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県内の今年1年間を振り返る「年録2022」です。きょうのテーマは「基地問題」です。辺野古新基地建設をめぐり、工事を止めたい県と進めたい国が鋭く対立するなか、那覇軍港の移設については、ことし、国の示した案について県が合意しました。この2つの動きから見る、今後の問題について考えます。

今年1年間、辺野古新基地建設では県が去年11月に行った設計変更の不承認について、国と県の攻防が続いた年でした。

玉城知事昨年4月に沖縄防衛局から提出された普天間飛行場代替施設建設事業にかかる埋立地用途変更および設計概要変更承認申請について本日不承認とする処分を行いました

国が県に申請していた設計変更は、大浦湾の海底に、軟弱地盤の改良工事を加えるものでした。工事を進めたい国は県の不承認を無効化しようと、対抗措置に打って出ます。

2022年録 3 「基地問題」辺野古と那覇軍港 動きから見る問題点

斉藤国交大臣「沖縄県の判断は違法かつ不当であると判断し、不承認処分を取り消すとの裁決を行いました。また承認するよう勧告を行うことといたしました」

不承認の効力を回復させようと、県も動きます。国地方係争処理委員会を経て、今年8月、9月に相次いで訴訟を提起しました。

玉城知事「米軍基地の過重な負担、平和のための県民の願いが進められるよう裁判においては中立公平な判断を望みたいということをしっかりと主張したい」

軟弱地盤の存在で、土砂の投入がおこなえていない大浦湾側では、護岸に土砂を積んだ船が接岸し、大型ダンプが辺野古側の埋め立て予定地に土砂を運び込む様子が続いています。

普天間基地の危険性の除去の解決策として、辺野古新基地建設が「唯一」と繰り返す国と、新基地建設によらない問題の解決を求める県。両者の溝は埋まらないまま、来年も法廷での争いが続く見通しです。

一方で・・・

塚崎記者「現在、浦添市の那覇軍港の移設予定地に来ています。国の計画では北側の海域に49ヘクタールをT字型に埋め立てる計画で、ほかに公道とつないだ誘導路などを建設する計画です。県の試算では完成まで17年かかるということです」

2022年録 3 「基地問題」辺野古と那覇軍港 動きから見る問題点

移設計画図を実際の空撮と重ね合わせてみると予定地の北側に軍港施設が置かれ、その奥に民間の港湾施設などが整備されることになります。

那覇市中心部にある那覇軍港を浦添市に移設する計画では、県は今年10月、国が示した軍港の形状案に合意しました。

辺野古新基地建設については反対する一方で那覇軍港の移設に合意している県。二つの基地について、立場の違いはどこから来るのでしょうか。県は辺野古新基地について「弾薬搭載エリアや2本の滑走路が新設され、普天間基地と異なる機能が備わるため単純な代替施設ではない」と強調します。一方で浦添に建設される軍港については「移設協議会で現有機能の確保が目的と繰り返し確認している」と説明しています。

日米が移設を条件に那覇軍港の返還に合意したのは48年前の1974年。現在までに軍港移設予定地に隣接するキャンプキンザーなどの返還が決まり、合意時の前提条件が異なってきているとの指摘もあります。

沖縄の基地問題に詳しい国際政治学者で琉球大学の我部政明名誉教授は、移設計画をそのまま進めることに疑問を投げかけます。

2022年録 3 「基地問題」辺野古と那覇軍港 動きから見る問題点

琉球大学・我部政明名誉教授「港湾の計画とともに、単に軍の軍港を作るわけではなくて、民間港湾のいわゆる那覇新港の拡大拡張をしていくということ。沖縄の経済振興とマッチする形で、軍港をつくろうじゃないか、という話が、この90年代の後半以降に出てくるわけですね。キンザーはなくなっても、軍港はその時間が過ぎていくと残るというんだけれども。これ、なぜ軍港が必要だったのか、というそもそもの軍港の必要性をよそにつくる必要性は、飛んでしまっている。消えてしまったにもかかわらず、軍港だけをつくるということですね。」

中村アナウンサー「午後1時すぎです。轟音を響かせながら駐機していたオスプレイが飛び立ちました」

那覇軍港をめぐっては、新たな問題も浮上しています。去年11月から、軍港での訓練や、船への積み込みを目的にアメリカ軍のオスプレイなどが離着陸をするようなってきたのです。

池田竹州副知事「那覇港湾施設において、復帰後50年間行われて来なかったこのような運用が行われることは、市民をはじめとする多くの県民や観光客等の安全を脅かすもので断じて容認できません」

県は基地の使用主目的を定めた日米合意に沿った運用を求め、軍港や代替施設でオスプレイなどを離着陸させないよう求めています。

2022年録 3 「基地問題」辺野古と那覇軍港 動きから見る問題点

対する国は・・・

防衛局回答「那覇港湾施設は1972年5月の日米合同委員会合意(「5.15メモ」)において、その使用の主目的が「港湾及び貯油所」と規定されており、当該使用主目的に沿った那覇港湾施設におけるMV-22オスプレイ等の離着陸は、施設の使用の範囲内であると考える」

オスプレイ離着陸も「施設の使用範囲内」とし、移設後も同様の運用が行われることを示唆しています。我部名誉教授も国の姿勢をただしたうえで、民港整備と引き換えの軍港移設に疑問を投げかけます。

琉球大学・我部政明名誉教授「防衛省に地域への影響を最小限するような責務があるんだということを、やはり何度も地元が言う必要があるんだと思います。基地がなければ、沖縄にお金を流さないというのは、ちょっとおかしい話。日本国民どこでも等しくと言いますか、こういったインフラ整備は行われるべきなので、この点の視点は沖縄では余り、いつも政府に何か物を頼む、陳情するときにいつも何かの代償を求める。これがある種、当然視していて、受け入れの代償は認めるべきじゃないか、というような論理がずっとあるんですね」

返還合意からおよそ50年が経ち、動き始めた那覇軍港の浦添移設。環境への影響も見通せない上、基地機能強化につながる懸念を持ったまま、このまま計画を進めてはならないのではないでしょうか。

辺野古の基地建設も那覇軍港の移設も、埋め立て工事が行われる点は変わらない中、一方に反対して一方を進める県の立場は、県民からするとわかりにくい点は多いと思います。

アメリカ軍以外にも県内では先島などで自衛隊の配備や基地建設が進んでおり、私たちは一つ一つの基地が将来に負担を残すことがないか、見極めていかないといけないと思います。