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沖縄が誇る「やんばるの森」には世界自然遺産に登録されたという喜ばしい側面がある一方でその自然遺産の一部でもある北部訓練場の返還跡地には片付けられないまま無数に残された”アメリカ軍の廃棄物”という見過ごしてはいけない問題があります。

一人でも多くの人に関心を持ってもらい、より良い世界遺産にしていくための知恵をみんなで考えようと現地の調査を続けている市民団体が詳細が知らされづらくなっている廃棄物問題の現状についてユネスコなど世界に向けて発信しました。団体の代表を務める男性は「現場でどんなことが行われたのかといった情報が一般の人にもきちんと知らされるべき」だと訴えています。

Okinawa Environmental Justice Project 吉川秀樹代表「ユネスコの世界遺産センターですね、事務局であるそれからユネスコの環境の諮問機関であるIUCNに問題を伝えていくという形で今回の会議に参加した」

北部訓練場の返還跡地に残されたアメリカ軍の廃棄物問題を訴えているNGO代表の吉川秀樹さんは、地元の自然を後世に残したいと15年ほど前から北部地域の環境保護や汚染調査活動を行い続けています。

世界遺産に関連する問題解決に取り組むNGO「World Heritage Watch」の会議が先週、開催されました。オンラインで参加した吉川さんは 跡地にある廃棄物の実情を訴えました。

NGOがユネスコにやんばるの森の問題を訴える

世界中の市民がユネスコやIUCNに課題を伝える会議にオンラインで参加して、北部訓練場跡地から見つかる廃棄物の実情を訴えました。

Okinawa Environmental Justice Project 吉川秀樹代表「世界遺産センターに提出することになっている報告書の中に廃棄物の問題もちゃんと入れさせなさいと、それを世界遺産センター、IUCNの方から日本に言ってくれと、そういう要請が一点であります」

雄大な自然を誇る本島北部に位置する「やんばるの森」は、希少な生き物が生息する生物多様性が豊かな場所として2021年7月に世界自然遺産に登録されました。

その世界遺産の区域にも入っている北部訓練場跡地は7年前にアメリカ軍から返還された場所で、面積は4000ヘクタールにものぼります。現地調査を実施した防衛局の報告書には、4500発以上の空包・ライフル手りゅう弾1発などが見つかり処理をしたと記録されていました。

ただ 調査された場所は返還地全体の0.01%となっており、これまでにどの程度の範囲が調べられたのかや、どれだけの廃棄物が残されているのかなど、吉川さんらが投げかけた疑問に満足のいく回答は返ってきていないといいます。

Okinawa Environmental Justice Project 吉川秀樹代表「どこの世界遺産でも問題はある、それは隠してはいけない、ちゃんと状況を報告して、悪ければそれに対する対応を実際に行っていく、そうすることによって世界遺産の普遍的価値は守られていくことになりますから」

政府がやんばるの森を世界遺産に推薦する際に提出した「日米両政府が協力して環境保全に取り組むことを明記した合意書」は一部しか公開されていません。締結した人間が誰なのかや実質的な効力があるのかが疑問視される点や、現在もやんばるの森や周辺で繰り返される訓練が生態系にどのように影響するかの調査が行われない点なども報告されました。

吉川さんは本来なら世界自然遺産は厳しい環境保護の規定で守られなければならないとして、調査結果などを一般に向けてしっかりと公開されるべきだと指摘します。

アメリカ軍の訓練施設が世界遺産に隣り合ういびつな状況から起こりえる懸念があるといいます。

濱元晋一郎記者「県道と北部訓練場の境界には立ち入り禁止の看板などはなく、誤って迷い込んでしまう危険があります」

どこからが入ってはいけない訓練場なのかがわらない場所が多く、立ち入り禁止を示す案内があっても一部にしかないため、ひと目見ただけでは理解することが難しくなっていました。やんばるの森に訪れた観光客や地元の人などが知らずに入ってしまい、逮捕されてしまうような最悪の事態が起きかねないと吉川さんは指摘します。

NGOがユネスコにやんばるの森の問題を訴える

Okinawa Environmental Justice Project 吉川秀樹代表「世界遺産条約履行のためのガイドラインを読んでいくと、市民がどんどんかかわっていいと、声を出して情報をちゃんと伝えていこうと、政府が伝えられない情報もたくさんありますから。いろんな問題を指摘していく、そういう役割を持っている、だからそれをきちんとやっていこうと思っています」

吉川さんが指摘した課題は、ユネスコとIUCNなどが改善の必要があると判断すれば、21カ国が参加する世界遺産委員会の会合で議題に上がるということです。

誰からも認められる世界遺産であり続けるためにも、向き合わなければいけない課題はいまだ山積しています。