おととい、那覇市で初めて弾道ミサイルの飛来を想定した訓練が実施されました。実施に対して抗議の声が上がるなか行われた訓練。有事に自治体が住民を避難させる国民保護について様々な側面から考えていきます。
おととい、那覇市で行われた弾道ミサイルからの避難訓練。架空の国が発射したミサイルが県内に飛来する可能性があると判明した、との想定のもと、住民が市銘苅の施設地下に逃げる手順を確認しました。
国は、北朝鮮のミサイル発射減少を受け、避難訓練を一時中断していました、しかし、去年9月に再開し、2022年度は11月に実施した与那国町を含み、全国12カ所で実施を予定します。
国担当者「今年に入りまして、弾道ミサイルの北朝鮮からの、弾道ミサイルの頻発化ですとか、我が国のEEZ内に落下するとの事態を踏まえまして、そういった要素等を総合的に勘案して再開したと考えております」
警報音「ウ~」反対派「ミサイル訓練やめろ!」
訓練会場のそばでは訓練に反対する人たちおよそ40人が抗議の声を上げました。抗議のシュプレヒコールとミサイル飛来を知らせるサイレンが重なり、周囲は異様な雰囲気に包まれました。訓練に反対する人たちからは「訓練は弾道ミサイルを使った戦争を呼び起こすことにつながる」との声が聞かれました。
那覇市の国民保護訓練に反対する会・長堂登志子さん「これ(訓練)をやったら国のやりたいことを那覇市はやるんだと。そういうことを受けているのと同じという危機感です」
警報音 那覇市職員「これから情報収集にあたります!」「ブラインド下げて!」
午後、市役所で行われた初動対処訓練では、弾道ミサイル発射の情報などについて、情報収集や市民への周知手順などを確認していました。危機管理対策本部では、ミサイル発射以降の経緯が、詳細に報告されます。
市担当者「本日14時01分より、仮想国内の軍事施設より弾道ミサイル1発が発射されました」「沖縄県上空を通過し、落下する可能性が高いとのことから国よりJアラートが発信され、市民に弾道ミサイルの危険情報が伝達されました」
反対の声もある中、実行に移された那覇市の弾道ミサイル避難訓練。知念市長は意義を強調します。
知念市長「いろんなご意見があるなかでも、やはりやるべきだという人もいるというなかで、私は意義があったというふうに思っております」
一方で、訓練を実行に移した知念市長からも、戦争回避の必要性は聞かれました。
知念市長「当然、政府も国も県も市もですね、市町村も同じ気持ちだと思うんですね。最悪の事態は絶対に起こしてはならないということです」「どういう外交努力をなされているのかですね、これ情報開示できない部分も多いと思うんですけども、開示できる部分は精一杯開示してもらって、国も県も市も連携してやってますよというしっかり市民に見せていく。これが私の責務だと思ってますので」
訓練に反対する人たちは毎日、市役所の前でも抗議行動を行って自分たちの思いを伝えてきたそうです。その根底には、「これはただの訓練ではなくて戦時体制をつくるひとつ」という捉え方があると話していました。そう考えると決して看過できない出来事だと感じます。
今回の避難訓練は、「国民保護」を目的として国や県、市が主催し実施されました。ここからは、今回の訓練から見えた問題点と今後について専門家から話を伺いました。
訓練実施の是非が交錯する中、県都・那覇市で行われた弾道ミサイル避難訓練。危機管理が専門で国士舘大学の中林啓修(なかばやし・ひろのぶ)准教授は、今回の訓練を巡る問題点について次のように指摘します。
国士舘大学中林啓修准教授「紛争を絶対に回避できる方法が必ずしも明確ではない中で、住民の命を守るためにはやはりこういった訓練が必要だというのもひとつの現実としてあると思っている」「その上でいろんな疑問が浮かぶのが当たり前の中で、なぜこの訓練なのかこういう動作をしなければいけないのか」「国がしっかりと訓練の意義とか訓練の各動作につながっている根拠となるいろいろな考え方について、もっと丁寧で具体的に説明していくことが必要なのではないかと思います」
さらに訓練を巡る様々な価値観を認め合うことが必要だと考えています。
国士舘大学中林啓修准教授「不安に思う住民がいるのは当然のことで、不安に思っていることや反発する気持ちがあるということ自体は決して否定する必要がないものだと思う」「私は今回の訓練の内容は妥当だと思っているがなぜそれが妥当なのかを説明する部分があまりにも足りていない結果が必要な納得感を住民に提供できていなかったんじゃないかと」「そこは改善していかないと訓練の回数を重ねたところで意味のあるものにはなっていかないんじゃないかと考えている」
与那国と那覇、2カ所を取材して感じたことはどこか違和感がある中での訓練だったということです。
中林准教授に話を聞いて「住民が違和感なく参加できる順を追っての訓練だったのか」という疑問も生まれましたし、ただの訓練で終わらせてはならないと感じました。
台湾有事の懸念とともに語られることが増えている国民保護についてさらに議論を深める必要もありそうです。