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金城アナ「県民や観光客の移動手段として欠かせないタクシーの料金が見直され、秋ごろから”値上げ”されることになっています。利用者にとっては、家計(財布)を直撃する問題だけに頭を悩ます話の1つですよね」

寺崎アナ「私も取材でよく使っていて週に3・4回ほど乗りますね。値上げの幅がどれくらいになるのか気になることがたくさんあります」

金城アナ「食品や電気など立て続けに値上げが話題になっています。なぜ、値上げが必要なのか業界に話を聞くと止むに止まれぬ悲痛な現状が垣間見えました」

那覇市・80代「自分の用事はバスに乗って歩きますけど、主人が歩けないので、病院に行く時はタクシーです。(値上げは)困ります。というのも年金生活でしょ、自分たち。それに主人を病院に連れて行く時はもう行き・帰りタクシーです。(値上げは)困りますけど。でも、これはもうしょうがないことで…」

宮古島市・20代「宮古島で働いてるんですよ、月1ぐらいで(本島に)帰ってくるんですけど、本島でちょっと遠出するときとかに、モノレールで行けるところはモノレールなんですけど、そうじゃない(モノレールが)通っていないところに行くときは大体タクシーを使うことが多いです。具体的な(値上げの)金額まだ見てないんですけど、多少であればしょうがないのかなと思う反面、よく使うんだったら、結構積み重なったら大きいのかなとは思いますね」

観光客・60代「(移動は)ほとんどタクシー。ここ(久茂地)から北谷、豊崎とかそのぐらいですかね。あとこの周辺、モノレールがあるところでも、タクシーを使っちゃいます」

タクシー料金の値上げは10月にも始まる見通しです。料金の見直しが動きだしたきっかけは、3カ月前に遡ります。今年2月、沖縄本島地区のタクシー事業者「三和交通」が値上げを申請しました。該当地区にある事業者が保有するすべてのタクシーの台数のうち、70%を超える申請があれば料金の見直しについて国が検討を始めることになっています。

本島地区には87の事業者があって、タクシーの台数は2963台にのぼります。2月から4月末までの受付期間で、保有台数全体の92%・2734台にあたる76の事業者が値上げを申請していました。

タクシー料金 秋に値上げへ

利益率や経営にかかる費用などをヒアリングした結果、先月25日に値上げが「必要だ」と判断されたのです。それぞれの事業者が求めた運賃改定の内容を見てみると、一般的な小型タクシーでは560円だった初乗り運賃は590円~610円で、30円~50円の値上げです。

走行距離に応じて加算される金額は、365mごとに70円加算されていたものが、292m~325mごとに、70円~80円と距離が短くなり、金額も上がっていました。

値上げが必要なほど何が経営を圧迫しているのか・・・沖東交通に話を聞きました。

沖東交通グループ 棚原靖裕 常務執行役員「(コロナ禍で)利用者の激減がまず一番大きく、その次に、併せてタクシードライバーの激減。それと並行して続いていた燃料の高騰石油製品ですので部品とか、そういったのを全て高騰している状態というのが主な理由になります。今回は利用者様には本当に申し訳ありませんが、どうしても運賃改定が必要だと判断しました」

タクシー料金 秋に値上げへ

最大の要因は「燃料の高騰」です。タクシーの燃料に使われるLPガスは3年前は1Lあたり およそ60円でした。その後価格が上がり続け、去年5月には116円とほぼ2倍にまで跳ね上がった状態になっているというのです。経営する上であらゆるものがひっ迫している状況だといいます。

沖東交通グループ 棚原靖裕 常務執行役員「もともと利益率、5%あるかないか、5%あれば運がいい、というのが自分の認識なのですがこの業界、そんななか手数料8%とかとられるもんですから、配車アプリだけで経営をすると利益はまったく見込めない」

導入が進むキャッシュレス決済は手数料が発生して利益が削られるうえに、会計が複雑になっているといいます。また、新型コロナの助成金を申請する経理など事務方の仕事量が増えていて人手不足も浮きぼりになってきました。コロナ禍で目減りした収入と、出口の見えない出費の増加という「負のスパイラル」で、2年半も赤字の状態が続いています。沖東交通に限らずタクシー業界全体が、「もう限界だ」と悲鳴を上げています。

藁にも縋る思いで決意した値上げ申請ですが、すぐに好転するわけではないと言います。

タクシー料金 秋に値上げへ

沖東交通グループ 棚原靖裕 常務執行役員「(金融機関から借入していた)返済が始まると、おそらく借り入れた総額から考えると、通常のうちの利益だと20年で返済ができるのか、というレベルです」

ドライバーの確保も重要だと言います。現在、439台のタクシーを740人で回しています。ただ新型コロナが猛威を振るっていた時期に180人が退職してしまいました。その影響で乗車の依頼があっても、4分の1ほどしか配車ができていないということです。

沖東交通では、2種免許の取得に向けた金銭的な支援や、教習所に通っている間の給与を補償するなど料金値上げで得た財源で人員を増やしたい考えです。

沖東交通グループ 棚原靖裕 常務執行役員「今回の運賃改定をドライバーの給与所得の改善に生かして、少しでもタクシードライバーという仕事が魅力的な仕事になれば、現状タクシードライバーが不足している状況も少しずつ改善していくのでは、と考えております」

タクシー料金の値上げはおよそ4カ月後です。現在は国が、改定後の具体的な料金を議論していて、値上げ開始1カ月前に公表される見通しです。

企業努力だけでは解決が難しい状況が見えてきました。