在日アメリカ軍の再編で在沖海兵隊の一部が移設されるグアム。QABでは、式典や現地を取材しきのうからレポートとしてお伝えしています。きょうは、グアムの人たちが抱える基地問題について、スポットをあてます。
町記者 26日の式典「在沖アメリカ海兵隊およそ4千人の移転が予定されているキャンプ・ブラズの命名式がここアサンビーチで間もなく開催されます」
1944年当時、日本軍が占領していたグアムを奪還しようとアメリカ軍が上陸した「アサン・ビーチ」で、先月26日、日米両政府とグアムの関係者らが出席し、アメリカ海兵隊の新しい基地の命名式が行われました。
新しい基地の名前は、グアムの先住民チャモロ出身で海兵隊を経てグアム選出の代議員を務めたベン・ブラズ准将の名前が由来となっています。
ブラズ准将の孫 ヴィンス・ブラズさん「きょう、新たな海兵隊基地の命名式に参加出来ることをこれ以上ないほど誇りに思います。祖父の名前が基地に付けられたことは、祖父にとっても、グアムの人々にとってもとても大きな名誉です」
一方、会場のすぐそばでは、新しい基地の建設に反対するフローレスさんが、抗議の声をあげていました。
モネカ・フローレスさん「アメリカ軍は基地にチャモロの名前を付けて、私たちにつながりを感じさせようとしているが、私たちはそのつながりを感じることは全くありません。グアムは戦争の標的にされようとしています。だから、私たちはきょうこの式典に反対しているのです」
フローレスさんは、グアムの置かれた状況を「植民地」にあるとして、アメリカから独立する必要があると考えていました。
モネカ・フローレスさん「グアムはアメリカに占領されており、植民地になっています。大統領に投票することも、議会で投票することも出来ません。だから、独立してほしいと考えています。それだけでなく、私は全ての基地が無くなることを望んでいます」
フローレスさんと共に活動し、グアム・コミュニティ・カレッジで働くジョニ・カアさんもまた、若い世代への教育を通して、グアムの現状を変えようとしていました。
ジョニ・カアさん「私の教え子たちの若い世代は、ニュース記事も読まず、こうした知識をあまり持っていません。でも、きちんとした教育を行い、軍がグアムで行っていることを理解していくと、私たちの生活に悪い影響を与えていることを知り、憤りを感じています」
グアムはアメリカの中で、正式な州ではなく「準州」という扱いを受けています。
そのためグアムの人たちには「大統領選挙の投票権」がなく、連邦議会に選出する1議席の代議員も、本会議の投票権が認められていません。グアムでは正式な「州」を目指すべきという意見や、国として「独立」すべきだという声もあり、その答えは今も出ていません。
エディ・カルボ前知事「私自身はグアムが正式な州になることを望んでいますが、グアムの人々の選択を尊重したいと考えています。もし、グアムの人々が独立したいのなら、私はそのために動こうと思います。グアムの人たちは最終的にどの道に行くべきか決めないといけません」
こうした人々の声を受けて、グアムでは1997年に「脱植民地化委員会」が設立されたのです。
エドワード・アルバレスさん「私は当時、脱植民地化委員会の代表として、グアムが抱えている問題について、人々に気づきを与えるための活動を行ってきました」
2011年から2017年まで委員会の代表として政府からの支援を受けて、様々な活動を行ってきたエドワード・アルバレスさん。
エドワード・アルバレスさん「私はグアムの各高校を訪れ、学生たちに向けて、植民地というのはどういうことなのか、それによって彼らの生活にどのような影響を及ぼしているのかを伝えてきました。また、脱植民地化のための活動について、カルボ前知事と話し合いをしたり、国連の会議に参加して、グアムの状況を報告してきました」
今回の移転計画に対して様々な問題が増えることになると感じていました。
エドワード・アルバレスさん「沖縄の人たちには喜ばしいことですが、グアムの人たちは嬉しく思いません。なぜなら、沖縄で起きているように、基地が増強されることは多くの問題を引き起こすことになるからです。たくさんの暴力や犯罪が増えることになるでしょう」
委員会では「準州」からの脱却か国としての「独立」か、その2択にとらわれない、第三の選択肢として、「自由連合」という考え方も合わせて提示していました。
「自由連合」とは、1960年に国連決議で明確にされた政治的地位で外交や防衛などの権限を他国に委ねる対等な国家間関係を指します。
エドワード・アルバレスさん「独立するのも、州になるのもいいと思います。しかし、それはより難しい交渉になります。一番理想的なのは「自由連合」だと考えています。その意味として、アメリカには戦争や外交を任せます。しかし、グアムとして例えば、入国管理や貿易、税金の徴収などは私たちがコントロールするべきです。それらはアメリカに任せるべきではありません」
グアムと沖縄の置かれた状況をとても似ていると感じているアルバレスさん。だからこそ、沖縄の人へ向けて伝えたいことがありました。
エドワード・アルバレスさん「沖縄とグアムは歴史的にとてもよく似ています。特にお互いにアメリカ軍の基地があります。(基地の移転は)沖縄とグアムが協力する良い機会だと考えています。私は基地が増えることに賛成ではありませんが、止めることは難しいです。それは沖縄でもグアムでもそうです。でも、沖縄とグアムが一緒に協力することで、よい良い道が生まれるはずです。だから、あきらめずに努力を続けましょう」
さて、ここからはグアムで取材を行った町記者とお伝えします。現地で地元の声を直接取材してどのようなことを感じましたか?
町記者「キャンプ・ブラズという新たな基地が造られるにあたって、経済効果や安全保障という観点から歓迎する声と、環境汚染や地元に暮らす人たちの権利が侵害されるとして反対の声もありました。そして、この構図を生み出しているのがアメリカ軍であるということが全くと言っていいほど沖縄と同じ状況にあると感じました。」
VTRでは「州」になるか「独立」するかというほかに「自由連合」という、それぞれの考えを持つ方々へのインタビューがありましたが、どのように受け止めましたか?
町記者「基地の問題だけではなく自分たちの暮らす島の未来を考えると言う意味では、去年沖縄が復帰50年を迎えて、復帰にまつわる様々な取材を一年を通して行ってきましたが復帰前の沖縄のように、グアムなりの選択肢があって、それが今も現在進行形で進んでいることに沖縄の歴史との重なりをとても強く感じました。」