということではない」と答弁していました。
最後に、廃止となった支援センターを利用していた保護者らが、存続を求めるために実施しているアンケートが手元にあります。子育てに奮闘するお母さんたちの切実な声がつづられています。一部ですが、お母さんたちの声を読み上げさせて頂きます。
町記者「3月の最終日、帰りの会で泣いているママ沢山いました。今回の浦添市の決断にはガッカリです」「拠点がなくなるということは親子の居場所が失われるということです。子ども園は子育て支援に特化している場所ではないでのその代わりにはなりません」
町記者「誰のための、なんのための子育て支援なのか、行政側には今一度、こうした市民の切実な声に耳を傾けてほしいと思います。」
ここまで町記者とお伝えしました。
2023年3月14日放送 浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋