6回目のきょうは、障がいがある人たっちの進路や就職について考えます。「障がい者の雇用率が全国トップ」と聞くと沖縄は理解が進んでいると考えてしまいがちですが特別支援学校卒業したあとの実態を見てみると、「短期」や「有期」といった雇用形態え働ける期間が限られている場合が多くを占めています。
そのため、次のステップを踏み出す時に大きなハードルとなっています。習得した技術で長く働きたいという思いを持って特別支援学校をこの春に卒業する一人の生徒が就職という夢の実現に向けて奮闘する姿を追いました。
面談の様子「求人票を見ましたね、今回は正社員のフルタイムです。8時間勤務です。頑張れそうですか?」生徒「体験でやったので、頑張れる自信があります」
“働きたい”という意欲をにじませる生徒。南風原高等支援学校の3年生、比屋根琉希さんです。軽度の知的障がいがありますが、卒業後は、一般企業での就職を目指して日々取り組んでいます。
南風原高等支援学校3年 比屋根琉希さん「早く入社して生活費とか自分を育ててくれた家族への恩返しで何かしたいと思い、学校で頑張っております」
専門家、先生会議の様子「こっちも正社員、4番。障がい者雇用で実習2週間でやっています」
南風原高等支援学校では今年度、20人の生徒が一般企業での就職を希望しています。特に力を入れているのが“無期雇用”での就職。就労支援コーディネーターと連携して、実習や就職先を開拓しています。
南風原高等支援学校 仲里智美教頭「この子たちは、すごくできることがたくさんあります。可能な限りよりよい条件で働くことで、この子たちの幸せにつながると思っています」
2021度、県内22の特別支援学校高等部を卒業生した生徒のおよそ3割が一般企業に就職しています。しかし、一般就労の多くは働ける期間が限られている「有期雇用」で、同じ職場で継続して働ける「無期雇用」は2割程度にとどまっています。
就労支援コーディネーター・翁長克さん「(企業は)本来であらば長期雇用を考えるんですけれど、障がいがある故に短期間からやらないとほんとに育てきれるのかっていう企業が疑心暗鬼な部分がある」「持っている力をどううまく引き出して、彼らがそこに合っていくのかというところは、企業も今後考えていかなければいけないと思っています」
「えーっと、りゅうきくんが14階でお願いします。」那覇市にあるリゾートホテル。卒業後の就職を目指して奮闘する琉希さんの姿がありました。客室清掃スタッフとして入社を希望していて、この日は、就業体験です。
スタッフに確認するやりとり「野原さん。お風呂場のタオルってどうします?これがあったんですけれど」
特別支援学校の生徒が企業へ就職する場合、生徒は希望する企業で2週間働き方を学びます。就業体験は、生徒にとっても企業にとっても、互いを知る貴重な機会。ホテルを運営するリゾーツ琉球では、この春、琉希さんを無期雇用で採用する計画をしています。
琉希さん「やっぱり、この部屋を利用する方のために、頑張っていますね」「丁寧にすれば、お客さんも喜んでこのホテル全体がいいホテルと思ったり、またもう一回来たいなと思うためにきれいにしていますね」
客室清掃において大切なポイントとなるベッドメイク。スタッフに教えてもらいながら、懸命に仕事を覚えます。
スタッフと琉希さんのやりとり「はい、大丈夫ですか?」「ちょっと、ずれてますね」職場での実習を通して、働くためのスキルを学ぶ琉希さん。そのていねいな仕事ぶりに企業の担当者は、琉希さんの強みを引き出していきたいと考えています。
HOTEL SANSUI NAHA 総支配人・川中由仁さん「丁寧さが基本的にあって、スピードをどうあげていくかというところをこれから学んでもらったら、いい仕事ができると思いますね。のびしろあると思いますよ。しっかり野原さんが育ててくれますから」「きれいになったでしょ、これ。さっきと全違うじゃない。一つ一つ覚えていったらできますよね」
南風原高等支援学校3年 比屋根琉希さん「自分には向いているのか不安はありました。でも思ったより頑張ってます」「自分でもできるのがあるということがわかりました」
就業体験を終えて数日後。いよいよ面接です。
「よろしくお願いします」「どうぞ、かけてください」「失礼します」
総支配人「どういう気持ちで入社しようと思ったんですか」
琉希さん「ちゃんとベッドメイクや清掃できるかなと不安だったんですけれど、だんだんしているうちに、だんだん楽しくなってここに入社したいと思い希望しました」
総支配人「ホテルで大切なことどんなことだと思いますか?」
琉希さん「安心安全でお客様がご満足でいられるように清掃を頑張ることです」
自分なりの言葉で働きたい思いを伝えた琉希さん。面接の結果は?
「比屋根琉希さん、4月1日から入社、採用いたします」琉希さん「ありがとうございます」
HOTEL SANSUI NAHA 総支配人・川中由仁さん「丁寧さがちゃんと身についてくると、スピードアップにつながってくると生産性があがってくると、いい仕事ができるなと私は思いましたので、採用の決めてとさせていただきました。」「今回の私たちの判断は間違いなかったと思っております。だから頑張って下さいね。」
合格といわれましたね。Qどんな気持ち?南風原高等支援学校3年 比屋根琉希さん「うれしかったです何も言えなかったんですけれど、ただありがとうございますって言ってたんですけれどそれでもうれしいです」「一人前になれるように頑張りたいです」
自立への大きな一歩を踏み出した比屋根さん。4月から社会人としての新たな挑戦が始まります。
生徒たちの“働きたい”を実現するために学校や企業が一体となった支援体制が必要。県では、就労支援コーディネーターを配置して、生徒のニーズや雇用側のニーズを把握しつなぐとともに卒業後の定着支援行うなど、環境づくりが進めています。
障がいのある生徒たちが3年間で身に着けた力を生かして、卒業後、地域で働き、自立した生活を送ることができるよう応援していきたい。
“働く力”高め育む 特別支援学校の技能検定 2022年11月29日