政府が「南西シフト」として進める自衛隊配備や有事の際の問題などについて考える「沖縄と自衛隊」。2回目の今回は「反撃能力の県内配備」と題して、沖縄への自衛隊のミサイル配備について見ていきます。去年12月に政府が閣議決定した安全保障関連3文書で、日本が「反撃能力」を持つことが打ち出されました。
しかし、実際にミサイル配備が進んでいる地域からは、懸念の声も上がっています。
沖縄本島から西におよそ300キロ離れた宮古島。
塚崎記者「自衛隊の保良訓練場にきています。住宅地から数百メートルの場所に弾薬庫が二つ設置されているのが確認できます」
宮古島市中心地から離れた、自衛隊保良訓練場。訓練場内に設置された弾薬庫には2021年11月、ミサイルの弾薬がすでに運び込まれています。
島に陸上自衛隊が配備されてから今月で4年となり、19日、記念式典が駐屯地で開かれていました。
パレードの車列には、地対艦・地対空ミサイルも参加し迷彩色の発射器を積んだ大型車が参加者の前に披露されました。
島に配備されているのは12(ひとに)式地対艦誘導弾。日本が独自に開発し、陸上自衛隊が配備するミサイルです。地上から海上の艦船を攻撃することを任務としています。
政府はこのミサイルを「能力向上型」として「スタンドオフ・ミサイル」と呼ばれるより射程の長いミサイルに改造する計画を立てています。
さらに政府は去年12月、閣議決定した安全保障関連3文書でミサイルの能力向上型などスタンドオフ・ミサイルについて「反撃能力に活用する」と打ち出しました。
政府は意義について「相手からの更なる武力攻撃を防ぎ国民の命と平和な暮らしを守っていく」などと説明しています。
地対艦ミサイルは海洋進出を進める中国を念頭に南西諸島への配備が進められてきました。宮古島のほかに鹿児島県の奄美大島にはすでに配備されており来月には石垣島に、2023年度中には沖縄本島にも配備される見通しです。現在、配備されているミサイルは射程延長前のタイプですが、今後、射程延長型に置き換える可能性もあります。
玉城知事「反撃能力を有したミサイルの配備についてはさらなる基地負担の増加に繋がるものであり県民の理解は得られないということを考え、我々としては断固反対するということは申し上げておきたい」
県内からは反撃能力の県内配備に反対の声も上がっていますが、政府はスタンド・オフミサイルの県内配備について「具体的な配備先は決定していない」と否定も肯定もしない立場を取っています。
ただ、浜田防衛大臣は今月8日、国会で県内配備を示唆する発言もしていました。
浜田大臣「長射程というお話がありましたが我々まだ決定していることではございませんし」「我々はもしもそういうことになれば丁寧に説明していかなければならないと考えております」
政府が明言を避けたまま、県民の懸念が高まり続ける沖縄への反撃能力のあるミサイル配備。外務省で国際情報局長や駐イラン大使などを歴任し、現在、東アジア共同体研究所・所長を務める孫崎享さんは日本の反撃能力保有について台湾有事なども念頭に置いた「アメリカの戦略の一環」と指摘します。
孫崎享さん「台湾問題の緊張というものが出てきている中で、日本に撃たせるというオプションを持つ」「アメリカ本土からの発射になれば、それはもう大戦争になっていくわけですけれどもその前にいくつかの段階で日本発に攻撃する」「残念ながら日本のためではなくアメリカの戦略の一環として強硬に求めてきていると、こう理解していいと思います」
自衛隊が反撃能力を持つことで、周辺国からの攻撃を招く危険性も指摘しています。
孫崎享さん「中国を考えると2000発持っているわけですよね」「現実の問題として作戦を作ったとして一体何発破壊できるのかと。もう数発ですよ」「残りのところがまったく手つかずに残っている。それでもって反撃されるわけだから。日本が攻撃するものとそれでもって破壊できるものと、それでもって誘発して攻撃されるものの比較になったら、後の方が圧倒的に多い。この点について何も言及してないですよね」
現在、すでに県内で自衛隊の対艦ミサイルが配備されているのは宮古島のみです。沖縄防衛局は先月11日、宮古島市の座喜味市長に安保関連3文書の方針などを説明しています。座喜味市長は反撃能力を島内に配備する計画が出た場合、速やかに説明するよう求めました。
座喜味市長「島の市民の皆さんの関心事でありますしその辺については丁寧な説明方願いたいというようなことをお願いしました」
今月19日、駐屯地で開かれた記念式典で自衛隊は空包を使った射撃訓練も公開しました。
想定は対艦ミサイル部隊への敵の攻撃。ミサイル部隊が攻撃目標となることを、自衛隊が自ら示した形にもなります。
記念式典3日前の16日。宮古島駐屯地ゲート前では市民が抗議活動を行っていました。
島への自衛隊配備に反対してきた「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子共同代表は、反撃能力の宮古島への配備について懸念を語ります。
清水早子共同代表「長距離の射程のミサイル弾を置くということは、遠くまで飛ぶ。つまり、中国を例にとればね、本土まで届くわけでしょ。そしたら撃ち返されるのは当然じゃないですか。それが前提で戦略を立てるはずですから、そうするとこの島は犠牲になることがね、前提の軍事戦略なのかと思いますよね」
先島地域で先行してきた自衛隊配備。辺野古新基地建設など米軍基地の問題を比べて、沖縄本島では自衛隊の問題に関する議論がこれまで低調だったことは否定できません。
清水さんも先島と沖縄本島での意識の差に危機感を募らせてきましたが、変化も生じてきたといいます。
清水早子共同代表「今沖縄島のうるまでもね、ミサイル配備されるということが出てきてから自衛隊のミサイル問題に目が向くようになって」「少しずつ皆さんにこういう状況が伝わりつつあるかなというふうに思います」
沖縄が攻撃対象となる可能性を高めかねない県内への反撃用ミサイルの配備。これまで負ってきた米軍基地負担に加えて沖縄が自衛隊の攻撃拠点となる事態を見過ごすことはできません。
VTRでもありましたが、これまで自衛隊のミサイル配備の問題についてあまり目を向けてこなかったのではないかと私たちメディアも含めて、県民の反省点といえると思います。