アメリカ軍がオスプレイの部品交換に伴う飛行制限を実施するなか、普天間基地ではオスプレイが離着陸を繰り返しています。飛行制限が発表されて以降、普天間基地に配備された機体が部品交換の対象か否か、軍は明確に答えないままです。今回の飛行制限について、経緯や問題点をまとめました。
今回のアメリカ軍の飛行制限はクラッチ関連の部品交換に伴う対応です。軍は「ハード・クラッチ・エンゲージメント」と呼ばれるプロペラとエンジンをつなぐクラッチが離れ、再結合する際に衝撃が発生する現象を予防するための措置と説明しています。
今回の措置はこの現象が直近で増加したことが要因で一定の使用時間を超えた部品を使うすべてのオスプレイが対象になるとのことですが、部品交換後は飛行状態に戻すということです。
防衛省は部品交換について「あくまで予防的な措置で機体自体の安全性には問題ない」と強調し続けています。
浜田防衛大臣「(パイロットが)適切に対処可能となるよう、シミュレータ訓練にも本現象が反映されているところであります。これらを踏まえて、防衛省として、オスプレイの飛行停止等の措置を米側に求めることは、現状考えておりません」
アメリカ軍は「根本的な原因は引き続き調査中」としていますが、防衛省は軍の現状の対策を踏まえオスプレイの飛行を容認しているのです。
オスプレイのクラッチの不具合を巡っては去年8月、アメリカ空軍が飛行停止をし、東京の横田基地に配備された機体も飛行停止となりました。一方、アメリカ海兵隊は8月、パイロットに緊急対応訓練を行っていたことを理由に普天間基地のオスプレイも飛行を継続しています。
在日アメリカ軍司令部は当時、空軍と海兵隊で対応が異なっていた理由について「機体構成などが異なっているため」と説明していました。しかし、今回は一転して、アメリカ軍の海兵隊・空軍・海軍のすべてで飛行制限が行われています。
QABは海兵隊に8月の時点で飛行停止をしなかった妥当性について見解を求めましたが海兵隊側は「航空機を飛ばすことは本来、危険な任務だ」として当時の判断を正当化しています。
8日午前、QABが設置している情報カメラは普天間基地に着陸するオスプレイをとらえていました。関係者によると、普天間基地のオスプレイの一部も部品交換の対象とみられるとのことですが、軍はこれまで、普天間の機体が部品交換の対象なのかについて「作戦保全」を理由に回答していません。
その状況でアメリカ軍は普天間基地のオスプレイを飛ばし続けているのです。普天間基地での実態が不明な状況に玉城知事も情報公開の必要性を訴えています。
玉城沖縄県知事「詳細な情報提供、適切な対応を求めていきたいと思います。そうでないと、その県民が何をもってこれで安心だということに不安が払拭できるのかっていうことがあいまいなまま、見えないままです」
安全性への懸念がこれまでも指摘されてきた中で行われた今回のオスプレイの飛行制限トラブルを抱えた部品の交換が必要か否かも明かさないままオスプレイが沖縄上空を飛び交う状況は決して容認できません。
ここからは取材を担当した塚崎記者です。塚崎さん、今回のクラッチのトラブルについて、説明していただけますか。
塚崎記者「はい。アメリカ軍はエンジンの動力をプロペラに伝えるクラッチのトラブルを予防するために関係する部品交換を行っています。軍が部品交換を決めたのは今月に入ってからですが、アメリカ海兵隊はクラッチのトラブルを2010年の段階で認識していたことを明らかにしています。」
2010年というと10年以上前になりますね。
塚崎記者「はい。普天間基地へのオスプレイの配備は2012年ですがクラッチのトラブルを海兵隊が明かしたのは配備から10年後の去年になってからでした。オスプレイを配備する段階では安全性への懸念から県内全41市町村長・首長らが政府に配備撤回を求めるなど、根強い反発もあり、県は今も、配備反対の姿勢を崩していません。その中で、トラブルを認識しながら公表していなかったアメリカ海兵隊の姿勢は問われなければならないと思います。」
今回の部品交換も普天間基地の機体が含まれているかはっきりしないままですね。
塚崎記者「はい。そのはっきりしない状況で、海兵隊は普天間基地からオスプレイを飛ばし続けています。」
軍は部品交換が必要か明らかにしない理由を「作戦保全」としていますが、基地に隣接する宜野湾市民をはじめとした県民の安全よりも軍隊としての理論を優先した対応だいえます。
そうした姿勢のアメリカ軍が機体の安全性に疑問があるオスプレイを飛ばし続ける現状について本当に妥当なものなのか、今回の軍の対応を機に、県民の目線で見つめなおす必要もあると思います。