琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。よろしくお願いします。
湊和雄さん「よろしくお願いします。」
今回のテーマはこちら「昆虫たちのトリック」です。
湊和雄さん「いよいよ自然界も春本番。やんばるの森でも昆虫たちの活動は本気モード。地上の動物の8割は昆虫が占めるとも言われ、生き残り競争の厳しい世界です。そのため、数々のトリックを駆使して生き残りを追求しています。」
昆虫たちのトリックとはどういったものなのでしょうか。さっそくVTRをご覧ください!
湊和雄さん「まずは、これ何だか判りますか?」
黒い目玉があって、クチバシのようなものが突き出していますね。何かの顔でしょうか?
湊和雄さん「顔みたいですよね。ヨツメオサゾウムシという昆虫です。これは別の角度から見た全身。先程見ていたのは、これの右端の尾の部分。おしりですね。本当の頭は左にあります。」
何か理由があるのでしょうか?
湊和雄さん「鳥などの天敵が、捕まえようとするとき、思っていたのとは逆向きに動くので捕まりにくい効果があるのでしょう。」
まさにトリックですね。
湊和雄さん「自然界にはたくさんの偽の目玉模様が溢れています。こちらは、リュウキュウヒメジャノメです。」
目玉模様が身体の外側にたくさんありますね。
湊和雄さん「天敵が獲物を捕まえる場合、頭部とりわけ眼を狙うと一撃で仕留められると言われます。そこで、偽の目玉模様を本物の眼から離れたところに配しているのです。多少ハネは破れても、逃げられるからでしょう。」
よく考えられているんですね!
湊和雄さん「続いて先月も紹介した有毒のベニボタルを紹介しましょう。これはその代表種オオシマカクムネベニボタルです。有毒なことを天敵にアピールするために鮮やかな色のハネをしています。」
いかにも毒持ってます!と言う感じですね。
湊和雄さん「こちらは、オキナワクシヒゲベニボタル。やや小型ですが、やはり同じような姿をしています。」
違うベニボタルなんですね!!
湊和雄さん「そのベニボタルたちに擬態している無毒の種類も、同じ時期にたくさん見られます。その代表がリュウキュウアカハネムシ。」
ベニボタルにそっくりです。
湊和雄さん「コメツキムシの仲間にもベニボタルに擬態している種類がいます。これはクニヨシホソクシコメツキ。」
ハネは赤、その他は黒色ですね。
湊和雄さん「このアリタムネアカコメツキも似ていますが、よく見ると、ハネは黒で、胸部は赤と逆転していますね。」
このレベルの擬態でも、問題なく機能するのでしょうか?
湊和雄さん「そう思いますよね。ところが、有毒のホタルの仲間のほうに、この配色パターンのものがいます。ベニボタル類は、名前はホタルでも光らないグループ。このオキナワマドボタルは光る種類です。」
こちらのホタルに擬態していたんですね。
湊和雄さん「続いて、やんばるの春を代表する、もうひとつの甲虫がオキナワトラフハナムグリ。ほとんどものが、このように茶褐色に黄色と黒の模様が特徴です。」
ところが、30匹に1匹くらいの割合で、褐色部分が消えて、黒と黄色だけのものが見られます。同じ種類なのに、何故このような異なる姿のものがいるのでしょう。
湊和雄さん「褐色タイプの虫は離れて見ると、葉の上に落ちている木片か小さな落葉のようにしか見えない、目立たない存在です。何しろ、1cmちょっとの大きさしかありませんから。」「反対に黒いタイプは目立ちます。人間社会でも、黒と黄色の組み合わせは工事現場や、道路標識など、注意喚起に使われます。目立たない姿でもすべて同じでは、鳥に学習されてしまう可能性があります。そこで一部は正反対の姿をして、一部は生き残る作戦なのかもしれません。」
種が生き残るための知恵ですね。
湊和雄さん「最後にもうひとつ。これはヒラタミミズクというセミに近い昆虫の幼虫です。」
この小さな葉っぱですか?完璧なカモフラージュですね。
湊和雄さん「そのヒラタミミズクの幼虫が歩いている珍しいシーンです。小さな脚がちょっと見えていますね。」
小さな足がアンバランスでとても可愛らしかったです。湊さん、今回も貴重な映像ありがとうございました。以上、リュウキュウの自然でした。