大量の糖蜜が海に流れ出るという前代未聞の事態に伊是名島に大きな動揺が広がっています。特に、アーサの養殖が甚大な打撃を受けていて生産者が肩を落としていました。
アーサの生産者・松村亮太(まつむら・りょうた)さん「(海への流出に気づいたときは)とにかく何が起こっているのかわからなかったのでとりあえずびっくりした。こんな海の色を見たことがなかったので」「ようやく収穫できるなと思って意気込んで収穫しようとしたその日の朝だったので本当に残念ですね」
あたり一面に漂う甘い臭い、真っ黒に染まった緑のアーサ。海に流れ出た糖蜜が収穫の最盛期を迎えたアーサの養殖場を浸食しました。糖蜜混じりの海水に浸かってしまったため商品として売ることができなくなってしまったのです。
濱元晋一郎記者「アーサの養殖場です。普段はこのように鮮やかな緑があたり一面に広がりますが、ほとんどが取り外されて寂しい景色となっています」
去年9月に種付けをして育ててきたのに商品価値がなくなったアーサは廃棄するしか手立てがないといいます。伊是名島では、今年、最大7トンの収穫が見込まれていました。再び同じ場所でアーサの種付けができるようになるのか生産者は不安を拭いきれないでいます。
アーサの生産者・松村亮太(まつむら・りょうた)さん「「去年は軽石の影響で300枚(養殖用の網)張ったうちの120枚がダメになってしまって」「今年は軽石の影響がなかったので、ようやく普通の状態に戻ったと思ったらこんな状況でした」「言葉が出ないですね」
糖蜜が流出した河口付近の海は黒く濁っていて浅瀬の底が見えなくなっています。
濱元晋一郎記者「流出現場では、死んでいる海の生物もみられます」
この海岸は、いざり漁ができる場所として地域の住民が長年大切にしてきた場所です。大量の糖蜜が海に漏れるという前代未聞の事態は何が原因で起きてしまったのでしょうか?
糖蜜はサトウキビを絞った後に出てくるもので、JAおきなわの製糖工場の貯蔵タンクで保存されていました。パイプをきれいにする作業をしていた時に水が誤って混ざったことで商品として売れなくなったために貯蔵タンクに入っていた700トンほどを処分することになります。
そのため、製糖工場近くにあるサトウキビの絞りかすなどを一時的に置いておく空き地に今月1日から2日にかけておよそ300トンが廃棄されたのです。空き地の地下には用水路につながるパイプがあって、許容量を超えた糖蜜を排水する、いわゆる「オーバーフロー」が起きたとみられています。
工場長や支店長といった製糖工場の職員は誰も仕組みをわかっていませんでした。人為的なミスで糖蜜が大量に海に流れ出た可能性があります。海に囲まれた小さな島だけに糖蜜の影響がどれだけ続くのか動揺が広がっています。
モズク漁の男性「(糖蜜が流れてくると)モズクもダメになるから大変だはず、魚も死んでるみたいだからよ」「心配ではある、今のところは心配ではないけど、来月とか再来月とかはどんなかな、それが心配」
村長「きれいな我が村の自然豊かなこの海が汚染されたということで、村長として憤りを感じているところでもありますし」「(伊是名の海でとれる)商品のイメージダウンにつながらないか心配している」
県はきのう、糖蜜の処理方法が廃棄物処理法や水質汚濁防止法に違反した可能性があるとして、現地調査を実施しました。廃棄した空き地に残された糖蜜はすべて回収されていて、肥料として活用されるということです。ただ、貯蔵タンクに残された300トンほどの糖蜜はどうやって処分するか方法が検討されています。