シリーズ沖縄と自衛隊。今回で8回目です。憲法記念日のきょう、県民の自衛隊に対する意識について取り上げます。自衛隊は復帰とともに沖縄への配備が始まり、半世紀以上が経ちました。戦争の放棄を定めた憲法9条との関係が常に議論になってきましたが、県民が、いま自衛隊をどのようにみているのか、読み解いていきます。
候補生代表者「自衛官候補生に任命され、第51普通科連隊に教育入隊を命ぜられました!敬礼!」
先月9日、那覇駐屯地の体育館では真新しい制服に身を包んだ若者たちが、陸上自衛隊の入隊式に臨んでいました。入隊式に臨んだのは県出身の36人。他国の軍隊での歩兵に当たる普通科連隊で、自衛官候補生として訓練に臨みます。
第51普通科連隊 伊藤智之連隊長「入隊おめでとう(ありがとうございます!)」「我々自衛隊では大切にしている価値観があります。仲間を大切にするということです。みんなは我々の大切な仲間です」
連隊の仲間と認められた若者たちは、家族に送り出されて、自衛官としての一歩を踏み出しました。候補生に入隊の動機を聞いてみると、彼らの口から出てきたのは、東日本大震災などの「災害派遣」でした。
自衛官候補生・大畑春喜さん「災害派遣などで活躍する自衛官の姿をかっこよく思い、自分も『あんな風に人を助けたい』と思い、自衛隊を希望しました」
政府が陸自の配備を進めている先島地域出身の候補生もいました。彼らからは郷土へ思いも聞かれました。
石垣市出身・与那覇碧海さん「18年間育った地元で仕事をしたいという希望は強いですし、地元という面もありますが、国民のために頑張っていきたいという気持ちも強いです」
宮古島市出身・島袋元希さん「自分も宮古島で育った家族や友達知り合いなどを守りたいと考えています」
災害派遣や地元地域を守る意識を持った若者が自衛隊に入る中で、いま、県民は自衛隊に対してどのような意識を持っているのでしょうか。
沖縄の本土復帰から50年となった去年、QABが朝日新聞、沖縄タイムスと合同で行った世論調査では、「沖縄の自衛隊を今後どうしたらよいと思うか」という質問に、本土復帰20年の1992年「強化する」と答えた人は6%でした。それから30年たった去年「強化する」と答えた人は、33%となっていました。
逆に「縮小する」は92年に27%だったのが、去年は11%。92年に11%だった「撤去する」は2%でした。
調査の方法が異なるため、単純な比較はできませんが、県民の自衛隊に対する反発が減り、支持が集まるようになった傾向が見て取れます。その背景には何があるのでしょうか。憲法を研究する沖縄大学の髙良沙哉(さちか)教授は県民の自衛隊や憲法への意識の変化を指摘します。
髙良教授「自衛隊の災害派遣部隊としての活動を非常に強く広報してきた効果はかなり影響しているなと思います」「そもそも武力によらない、自衛だって武力によらないことを掲げている憲法ではありますがそれを『専守防衛だったら大丈夫だ』『最小限度の実力は持てる』そうして解釈を続けてきた中で自衛隊の存在がある程度浸透してきた」
髙良教授も、学生に向き合う中で、変化を肌で感じていました。
髙良教授「若い学生さんなどと授業の中で接する中でも、専守防衛だから許されるんだ、憲法違反ではないという感覚はかなり広がってきている」「復帰当時の沖縄の人たちの持っていた『自衛隊だって容認できないんだ』『認められないんだ』というような流れとはだいぶ県民の感覚は変わってきていますね」
入隊式で行われた宣誓に、自衛隊と憲法の関係を象徴する一節がありました。
自衛官候補生「日本国憲法および、法令を遵守し!」
候補生らは、戦力の不保持を定めた9条を含む現行憲法を守ることを誓っていました。
髙良教授「私は自衛隊を容認をしないが、容認している人も含めて」「肥大化してほかの国の脅威になったり、再び戦争を引き起こすような軍事力として運用されないようにきちんと監視をしていかないといけないんだろうなと思っています」「いまはまだ憲法9条は自衛隊の歯止めとしての条項は残っていますので、その条項を、せっかくある戦力を否定するっていう条項をですね、国民が無駄にしないできちんと軍事力を監視していくっていうことをやっていかないといけないのかなと」
政府が進める「南西シフト」によって沖縄周辺での自衛隊の規模が拡大しています。その中でも、自衛隊の存在や力が戦力不保持を掲げる憲法に適合しているといえるのか、厳しい視線を送り続けなければなりません。