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シリーズでお伝えしている「復帰50の物語」48回目のきょうは基地問題と同じように沖縄に長く横たわる貧困について考えます。コロナ禍や相次ぐ物価の上昇などで貧困を取り巻く環境が厳しさを増す中、困窮する人たちと向き合い続ける団体を取材しました。

5・15沖縄復帰記念式典

平敷雅さん「今この沖縄では子どもの貧困が大きな問題になっており子どもの4人に1人が貧困状態で、日々の食べ物に困る子もいます。私たちはそんな子どもたちに手を差し伸べこの新たな問題に立ち向かいます」

今年5月、本土復帰50年を記念する式典で若者を代表してあいさつした平敷雅(へしき・みやび)さん。その力強い言葉には大きな決意がありました。

平敷雅さん「貧困問題に関心がない方とか、あっても気づいていない方も大勢いると思うので、そういう方々にもこういう機会を使って知ってもらいたい」「行政だけでは解決できない問題なのでやはり県民とか国民の単位でみんなが取り組まないといけない問題だと感じています」

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」

おととし留学したアメリカで訪問先の家族が日常的に食料支援をしていたことをきっかけに高校生にして学生ボランティア団体「VONS(ヴォンス)」を立ち上げ、食料品の寄付を募るフードドライブを行ってきた平敷さん。この2年で25回行い、困窮世帯に提供した食品は1万2千点以上です。

東京の大学に通う平敷さんとともに沖縄で活動するメンバーはおよそ20人。イベントに向けた資金の準備や行政とのやりとりを授業の合間にこなしながら、自分たちの活動だけでは問題が解決しないことを強く感じてきました。

脇詞音さん「復帰50年経っても貧困ってなくなっていないし社会に根づいている問題になっている」「ボランティアだけじゃなくてそこに行政の視点が入ってくる教育の視点が入ってくる学生の若い視点が入ってくる、それが連携し合うことで新しい形のサポートとか貧困に立ち向かっていくアプローチが必要なのかな今後はと思っています」

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」

島袋未結さん「明るい未来は自分たちでつくっていかないといけないなと意識して」「自分で生まれた土地で沖縄が抱える問題を少しでも解決に近づけられたらいいなと思います」

将来は沖縄の貧困と向き合おうとする若い世代を支えられる存在でありたいと考えています。

平敷雅さん「私はそういった子たちのやりたいをサポートできる立場に、大人になってもそういう人間でありたいなとか、自分の今までの活動とか経験を通して感じています」

安里一区公民館

「ちょっとごめんなさいこういうのやめて、上等から入れて上等から入れてこれやめてこれやめて、子どもたちにきれいなのからお願いします」

那覇市で生活に困っている人たちに食料品や日用品を提供している「ゆいまーるの会」市の助成金や企業からの寄付金で購入した商品や支援団体から寄せられた品を去年6月から困窮世帯に届けています。

コロナ禍で困窮する人が増えたことが活動を始めた理由でしたが、それ以前から沖縄で続く貧困や誰もが支援される側になりうる情勢を肌で感じ今後も継続した支援が必要だと考えています。

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」

ゆいまーるの会 嘉手苅直美さん「3食食べなきゃいけないのを2食にしたり、あるいは1食にしたりという形で生活している人もいると思う」「家庭の中は私たちは分からないです。でも厳しいという声は聞こえてくるのでここに来る親子さんはかなりきついと言っているので息苦しさがあるのかなって思いますね」

およそ1時間の食料配布。会場には幼い子どもを連れた母親などが次々にやってきます。何かと出費が多いこの時期、この日は19世帯50人が訪れました。

参加した人「特に自分の子が12月生まれなので誕生日もクリスマスもやってきてお正月ってなるので」

参加した人「今から年末年始とかになると学校がお休みになるので」「お米の量の消費が一気に上がる。今まで1カ月これぐらいで済んでいたお米が増えたりとか、それに伴っておかずとか作るのでそれ以外の消費も増えてとかってなるので助かります」

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」

那覇市で生活保護を受けているのはおよそ1万世帯。県内全域では3万世帯に及びます。その要因にもつながる県民所得は1人あたり241万円と全国平均(331万円)の約7割にとどまり、全国最下位。子どもの貧困率は29.9%と深刻な状況が続いています。

10年以上に渡って沖縄の不良少年や少女=ヤンキーと向き合いその生き様をまとめた「ヤンキーと地元」の著者・打越正行さん。沖縄の貧困は本土とは異なる産業構造から生まれていると指摘した上で、ある業種をあげて国の対応の違いについて話しました。

打越正行さん「産業構造の話は沖縄の貧困を見る時に外せない視点だと思っています」「建設業そのものが県内の一部の産業ですが「(沖縄の貧困を)象徴しているというか」「景気状況に応じて公共事業を再分配するとか不景気の時は民間がリードするとかという形で、内地の建設業は非常に手厚く支援されている」「同じ建設業ですけど建設業を通じて人々が食べられるようにするとか、地方を盛り上げるとかっていうことが(沖縄では)なされていない」

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」

50年前、終戦後の経済復興を果たした本土とは異なる歴史を辿りながら本土に復帰した沖縄。しかし、製造業や建築業といった第二次産業が発展せず、非正規雇用の多いサービス業など第三次産業に偏った産業構造によって生まれた影響は今も続いています。その負の連鎖が沖縄の貧困につながっていると考えられているのです。

経済の自立や生活の向上という道半ばの課題を抱えながら沖縄の復帰50年の年が暮れようとしています。

ご紹介した学生ボランティア団体「VONS(ヴォンス)」によるフードドライブが17日にイオン那覇店で行われます。ご家庭で余っている「未開封」の食品や日用品を持ち寄っていただければと思います。ご協力をお願いします。

復帰50の物語 第48話 沖縄に横たわる「貧困」