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政府が「南西シフト」として進める自衛隊配備や、有事の際の問題などについて考える「沖縄と自衛隊」。

きょうのテーマは日米共同訓練・アイアン・フィストです。自衛隊とアメリカ軍が参加して、沖縄のほか大分・鹿児島で行われました。

占領された離島を奪還するなどの想定のもと、日米のさまざまな部隊が参加していました。日米のねらい、そして私たち県民はどうとらえるべきなのかを考えます。

先月16日から今月12日までおよそ一か月間行われた自衛隊とアメリカ軍の共同訓練「アイアン・フィスト」。

2005年度から始まったこの訓練は、これまでアメリカで実施されていましたが、今回初めて日本国内で行われました。

自衛隊から参加した陸上自衛隊の「水陸機動団」は、「日本版海兵隊」とも呼ばれ、島しょ部の作戦のうち敵に占領された島に上陸し「奪還」を担う部隊です。

訓練のはじめの段階で、自衛隊とアメリカ軍は大分県の日出生台演習場で、実弾射撃を伴う訓練を行ってきました。

その次に鹿児島県の離島の喜界島や徳之島で訓練を行いました。輸送機から陸自の空挺隊員らがパラシュート降下する様子がみられました。

「沖縄と自衛隊」(4)日米共同訓練「アイアン・フィスト」

喜界島島民「最高よ。よかった。自衛隊っていいね。かっこいいね。国を守ってもらわなきゃ」

島では訓練の様子を大勢の島民が見物し、歓迎する声も聞かれました。

沖縄での訓練は日程の終盤に行われました。8日には、宜野座村の海岸に上陸した陸上自衛隊の水陸両用車「AAV7」が米軍訓練場内に入る様子も確認されています。

金武町のブルー・ビーチ訓練場で上陸訓練が本格化した9日、早朝からホバークラフト型の揚陸艇「LCAC」が次々と海上からビーチに乗り上げてきました。

海上自衛隊の揚陸艇から姿を現したのはアメリカ軍の車両や兵士たちで、沖合のアメリカ軍の揚陸艦から陸揚げしたとみられ、日米の連携が見られました。

長年、金武町でのアメリカ軍の訓練を見つめてきた吉田勝広元町長は、台湾有事なども踏まえて、懸念を口にします。

「沖縄と自衛隊」(4)日米共同訓練「アイアン・フィスト」

吉田さん「台湾有事を想定して、こういう沖縄でこういう訓練をするということは、沖縄がやっぱり戦争に巻き込まれる。こういう演習が果たして戦争を抑止できるのかできないのか、それからまた、かえって誘発するのかしないのか、そこはやはり考えていかないとならない」

「戦争に巻き込まれる、巻き込まれる自ら自分の島の海兵隊と自衛隊が演習すること自体がこれは沖縄県民の意思に反するんじゃないか。そう思います」

訓練最終日の12日、うるま市のホワイト・ビーチで開かれた訓練の閉会式。海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」の甲板には自衛隊員やアメリカ兵が並び、その中で日米の指揮官が強調したのは「日米の共同作戦」の強化でした。

海兵隊司令官「アイアンフィストを日本に持ち込むことで、米軍と日本の自衛隊の2国間の水陸両用作戦機能の能力をさらに高めるための新たな課題、訓練目標、訓練場所を得られた」

今回の訓練を識者は、どのようにみたのでしょうか。沖縄でのアメリカ軍や自衛隊の訓練を長年監視し、分析してきた県平和委員会の大久保康裕事務局長は、アメリカ軍が進めるある作戦構想に着目します。

「沖縄と自衛隊」(4)日米共同訓練「アイアン・フィスト」

大久保さん「遠征前方基地作戦という海兵隊が力を置いている沿岸部における中国の艦船の封じ込め、こういう構想をにらんだものではないかと思います。具体的には有人・無人にかかわらず島を占領・占拠して、そこを攻撃・あるいは補給の拠点にして島をどんどん渡り歩いていくと」

EABOでは有事に民間の港や空港を利用して、軍が活動することも念頭にあるとみられています。今回の訓練でも、鹿児島県の徳之島で、自衛隊やアメリカ軍のオスプレイが民間地に離着陸する場面もありました。

県内での今後の動きについて、大久保さんも警鐘を鳴らします。

大久保さん「沖縄でもおそらく港湾や空港を想定した訓練が行われると思います。使い慣れた基地・訓練場よりも『生地』というのが彼らにとってはリアリティを持ちますので、基地のあるとことないところかかわらずこうした訓練が行われると思います」

「(米軍は)戦力を少しずつ自衛隊側にシフトしながら、自衛隊の方に海兵隊の役割を移譲するというようなイメージを持っているのかもしれません」

陸自水陸機動団長「今後も我々は日米共同による抑止力・対処力をさらに強化していかなければなりません」

今年1月の日本とアメリカの外務・防衛閣僚による「2+2」でも、南西諸島などでの施設の共同使用を拡大や、共同演習・訓練の増加などが確認されています。

「沖縄と自衛隊」(4)日米共同訓練「アイアン・フィスト」

沖縄周辺での軍事活動の強化を進める自衛隊とアメリカ軍に県民はどのように向き合うべきなのか。大久保さんは次のように指摘します。

大久保さん「住民の暮らしの中でどうしても怖いのがまひなんですね。オスプレイの配備を許さない戦いのとき、あれだけ県民がたたかいながらも配備されてしまうと、どんどんどんどんそこに慣れさせられてしまう。またかということで。それがある意味では戦争する国づくりを目指す人たちのねらいでもあると思います」

離島での上陸作戦を念頭に自衛隊とアメリカ軍が連携を強化した「アイアン・フィスト」。しかし、軍事活動が増加することで、基地負担や有事発生の危険性が増していることを認識しなければなりません。