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政府が南西シフトとして進める自衛隊配備や有事の時の問題などについて考える「沖縄と自衛隊」です。きょうは国境の島・与那国島で進む国民保護の取り組みを通して自衛隊との関わりについて考えます。

過去の悲劇を伝え続ける男性はその責務を果たそうと声を上げています。

台湾からわずか110キロ、日本最西端の島・与那国島。政府が中国を念頭に南西地域への部隊配備を進める南西シフトの一環で島に陸上自衛隊が配備されたのは2016年のことです。当時、地域の過疎化に悩まされてきた島民にとって自衛隊の誘致は地域振興につながるとされました。

沖縄と自衛隊(6)国境で揺れる島・与那国

島民(2015年2月23日)「若い人が帰って来られるような島づくりを町民でやらないといけないそこにはどうしても自衛隊が必要」

駐屯地には広大な海を行き交う船舶を見張る沿岸監視部隊が置かれ、およそ150人の隊員を含む250人が移住。そして今、防衛省は与那国へのミサイル部隊の設置を検討し弾薬庫などを整備する計画を進めています。

国境の島に物々しい警報音が鳴り響いたのは去年11月。県内で初めて行われた弾道ミサイルによる攻撃を想定した住民の避難訓練です。近隣の国から発射された弾道ミサイルが与那国町に飛んでくる可能性があるという設定のもと、地域の公民館に避難した住民たち。

島民「命を永らえる手段としてはほとんど意味がないと思います」「なぜ与那国に着弾されなきゃいけないのか何か悪いことしてるの?それが分からないその根本が」

沖縄と自衛隊(6)国境で揺れる島・与那国

役場の職員もミサイル通過が確認されるまでの対処訓練に参加し、防災無線での呼びかけや住民からの問い合わせを想定した電話対応にあたりました。しかし、命を守る手段としては町長でさえ限界を感じていました。

糸数健一与那国町長「1~2分で飛び込める自宅の庭にシェルターがあったりとか地下室があったりとかそれがどうしても必要かと思う」「(有事の時に)自衛隊を除いた約1500人の町民を(どこかが)預かってくれるのかどうか何もない」「県に問いかけても国に問いかけても答えようがないからお答えいただけないと思う」

先月、与那国町は自衛隊とともに他国からの武力攻撃を想定し住民の避難方法を検証する国民保護法に基づく図上訓練に参加。日本周辺の情勢が悪化し政府が先島諸島の市町村を九州地方への避難が必要な要避難地域に指定する可能性があるという想定です。

与那国町の担当者「県から割り当てを受けたフェリーおよび航空機をもって要配慮者等の避難を優先的に行い1日で島外避難を完了させるものとします」

沖縄と自衛隊(6)国境で揺れる島・与那国

与那国町では自衛隊配備の翌年、有事の時の島民保護と避難を目的に国民保護法にもとづく保護計画を策定しました。島民は石垣島を経由して九州各県に避難する案が検討されていますが、自衛隊が関わることは想定されていません。

その理由は、国際人道法の中で住民保護は軍事と民間を区別することが義務付けられていて自衛隊の不用意な関与は「軍民分離の原則に反するもの」とされているからです。

国士舘大学中林啓修 准教授「自衛隊の部隊がいるとか自衛隊の部隊と一緒に行動するというのは有事になってしまえば相手からの攻撃に巻き込まれるリスクを抱え込むことになる住民が避難を繰り返していく中で民間の船舶とか航空機とまぜこぜにして自衛隊を使っていくのはなじまない」

沖縄と自衛隊(6)国境で揺れる島・与那国

有事を前提に防衛力強化が進み住民を避難させる国民保護の取り組みが加速する中、声を上げた男性がいます。与那国島出身の宮城政三郎(みやぎ・せいさぶろう)さんです。

今年1月、元全学徒の会のメンバーとして「沖縄を戦場にすることに断固反対する声明」を発表。南西地域の自衛隊増強や軍事要塞化の反対を訴えています。

元全学徒の会宮城政三郎さん「敵基地攻撃とか言って軍拡に走っているでしょこれを見たらね元学徒として黙ってはおれないと思ってね」「与那国八重山宮古部隊を配置しているでしょ戦前みたいに与那国なんか最前線だから地下に壕を掘るとかね司令部をとかやってるでしょ馬鹿じゃないか」「どうしたら戦争を回避できるかということを行動すべきですよ」

思いの根底にあるのは、中学3年で召集された学徒隊で何人もの学徒が命を落とすところを目の当たりにした遠い記憶。戦争の悲惨さや平和の尊さを後世に伝えようと学徒隊が経験した戦争を語り継いできました。

元全学徒の会宮城政三郎さん「戦争が終わって平和で自由になったその平和と自由のありがたさを本当に心から思ったことないですよあの時それを私は伝えたい」「戦のことばかり敵基地攻撃ということばかり考えないで」「中国とか北朝鮮・ロシア」「そこに乗り込んでいってね日本は絶対戦争しませんよと憲法9条があるから絶対戦争しませんよと言って乗り込んでいってやるくらいにやらないと」

沖縄と自衛隊(6)国境で揺れる島・与那国

「二度と過ちを起こさない起こさせない」宮城さんの思いはどうすれば政府に届くのでしょうか?