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おととい、コロナ禍を経て4年ぶりに開催された宮古島トライアスロン。大会を待ちわびていた1100人あまりの選手が己の体力の限界に挑みました。その中に、がんによる苦しい闘病生活を経て再びこの舞台に戻ってきた女性がいました。目標は笑顔でゴールすること。その姿を追いました。

4年ぶりに号砲が鳴らされた宮古島トライアスロン。その過酷さゆえに、通称「ストロングマン」と呼ばれるこの大会には開催を待ちわびていた1100人あまりの選手が挑みました。その中に、完走への強い思いと不安との両方を抱きながら走り続けたある女性の姿がありました。

大会前日

沼尻キャスター「こんにちは~よろしくお願いします」「もうその恰好なんですね」

江戸千景さん「きょう今バイクの預託があって自転車を預けるのにヘルメットのシールとかボトルのチェックとかがあるので、それを全部済ませてから来てバイクだけ置いてきました」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

大会出場の準備を終え、本番さながらの恰好で自宅へと帰ってきた江戸千景さん。玄関のドアを開けると、カメラマンも驚くほどロードバイクがすらりと並んでいました。自分ができないと思ったことに挑戦して自信をつけたいと2000年から宮古島トライアスロンに出場している千景さんはこれまで17回、完走を果たしました。

20回連続出場の節目となったコロナ前の2019年大会では自己最高順位で走り切り、その翌年、2020年大会も出場予定でしたが…

江戸千景さん「何もかも順調だったんですけど2020年の1月に毎年自分が何気なく受けている婦人検診で要精査と言われて実際その後精密検査を受けたら初期のがんが見つかった。手術も抗がん剤も放射線治療もすべての治療が必要だと言われて」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

ステージ1の乳がんと診断を受けた千景さん。コロナ禍で大会自体も延期や中止となるなかで人知れずがんとの闘いに臨むことになりました。

江戸千景さん「髪の毛も全部抜けちゃったりとか、体力もものすごい落ちちゃったりとか吐き気とか具合悪いとか全部体験したんですけど」「その時は主治医の先生にも「目標は治療が終わってトライアスロンに戻ることです」と言って」

そんな千景さんを近くで見守ってきた、夫・欽一さんは。

夫・欽一さん「(がんと聞いた)その時はすごいショックだったんですけど、その時よりも治療中の方がつらそうで抗がん剤、放射線の副作用とかでほとんどトレーニングできないのにウォーキングに行ったりを止めなくて」

江戸千景さん「申し訳ないほどうろたえさせてしまったので、その後はものすごく優しくなりました笑」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

つらい治療も、トライアスロン復帰への思いで乗り越え千景さんはほぼ寛解にまでたどり着きました。さらに歩くだけでも息が切れる状態から競技仲間たちが練習に付き合ってくれたこともあり体力を取り戻していきます。今回が復帰後初めてとなるトライアスロン。闘病生活を乗り越えた証であり、支えてくれた人たちへ元気になった姿を見せる、大きな意味を持っていました。

江戸千景さん「なんでこんなきついことをやっているのに、こんなに楽しそうなんだろうこの人はって思われるくらいの笑顔で元気に駆け抜けたいなと思っています。すべての沿道の人たちに笑顔で、それが一番の目標ですね」

大会当日

競技仲間たちとの再会に笑顔を見せながらスイムのスタート地点へと向かう千景さん。4年ぶりに立ったこの場所は、やはり特別でした。

江戸千景さん「またここから再スタートが始まるんだなと、やるぞっ!て気持ちがいっぱいですね」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

午前7時に始まった鉄人レース・宮古島トライアスロン。今回はグループごとに時間差をつけてのスタートが採用され千景さんは第4グループ、7時6分に海へと飛び込んでいきました。今大会は従来よりも距離は短くなった一方で制限時間もその分短くなっており、体力と時間との勝負は健在です。

千景さんは、自身の目標タイムよりは6分半ほど遅れてスイムのゴールへ。笑顔でカメラの前を通り過ぎましたが、今後この遅れが後に響くことに。足早にバイク12kmの道のりへ飛び出していきましたがさらに振りかかったのが、「暑さ」でした。この日、強い太陽の日差しとともに最高気温は27度に。千景さんも体を冷やしながらのレースが続きます。そんな千景さんをバイクの半分を過ぎた7kmあたりで、欽一さんが待っていました。

欽一さん「千景~ランまで残しておけ~」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

欽一さん「暑さでばてているみたい(バイクをこぐ)回転が結構遅かったから、いつも制限時間ギリギリだからこんなもんでしょう」

4年ぶりに帰ってきたトライアスロンは選手だけでなく島の人たちにとっても特別なもの。沿道では至る所で、思い思いの応援で選手たちを後押ししていました。

宮古島在住「(中止期間は)寂しかったです。何か物足りない感じで応援したくなる。元気ももらえるので楽しんでいます」

一方、千景さんはというと…バイクのフィニッシュ地点へ。しかしこの時のタイムは制限時間のわずか10分前でした。

江戸千景さん「暑かったので安全第一にしすぎました(体力は?)大丈夫です、それは温存してあります」

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

時間との戦いが始まったラストのラン30km。体力もきつくなってくる中で力になったのはこの4年間の経験でした。

江戸千景さん「すごいしんどい時は私はもっとしんどいことを乗り越えてきたじゃん!って思いましたよね。今回あの時に比べたらみたいなあまりにも体力が落ちて涙目になりながらウォーキングをしていた時期もあったので、それに比べて今他の人たちと同等にできているんだというのは密かにうれしかった」

時折、歩くことはあったとしても懸命にゴールを目指し続けていました。その頃、陸上競技場では多くの選手たちが感動のゴールを迎えていました。午後5時20分ごろ。欽一さんも、千景さんを待ちますが…

欽一さん「ギリギリ?10分前くらい?」

タイム速報を見ながらの予想は、制限時間午後6時36分まで余裕のない状態でした。日も傾き始めた午後6時過ぎ。

「お待たせしました~やったー」

ランでペースを上げた千景さんが予想を上回るタイムで笑顔で競技場へ。闘病生活を経て、歩くことさえ厳しかった時期を乗り越えて。千景さんは、再びストロングマンになりました。

4年ぶりの宮古島トライアスロン 病を乗り越えて再びストロングマンへ

レース後 江戸千景さん「最高の1日でした。最初の自分の公約通り終始笑顔でやって苦しい顔はどこでも見せずに済んだので」

欽一さん「完走してよかったなと。また新しい一歩が踏み出せたなと」

江戸千景さん「またこれからもいろいろ頑張れる自信がつきました!」

欽一さん「(メダルを首に)よく頑張りました~完走おめでとうございます!」